第8話 魔女宅開拓期(人工魔石)
午後は魔鉱石の研究に入る。
「じゃあ、掘り出した魔鉱石を取り出すよ」
「うむ!」
アルフィーナとミナの前に無限収納の中から魔鉱石を取り出す。
俺達の前に大小さまざまな魔鉱石が1メートル程度に山積みで現れた。
「結構量が多いんで少しだけ出しました」
「こっ、これは!」
何かに驚いたアルフィーナは、野球ボール大の魔鉱石の一つを取り近づけて鉱石を調べる。
「おっ、おいマサキ!これは本当に先日地面で取れた魔鉱石なのか?」
アルフィーナは手に持つ魔鉱石を一度見ると、驚いたような声をしている。
何かあるのだろうか?
「ええ、どうしたんですか?」
「本当にこれが魔鉱石なのか?どうみても魔石に見えるのじゃ」
あまりにも驚きすぎてアルフィーナは魔鉱石を取り落としそうになった。
「そうなんですか?以前アルフィーナさんに見せてもらった魔石より透明度が無いと思いますが……」
たしかに山の魔鉱石は、どれもアルフィーナが手に持つ魔鉱石とほとんど変わらない透明度をしている。
「違う魔鉱石とは……いや、待っておれ、今私の持っている魔石を持って来るのじゃ」
「はあ」
アルフィーナは、慌てて木の家に入っていった。
そんなに慌てなくても逃げませんよ。
「ミナは、透明度がどの位か分かるかい?」
「基準となる鉱石があれば
人間の目では微妙な透明度を比べるのは、職人クラスの目が必要だ。
ただし、ミナにかかれば鉱石の透明度を調べるのも簡単に出来る。
アルフィーナの持っている魔石と、ここにある鉱石がどのぐらいの透明度に差があるのか調べてもらおう。
「持って来たのじゃ!」
ミナとこんな会話をしていると、アルフィーナが袋を持って戻ってきた。
あれ?魔石だけじゃないのかな?
「これがマサキに見せた魔石なのじゃ」
そう言ってアルフィーナは俺にコブシ大の魔石を渡す。
「うん、綺麗な紫色ですね。やはりここにある魔鉱石より色が綺麗ですよ」
アルフィーナの持ってきた魔石は、宝石とも言えるほど綺麗で透明な紫色をしている。
対して無限収納から取り出した魔鉱石は、濃い紫色をしている。
「うむ、天然の魔石は、その希少性と見た目から宝石としても扱われておる」
「ですよねー綺麗ですもの!」
太陽に透かして見ると、不純物の見られない綺麗な紫色が映される。
「マスターお借りしてもよろしいですか?」
「うん、アルフィーナさん良いですか?」
持ち主はアルフィーナなので宝石と同じ扱いの品をホイホイと人には渡せないので確認を取る。
「うむ、ミナも見るといい」
「はい、お借りします。アルフィーナ様」
アルフィーナから許可が下りたのでミナの手に魔石を乗せる。
魔石を手にするとミナも同じ様に太陽に透かして魔石の色を見ているようだ。
「たしかにアルフィーナ様のお持ちの魔石は、不純物が少なく10倍に拡大しても中に不純物を確認するのは難しいですね」
「綺麗だよね、アルフィーナさん、やはりここにある鉱石は魔鉱石ですよ」
魔鉱石を一つ取って太陽に透かしてみるが、魔石の様な透明感は無く光を通さない深い紫色をしていた。
「そうじゃ無いのじゃマサキ、お主に見せた私が言っていた魔鉱石とはコレじゃ!」
アルフィーナは袋からもう一つコブシ大の石を取り出して俺に渡す。
「あー、たしかに言ってましたね」
手渡された石は、石の中に紫色がまばらに点在する物だった。
「のう、分かったじゃろう。お主が掘り出した鉱石は紫一色、その魔鉱石の様にまばらになっておらぬ。いくら他の部分を取り除いたからと言って、これほどの大きさの紫色の部分にはならんのじゃ」
「そうなんですか!」
