第12話 始まりの村リアレス

――ピピピピピピピッ!カチッ


 「んんっ、もう朝か……」


 手を伸ばしスマートフォンの目覚ましを止め画面を確認する。


 ……今日も5時起き、健全な生活だな。


 布団から上体を起こして部屋の中を見回すが誰もいない。

 さすが3日連続でミナは来てないようだ。


 「おはよう真白」

 「ワフッ」


 隣で眠っていた真白も起きたので頭を撫でて挨拶をする。

 真白もおはよう!とばかりに嬉しそうに顔を舐めてきた。


 「さて、顔を洗ったら今日も罠の確認に行こう!」

 「ワンワンッ」


 気合を入れて立ち上がる俺の後に真白も続く。


 さて、最近日課になっている罠の確認に向かう。

 全部の罠を確認すると、今日はなんと3頭イノブタが落とし穴に落ちていた!

 2頭のイノブタは身体も大きく大人のオスとメスみたいだけど、もう1頭は身体がかなり小さいので、恐らく子供なのだろう。


 「家族なのかな?う~ん、お肉はまだ足りているし、さて、どうしよう……」


 肉は最初に罠で取れた1頭がまだ残っている。

 それに昨日獲れた大型のイノブタは、血抜きをしただけで丸々1頭、無限収納に入っていた。


 さて、この3頭を肉にするか、逃がすのか判断に迷うな。


 「……!そうだ、今日は村に行くんだったな。この3頭は家畜として村に持っていこう!ついでに無限収納の1頭も村にあげた方が良いな。たしかアルフィーナ……アルが貧しい村って言っていたからちょうどいい!」


 魚も無限収納の中に潤沢にあるし、昨日家に戻った時に干しているので干物にもなっているだろう。

 それに村に行くのなら村の人々と良好な関係を築くためにも、この3頭と、無限収納の1頭を進呈することにした。


 「そうと決まれば、真白、この豚を気絶させて運んでも貰ってもいいかな?」

 「ワン!」


 真白が気配を放ちイノブタを気絶させる。

 俺がイノブタの足を縛って木の棒に通すと、真白はそれを咥えて持ち上げた。

 真白は親2頭を、俺は子供1頭を持ち上げて家まで運ぶ。


 なぜ、木の棒に通したのかと言えば、真白がイノブタを背中に載せて運ぶのを嫌がったからだ。

 背中に何かを乗せたくないみたいだ。俺はいいのかな?


 「ただいま~」「ワン!」

 「お帰りなさいませ」


 イノブタを家の前に置いて家の中に入ると、ミナが出迎えた。


 「今日は3頭獲れたんですね」

 「ああそうだよ、でもこれは今日向かう村で、飼育して貰おうと思っているんだ」

 「……失礼ですがマスター」

 「うん?」


 ミナは飼育に何か意見があるみたいだ。いったいなんだろう?


 「本日行く村の状況が、現在分かっておりません。もし、飼育施設が無い動物を飼育する方法に知識が無いなどあった場合、飼育ではなく食料になる可能性もあります。今日は様子を見るに留めた方がよろしいかと」

