第0.63話

「これ犬入ってねぇぞ」

「犬いないね~」

「ラッシーなのにな」

「ラッシーなのにねぇ。白い犬溶かしたのかな?」

「それはインドネパール人パネェな」

「パないねぇ。えげつないねぇ~」

「でも、かなりあめぇなこれ」

「あまいね。糖尿の犬だったんじゃない?」

「マジかよ? 気持ち悪いなこれ」

「でも美味しいねぇ」

「あぁ、うめぇからいいか」


「ねぇ公ちゃん。ナンってなんでナンなんだろうね?」

「そりゃ、ナンはナンだからナンなんだろ」

「なんだ。ナンはナンだからナンなんだね」

「そうだよ。インドネパール人がナンって言ったら誰がなんと言おうとナンなんだよ」

「ところで今何回ナンって言ったかわかる?」

「それは何回ナンのナンまで入れるのか?」

「え、どのなんのこと?」

「だから今何回ナンって言ったかの何回ナンだよ」

「う~ん。なんかよくわからなくなっちゃった」

「そのなんも入れるのか?」

「え、沙羅魅またナンって言ってた? なんて言ってた?」

「なんかよくわからなくなっちゃった。のなんだよ!」

「すごい公ちゃん! 沙羅魅がなんて言ってたのかちゃんと覚えてるんだね!」

「何の話だ? ただ繰り返しただけだろ」

「いや、でもすごいよ。沙羅魅なんてさっきなんて言ったかなんて覚えてないよ」

「なんで覚えてねぇんだよ。なんだかんだ言ってもそれぐらい覚えられるだろ?」

「え~、もうなんかよくわからなくなってきちゃったよ」

「なんだよそれ。おめぇが先になんを何回なんて言って来たんだろ」

「だってなんかよくわからなくなんてきちゃったんだもん~」

「おめぇ、言ってること変だぞ」

「なん、なんだって!」

「おいおい、おめぇさっきからなんなんなんなん、なんなんだよ!」

「そっちこそ、なんなんなんなん、なんなんだよ! ってなんなのよ~!」

「なんでおめぇ逆切れしてんだよ。なんなのか聞いてるのはこっちだぞ!」

「だって、もうなんばっかりでなんもわかんなんだもん!」

「待て、沙羅魅!」

「なんなのよ!」


「落ち着け、沙羅魅ッ! これはスタンド攻撃ってやつだッ!」

「なにそれ!?」

「いいからこの店出るぞッ!」

「え、なんで!? じゃあトイレ行ってから!」

「ダメだッ! トイレで襲われるのがパターンだッ!」

「え~、我慢できないよ~!」

「おめぇ、なんで我慢できないまでトイレ行かないんだよッ!」

「まだ大丈夫だけど、お店出る前に行きたいの~」

「ダメだッ! たぶん店員がスタンド使いだから一刻も早くここから出るぞッ!」

「え~、なにそれ~。じゃあ、急いでコンビニ行こう!」

「よし、行くぞッ!」

「昭和27年11月11日!」

「なんだって?」

「吉幾三ってこと!」


逃げる様にカレー屋から出た2人。

そして、この2人がこの店に来ることはもうないだろう。

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