無限収納から取り出した魔鉱石は一部だが、中に入っている魔鉱石はどれもほとんど変わらないものだ。
「うむ、この様な鉱石は、ほとんど魔石と言ってよい」
「ええー、このままでも魔石として使えるんですか!」
「うむ、じゃが、魔力量には差が出るじゃろう。しかし、これだけの純度の魔石が、ここにあるだけでも私が居った王国の年間採掘を超えておるのじゃ」
アルフィーナが言うには、ほんの一山程度のでも国一つの年間産出量に相当すると推測出来るらしい。
「そうなんですか、王国の年間の量を超えるですか……凄いですね」
「うむ、しかし、魔界にこれほどの魔石がのう……昔から、魔界は魔素が多く渦巻くと伝えられておったからの、まさか真実とは……」
俺は魔石の利用方法を考えて頭を悩ませ、アルフィーナは魔界の魔石の量に困惑していた。
「マスター、まずは利用方法の確立が先決かと」
「ああ、そうだね、使い道を考えないと!」
ミナの言う通り使い道が無ければただの石なのでまずは魔石の利用方法を考える。
「その前に魔石の純度を上げないと!」
「なぜじゃ?このままでも十分使えるのじゃぞ」
「ええ、そうですね。でも純度を上げておけばより多くの魔道具への活用が出来るので」
魔石の純度を上げておけば色々な面で使用の幅が出てくる。
コスト的に問題なければ純度が高いほうがいいしね。
「なるほどのう。ああ、そうじゃった。ちょうど純度の話じゃからコレを見せよう」
アルフィーナは再び袋の中手を入れて灰色の石と、宝石箱サイズの箱を取り出す。
「この灰色の石が、お主に前に話したクズ魔石じゃ」
「へー、これがクズ魔石なんですね」
クズ魔石とは、以前アルフィーナから聞いていた人工的に魔石の純度を高めようとして失敗した魔石の事で、その魔力量は魔鉱石よりもはるかに少なく現在使い道が無い魔石のことだ。
「ん?アルフィーナさんが持っている箱は何ですか?ずいぶんと慎重に持っているようですが……」
アルフィーナは、箱を落とさないように両手でしっかりと持っていて、顔も幾分緊張気味の様な気がする。
「うむ、これはな、私のいた王国で人の手で魔鉱石を魔石に出来た成功例じゃ」
「ああ、そういえば作り出すのに温度調整が難しいと言ってましたね。」
貴重な魔石を使った実験をしていて成果があったからこそ温度調整という結果を得ることが出来た。
何らかの成功又は、成果が無ければ解決の糸口さえも見付からない。
「うむ、じゃがのう……成功したのじゃが、これを使うと使った者は呪われるのじゃ……」
「え?呪われる!?」
さすが異世界呪いも有るのか……まあ、日本でも呪いや
「もしかして装備すると外れないとか?」
「ぬ?そういった物ではない」
お約束じゃないですか!何を言ってんだコイツは?と言った目で見ないで欲しいが、アルフィーナは知らないからしょうがない。
アルフィーナは王国であった呪いの魔石について知り得る限りの話をする。
それによると、この魔石は王国で成功した数少ない人口魔石で、当時、長年の実験の成功に国王以下身分の高い者は大いに喜んだ。
しかし、その喜びも束の間、この人口魔石を使い作り出された魔道具を使った者が、次々と病で亡くなる不幸が続く事になった。
あまりに使用者への不幸が続くものだから、いつしか人々は人口魔石の事を呪われた魔石、または神の怒りに触れた魔石と呼ばれる様になったらしい。
そして、国王が人口魔石の実験の中止と研究所の閉鎖を行って人口魔石の製作技術は廃れてしまった。
この魔石は、その時作られた内、王家の宝物庫で厳重に管理され眠っていた物だそうだ。
ここからは想像だが、もしかしたら道具として他の国に渡して暗殺に使う予定だったのかな?