 「ああ、なるほど」


 まだ見たことも話をしたことも無い村の人に、いきなりこの豚を世話してくれ!といった行動をとるのは軽率だ。

 その村の事情をよく理解して今何が必要なのかを知らないと、無駄に終わることもある。


 「そうだね、ミナの言うとおりだ!ありがとう」

 「いえ、マスターに対する無礼をお許し下さい」

 「許すも許さないも無いよ、感謝してる」


 ミナは頭を下げて応えるが、別にミナが悪いわけじゃないんだから気にする事は無い。

 別の方向から意見を言ってくれる人、耳の痛いことを言ってくれる人はとても大事だ。


 「ん~、じゃあこのイノブタどうしよう……?」

 「鶏小屋とは、別の方向の離れた場所に飼育小屋を作るのがよろしいかと」

 「そうだね、鶏と豚を一緒に飼って、変なウィルスが出来てもイヤだし」


 というで家から離れたところにイノブタの飼育小屋を建てることになった。

 昔、豚や牛の飼育小屋を見たことあったので、それを真似て魔法で建てる。

 ミナの手伝いもあったので細かい部分の修正や、ミナ自身が保有する情報を生かして建てた飼育小屋は3頭のイノブタには広すぎる施設が出来てしまった。


 将来的に何頭も飼う予定だから問題ないだろう。


 「どれ、家に戻ろう!そうだ、朝ご飯は?」

 「すでに用意出来てます」


 相変わらず素早い対応で返してくる。


 「ありがとうミナ、今日は村に行くからね」

 「はい、お弁当も準備完了です」


 本当に先読みで行動する子だな。俺がする事がなくなってしまう。


 「お!帰ってきたのじゃな」


 ミナと飼育施設を建てたあと、家に戻り台所に入るとアルフィーナが料理を手に持ち出迎えてくれた。


 「あっ、おはようございます。アルフィーナさん」

 「むっ!」


 ついつい出てしまった丁寧語にアルフィーナが眉を寄せる。

 最初に話した言葉遣いって、そんなにすぐには直らないんだよね。


 「……すいません。じゃなかった、おはようアル」

 「うむ、おはよう」


 今度は花を咲かせたように笑顔になるアルフィーナに照れながら頭を掻く。

 こういった美人の笑顔は、久しぶりなのでどうも慣れない。


 「さあ、準備は出来ておるのじゃ」

 「ああ、ありがとう。みんなも座って食べよう」


 「それじゃ「「いただきます」」」「ワン!」


 各自いつもの席に着き、いただきますで食べ始める。

 今日の朝ご飯は、予想通りアジの開きの一夜干し、それにピーマンとナスの炒め物、トマトサラダ、みそ汁、そしてなんと、納豆が付いていた!


 「おお、納豆出来たんだ!」

 「はい、十分発酵し食べられるようになりました」


 好き嫌いにもよるが、ご飯に納豆は俺の好きなメニューだ。

 大豆は大量に用意できたので、ミナに頼んでみると藁から納豆菌だけを取り出して作ってくれた。


 ほんとあの主人公みたいだ。


 「ミナに聞いたのじゃが、本当にこれは腐っておらぬのじゃな」

 「ん~、厳密に言うと腐ってるよ」

 「なんじゃと!」

 「でも、食べても体に良い腐り方をしてるんだ」

 「はい、マスターの言うとおりで、それを発酵と言います」


 アルフィーナが驚くのも無理は無い。

 発酵と腐敗の違いは、人間に役に立つような食べ物に分解された物か、そうじゃないかの違いで分けられている。

 だから腐っているとも言えるけど、腐敗と言うよりは発酵と言ったほうが聞こえがいい。


 「なるほど発酵か……ふむ、それらしい物ならいくつか記憶しておる」

 「そうだね、色々なことに発酵が使われているからね。でも、納豆は好き嫌いあるからアルも無理に食べなくていいよ」


 好き嫌いは誰にだってある。無理に食べてより嫌いになるよりはいいだろう。

 俺は、ご飯のそばに置いてあった納豆を手にとって掻き混ぜ、粘り気が出てきたところで醤油を垂らしご飯にかける。


 「ほう、コメと一緒に食べるのじゃな」

 「俺がいた国では、こうやってご飯にかけて食べることが多いかな、他には少し手を加えたご飯に載せたり巻いたりするね。」


 軍艦巻きや納豆巻きなどが代表的だ。

 他には、みそ汁に入れた納豆汁、スパゲッティーに混ぜた納豆パスタ、チャーハンの具材に使うなど色々ある。


 ただ、熱を加えると匂いも強くなるので注意が必要だ。


 「むむむ……、えぇいっ!試して見んと分からんのじゃ」


 そう言うと、アルフィーナは俺と同じ様に納豆を掻き混ぜてご飯にのせると口の中に放り込む。


 「………………」


 何か考えるように目を閉じてご飯を噛んでいる。

 ……大丈夫だろうか?


 「あの、無理しないでいいからね」

 「………………うっ」


 咀嚼した後に飲み込んだアルフィーナは、カッと目を見開く。


 ああ、ほら言ったのにバケツ、バケツ。


 「う、美味いのじゃ!これは良いのう。独特の匂いはあるが、マメに深い味わいがありショウユと絡まると、これがコメとよく合うのじゃ!」

 「お、おう」


 急いで無限収納の目録からバケツを取り出そうとしていたが、吐くわけではなく納豆の味を確かめていたみたいだ。


 アルフィーナは納豆が美味しいと分かると、躊躇する事無くどんどん納豆をご飯にのせて口に運ぶ。


 どうやら納豆も気に入ってくれたみたいだ。と言うか、この人嫌いな食べ物あるのか?