「亡くなった人達は、どの様な病だったんですか?もしかしたら流行り病で次々と、といった可能性もあると思うんですが……」
もしくは強い感染病などで魔道具の接触者が亡くなったのかもしれない。
「私も直接見たのではないのじゃが、たしか魔道具を使用すると急に倒れそのご意識を取り戻す者もいれば、そのまま死ぬ者もいたらしいのじゃ、王国の中でも魔道具を使う者か近くにおった者が呪われておるので、やはり魔道具が原因じゃろう」
なるほど、魔道具の使用者のみが、その症状の病にかかったのか、それじゃあ、魔道具が原因と考えるのが自然かな……。
「見せてもらっても大丈夫ですか?使わなければ問題ないと思うんで……」
「うむ、私も直接触っているので問題ないはずじゃ」
そうアルフィーナは言うと、留め金を外し箱の蓋を開ける。
中には、5,6センチの大きさの碁石を大きくした様な丸くて平べったい紫色の魔石が納められていた。
見ると人口魔石は、透き通る様な綺麗な紫色をしている。
アルフィーナの持っている天然魔石とそん色ない感じだ。
「俺が持っても大丈夫ですか?」
「うむ、大丈夫だとは思うが……もしもの事があるかも知れんので止めておいた方が良いじゃろう」
たしかに万が一俺が不用意に魔力を巡らせたら俺のみならず周囲の者へ危険が及んでしまうので止めておこう。
「マスター私が調査してもよろしいでしょうか?」
「えっ!ミナが!?」
ミナならミスを犯す事も無く正確で精密な調査が出来る。
「どうでしょうか?アルフィーナさん」
「うむ、ミナなら問題ないじゃろう」
アルフィーナが、ミナに箱を向けるとミナは無表情でひょいっと魔石を摘み上げると色々な角度で観察を始める。
もう少し緊張した!とか欲しいが、ミナだからしょうがない。
「……透明度に違いはありませんが、天然の物とは多少は違うようです」
「ほう、すぐに分かるのじゃな」
一瞬で分かるミナの凄さに改めて驚く。
俺が見ても違いなんてまったく分からない。
「マスター、アルフィーナ様、この魔石に魔力を通してみたいと思います」
「なんじゃと!そんな事をして大丈夫なのか!?」
ミナの発言にアルフィーナは驚いているが、さすが神に作られし者、呪いなんて一寸も気にも留めていないようだ。
「はい、問題ないかと思います。ただ皆様少しだけ距離を取って頂いても貰ってもよろしいでしょうか?」
「どうするのじゃ?マサキ」
「ミナが問題ないといっているので大丈夫でしょう。任せたいと思います」
ミナの事だから不可能なら不可能って言うだろうし、ここは本人の意見を尊重しよう。
「うむ、お主がそう言うのなら、私も構わぬ!」
アルフィーナも賛成してくれたので3人はミナから10メートルほど距離を取ってミナを見つめる。
「では、始めます」
ミナは魔力循環を始めたらしく徐々に魔石が光りだす……と思った瞬間!一瞬で光が止む。
「どうした!何かあったか!」
ミナの無表情は変わっていなかったが、もしかしたら何かあったかも知れないので心配になり大声でミナに問いかける。
「はい、呪いの原因が分かりました」
「「な!」」
無表情で今まで何人かの犠牲を出してきた呪いの原因が何なのかあの一瞬で分かったと言う。
「マスター、お願いがあります」
「なに?」
「魔法で少し強めの風を作って、ここの空気を拡散して下さい。そうすれば皆様こちらに来ても大丈夫です」
「分かった」
言われた通りに風を作ってミナの周囲の空気を拡散させる。
強い風なのでミナのスカートがめくれるが、ミナは中にハーフパンツを穿いているので問題ない。
「はい、問題ありません」
風で拡散したので問題ないとミナは答えたので(……でいいんだよな?)、急いでミナの周りに集まる。
「で?何が原因だったのじゃ?」
「少し魔力を通しただけで分かったんだ」
長年王国で呪いの物として扱われてきた原因について何が分かったのか、アルフィーナは少し興奮しているようだ。
対して俺は、まあミナなら分かるか、と落ち着いている。
「はい、原因は魔石に魔力を通した際に発生する一酸化炭素ですね」
「一酸化炭素?何じゃそれは!」
「ああ~なるほど、魔石から魔力以外に一酸化炭素が作られていたんだ」
日本の科学の事を知らないアルフィーナは、一酸化炭素がどの様なものか分からずに悩んでいる。
俺は、異世界の魔法が想像した物を作り出せる不思議な力と認識しているので何となく理解できた。
「でも何で魔石が一酸化炭素を作り出すの?」
「はい、恐らく魔石内部で出来ている結晶の構成が、そのような物質を作り出していると考えられます」
なるほど魔石自体が一酸化炭素を作り出す構造になっていて、使用者の魔力がトリガーとなって自身のエネルギーを使って一酸化炭素を出していたのか、