 「さて、今日は村に行くんだけど、アル」

 「なんじゃ?」

 「村のある場所はどっちかな?」

 「おお、そうじゃったな、向こうの方に歩いて3日ほどなのじゃ」


 食事も終わりお茶を飲みながら村のある場所を聞くと、アルフィーナは村の方向を指を差しかかる日数を口にする。


 「ミナ、アルが言っている村の場所は?」

 「はい、地図を表示します」


 ミナが通信を使ってテーブルの上に地図を3Dで展開する。

 実際に浮き出てはいないが脳か網膜でそう見えるのだろう。


 地図上には、現在位置とアルフィーナが指し示した方向上にある集落にマーキングがされた。


 「これで見ると南南東の方に村はあるんだね」

 「はい、それと最適な進路も表示します」


 ある程度カーブはあるが、ほとんど真っ直ぐ現在地と村の場所に線が引かれる。


 「なるほど、これで見るとまた魔法で道を造って進むんだね……真白悪いけど、また、あの車を引いてくれるかい?」

 『任せてください!主様』


 真白は胸を張り尻尾を振って応える。


 昨日も思ったんだけど、真白はあのリヤカーを引くのが楽しいみたいだ。


 「よし、準備が出来たら玄関に集合!」

 「分かったのじゃ」

 「了解しました」

 「ワンワンッ!」


 洗い物を済ませて各自準備を整える。

 そうは言ってもみんな持っていくものは特に無い、あっても無限収納に入れればいい。

 俺も手ぶらで、あとは刀の大小を脇に差してジャケットを羽織ると玄関まで行く。


 玄関の扉を開けると、すでにみんなリヤカーに取り付けてある座席に乗り込んで俺を待っていたみたいだ。


 「ごめん待たせたかな?」

 「それほど時間は経ってないのじゃ、気にすることはない!」

 「はい」「ワン!」

 「ありがとう」


 礼を言って俺もリヤカーに乗り込む。


 「それじゃあ、出発しよう!」

 「ワオーン!」


 出発号令とともに真白が勢いよく駆け出す。


 道中の道造りは昨日と同じ魔法で道路を作り、ミナが細かい場所の修正を担当してくれたので村までの道は問題なく造り出されているようだ。


 村に到着する前に12時になったので景色が良い場所で止まりそこでお昼にした。


 無限収納からミナのお手製の(アルフィーナも手伝った)お弁当を取り出す。


 お弁当はみんなで食べられるように重箱に入れられていて開けると、1番下がいろいろな具材の入っているおむすび、2段目がから揚げと出し巻き玉子、3段目がキンピラごぼうと野菜炒めが入っていた。

 しかも、ミナが出来たてをすぐに無限収納に入れてくれたので温かいままなのは嬉しい。


 ミナが無限収納から御座を取り出しその上に並べると、並べた重箱を囲むように座り取り皿が配られと、各自食べたい料理を取り皿に移して食べる。

 俺もおむすびを2つと、料理を貰うと、いただきますをして食べ始める。あれ?何かおむすびの大きさ……どれも違うな。


 「ん、から揚げうまっ!出し巻き玉子も出汁利いてて美味しい!」

 「私も手伝ったのじゃからな、オムスビ……じゃったか、それは私が全部作ったのじゃ!」


 自慢げに話すアルフィーナ


 「うん、アルのおむすびも美味しいよ」

 「うむ!」


 おむすびを褒めると、アルフィーナは素直に喜ぶ。

 ところどころ塩気の濃い場所があったり、握りすぎなのは言わぬが花だ。




 「ミナ、あとどれ位の時間で村まで着くかな?」


 お弁当を食べ終えると、ミナに村まであとどの位で到着するのか確認する。

 通信で表示されている地図は、残りの距離を表示しているが所要時間まで表示されてはいない。


 さすがに車のナビの様な機能は付いていないか。 


 「はい、このままのペースで行けば1時間20分で到着します」

 「あと少しだね。よし、気合を入れて頑張るか!真白もよろしくね!」

 「ワンッ!」


 美味しい食事をとったからか真白も気合が入ってるみたいだ。

 よし、俺も頑張るぞ!






 「ここが村ですか……。」


 ミナが言ったとおり村まで1時間ちょっとで村に着いた。


 「うむ、しかし変わっておらんのう……ここは」


 恐らく村の入口付近なのだろう草木が生えていない小道やその先に家らしき物がチラホラ見える。

 ただ、真白の引いているリヤカーがやっと通れるほどの細い道で、おまけに舗装されておらず剥き出しの土のままだ。


 雨が降ればぬかるんで大変だろうに。


 そして、家の方は入口から見る限り、屋根は板張りか茅葺かやぶきの家が入り混じっている。

 壁は土壁で家の大きさは床面積が6~10坪ほどなので、日本の平均的な床面積の22~23坪に比べるとかなり小さいな。

 装飾などは一切無い、土色の同じ様な家が建っていた。


 「なんと言うか……パッと見、何も無いと言いますか」

 「うむ、貧しい村じゃ、言葉を選ばんでも良いぞここはそんな村なのじゃから、とりあえず中に入ってみるのじゃ、誰か私の顔を覚えておればいいが……」


 ここ魔界に来てどれだけの月日を過ごしたのだろか、アルフィーナは少し寂しそうな顔をした。


 長い年月で多くの別れや悲しみを見てきたんだろうな……。



 村の中に入り奥に進んでいくと、何人かの人影を見つける。

 しかし、みんなすぐに家の中に隠れて出てくる気配が無い。

 まるで何かに怯えているみたいだ。


 「どうしたんでしょう?」

 「う~む、分からんのじゃ、まあ良い、たしかこの先にまとめ役をしてる奴の家があるはず、まずはそこへ行くのじゃ」


 強引に押し入るわけにも行かないのでアルフィーナの言う通り、まとめ役の家がある方へ進む。


 「おお、たしかここじゃ!」

 「ここですか」


 アルフィーナは一軒の家を指差して目的の場所だと言った。


 その家は他の家に比べると大きく、およそ20坪ほどの大きさで屋根も壁も板張りだったが、壁の一部がレンガを使っているようなので裕福な家に見える。

 あくまで他の家に比べてだけど。


 「おい、フォートル、おるのか!」


 木戸らしき入口の前にアルフィーナが立つと、まとめ役であろう人物の名前を声を張り上げて叫ぶ。


 人の気配がするもののガラスも無い家なので中の様子が一切分からない。

 仕方が無いので、このまましばらく家の前で待っていると、木戸がゆっくり開けられこちらを伺うように老人が顔を出した。


 「ま、魔女様でしたか、ハァー………………、驚かさないで下さい」


 老人は尋ねてきた人物がアルフィーナだと分かると、安心したように大きく息を吐いた。


 いったい何に驚いていたんだろう?


 「フォートル、何を怯えておる?」


 俺の疑問と同じ事をアルフィーナも質問する。


 「いえ、その、村の者が大きな獣が村に入ってきたと言いまして」

 「大きな獣じゃと!?」


 なんと俺達が来た矢先にトラブル発生か!老人は大きな獣が村に入ってきたと言う。

 大きな獣位真白なら何とでも出来そうだけど……ん?


 「ええ、それでその……、今日は村一番に腕が立つボルガや男達が狩り出てるので村には年寄りと女子供しかおらず、みなそれぞれの家に閉じ篭っていたんです」

 「なんじゃと!ふ~む……、フォートルまあ心配するな!私達がおれば獣如き何とでもなる。昨日も海におった下竜を退治してきたのじゃ!」

 「なんと!下竜をですか!」


 老人はあのワニを知っているのだろう驚き過ぎて眼を見開たまま口をアングリと開けたまま呆然としている。


 「うむ、じゃから安心せい!」

 「………………はっ、ヒュー、……プハァーッ」


 老人は息をするのを忘れるぐらい驚いてたようだ。


 「さすがは魔女様です。……それで、そのー……、後ろの“大きな獣”は魔女様が使役しているのでしょうか?」


 どうやら老人は真白に怯えていたようで、震える手で真白をそっと指差した。


 あーやっぱり、今の真白はサラブレッドよりも大きいからなあ、初めて見る者は怯えるのは仕方が無いかも知れない。


 言葉の分かる真白が、不機嫌になっていないか気になり真白の頭を撫でると、分かってます。といった感じで尻尾を振る。


 「ああ、こいつは真白と言ってな、聖獣じゃぞ」

 「せっ、聖獣様!こっ、これはご失礼しました!」


 俺には知らなかったけど、聖獣はこの世界では十分知られた存在なんだな。

 凄いな真白!


 「今日来たのは真白を会わせるために来たのではない、そこの黒い髪の男は私の連れでマサキと言ってな、魔法も使えそのうえ知識が豊富じゃ、私と違いお主たちの相談に色々と乗れるじゃろう!のうマサキ」


 アルフィーナが自慢気に腰に手をあてて俺を紹介する。


 「ああ、えっと、始めまして素鵞真幸そが まさきと言います。え~と、アルが言ってるように魔法も使えるし相談事に乗れると思います。」

 「はあ、……マサキ様ですか」


 頭を下げてアルフィーナの後に続いて自己紹介をしたが老人は、なんとも言えない顔をしている。

 そんなに頼りなさそうに見えるかな?自分の様に自覚はないのでよく分からない。


 「おーい!フォートルさん、帰ってきたぞ!」


 俺達が来た方とは反対の方で誰かが大きな声で老人を呼んでいる。


 「おお、男衆が帰ってきたようです」


 見ると、遠くで何人かの集団がこちらに向かって手を振っていた。

 だんだんとこちらに近づいてくる集団の姿がはっきりと見えるようになると、俺は思わず息を呑む。


 その姿は、背中から羽を生やしドラゴンの様な姿の人、全身を毛で覆われ耳をピンと立てた狼男の様なイヌ科の人、同じく全身が毛で覆われているが狼と異なり耳をピンと立てているがやや丸みがありネコ科の特徴をもっている人、2メートルを優に越すほど大

きい身長で岩の様な質感の肌の人と、同じ程度の身長の肌が薄ミドリの人、身長はほかの人より小さいが横に大きくズングリとしていて腕なども太くてヒゲをもっさりと蓄えた人、(あっ、よかった西洋風の顔立ちだけど普通の人もいる。どこか老人に似てるな)

の他にも色々な姿の集団がこちらに向かって歩いて来た。


 人魚の人たちの時もビックリしたけど、ここまで色々な姿を見るとその比ではない。


 「ん?おお!これは魔女様お久しぶりです」

 「なんだって!魔女様が来ているのか!」


 ドラゴンの姿の人がアルフィーナを見つけて挨拶をすると、続いてどこか老人に似ている西洋風の顔立ちの人も集団の後ろの方から、アルフィーナに駆け寄る。


 「む、お主ボルガか!それと……もしかしてジェナートか大きゅうなりおって」


 アルフィーナは2人を知っているらしく懐かしい顔で笑う。


 「おっ、おい!あの大きな獣は、聖獣様じゃないか!」

 「あっ、ああ、あの真っ白な毛の大きな獣と言やぁ、昔、爺様に聞かされた、爺様の生まれた里を救った聖獣様じゃねえか?!」


 イヌ科とネコ科の人が驚いた声を上げながら真白を見ていた。


 「まあまあ、皆の衆!いろいろと話はあると思うが、ここは魔女様が来てくださったのだ、そうだのう……ワシの家の前で宴といこうではないか!」

 「「「おおーーーーーーっ!!!!」」」


 老人の一言で周りが活気付く。


 「でも、父さん蓄えが……」

 「うむ、分かっている。倉の残りを出せば何と無かるだろう」

 「そうだけど……」


 30歳ほどの男性は苦しい表情を浮かべて老人に駆け寄るが、老人は平然として宥めている。


 話からすると、どうやらこの二人は親子らしい、どうりで似ているはずだ。


 「魔女様と皆様、勝手に決めてすいませんが、どうか宴に参加してください」

 「ふむ、他の者達が構わぬのなら、私も良いぞ」


 アルフィーナは振り向いて俺達の意思を聞く。


 「そうですね、俺は参加しても大丈夫です」

 「マスターの御意思と同じです」

 「ワン!」『主様(あるじさま)と一緒です!』


 全員参加と言うか、俺以外参加の意思とは違うような……。


 「ふむ、皆参加するそうじゃ」

 「おお、それは良かった!では、宴まで時間があるので私の家で寛いでくだされ!ささっこちらです」


 老人は先ほど老人自身が出てきた木戸を開けて俺達を家の中へ招き入れる。

 アルフィーナは老人の後について入っていったので俺達も後に続く。


 どうやら今夜はこの村で宴会を開いてくれるらしい。

 主賓はアルと真白かな?

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