しかし、魔石というのはまだまだ謎だらけな物質だな。
「お主ら、私にも分かるように説明するのじゃ!」
アルフィーナを置いて話を進めていたので、アルフィーナは頬を膨らませて拗ねている様だ。
「ああ、すいません、一酸化炭素と言うのは、向こうの世界では毒のような物質です」
「はい、その通りです。空気の循環が無い密閉された空間で火を起こすと発生します。なお、無臭である程度の量を吸い込むと昏睡しそのご死亡します。生存しても重い障害に悩む事でしょう」
「なんと!そのような物があるのか!」
アルフィーナは、一酸化炭素が何かは分からなかったが、物質自体の特性や発生方法を聞くとすぐに理解し納得する。
「ミナは、何か解決する方法を見出したのかい?」
俺には分からなかったが、天然と人口の違いに見るだけで判断できたと言うことは、ミナには何か違う特徴が見えたと言うことだ。
「はい、恐らく結晶を融解し純度を高めその後、凝固させた時に結晶内部の構造が天然と違うかと思われます」
「へー、なるほどね、でも、溶融させて純度を高める方法は思いつくけど、凝固時の結晶の構造変化はどうにもならないよ?」
科学の知識を少しかじった程度の俺の知識では、凝固時の結晶をどうこう出来る方法は思いつかない。
「はい、そちらの方はメドが付くかと……しかし、マスター純度を上げる方法とは何でしょうか?」
驚く事にミナは、問題となる箇所の解決方法にもう当たりを付けていた。
恐らく電子顕微鏡もビックリの視力で確認したんだろうけど……菌も見えるみたいだし、あの主人公みたいだな、ゴスロリだし……あっ!それは親友の方か。
「純度上昇には、ゾーン精製法を使おうと思う」
ゾーン精製法とは、簡単に言うとコイルを電気で加熱して、その中に純度を上げたい物質を溶融し通過させることで磁場の影響で不純物が端に寄せられる方法だ。
「なるほど、ゾーン法ですか」
「凝固時の構造変化はどうするんだい?」
「そちらは複数の音波で振動を与えて、構造が変化するのを防ぎます」
なるほど音波か……。
「まあ、やってみないと分からないから実際に試してみよう!」
「はい、マスター」
早速ミナと一生に作業に入る。
アルフィーナは自分の知らない単語が一杯でも作業の邪魔をしないように口を塞いでいた。目は真剣そのものの鋭い目つきだ。
作業を説明すると、俺は電気を供給するだけだ……電気を供給するだけだった。情けない。
電気の調整、温度管理、溶融した魔石を電気で熱したコイルの中を通過させるスピード、これら全てミナが担当した。
ちなみに電圧器などの機器も全てミナが用意している。
なんでも電気設備には必須だとか……知らんがな!こっちは、化学系の高校で文科系の大学行った人間だからね、バイトも電気関係はしたことが無いからな~。
凝固時には、ミナの口から直接複数の音波を発生させていた。
本当に驚く程の高性能なパソコンだな……ハハッ。
「上手くいったみたいです」
「そうですね。まあ、ほとんどミナさんのお蔭ですが」
「全てはマスターの魔力と知識と言う情報があったからです」
自分が何も出来なかったことに少し卑屈になりすぎたかな?
せっかくミナが俺の事を立ててくれてるんだ、いつまでも拗ねていても仕方が無い。
「うん、ありがとうミナ。さて、魔石の見た目は……結構変わってるね」
そう、魔石自体の色がゾーン法で純度を上げたためか本来の紫ではなく、まるでルビーのように美しい透明な赤に変わっていた!
このまま装飾品に使っても問題ないくらいに綺麗だ。
「おいマサキ!これが魔石だと言うのか!なんと赤い、こんな魔石は見たことも無いぞ!」
俺たちの作業を真剣に見ていたアルフィーナが、近づいてきて驚きの声を上げる。
「ええ、まさかの結果に俺も驚いてます」
「なんとも綺麗なのじゃ」
魔石を見てアルフィーナはウットリしている。
アルフィーナも女性らしく宝石好きなのかな?
「ミナ、この魔石は変な呪いとかは無いよね」
「恐らく大丈夫かとは思いますが、実際に使ってみないと分かりません」
たしかにミナの目をもってしても構造的変化が無いようなので、試しに使用してみないと分からないと言う。
「じゃあ、実際に俺が「お待ちください」」
さっそく試して見ようと魔石を手に取るとミナが止める。
「ここは、先ほどと同じように私にお任せください」
「え?大丈夫だよ、少し魔力を流すだけだから」
一酸化炭素は危険な物だけど吸い込まなければ問題ないだろと思っていたが、ミナは顔にあまり変化はないが、ジッと何も言わずに俺の目を見る。
ミナはどうも譲る気は無いようだ。
「分かった。じゃあ、ミナに任せるよ」
「はい、お任せください」
ミナは深々と頭を下げて応えた。
信用されていない……いや、心配してくれているんだろうな。
ミナに人口魔石を渡してアルフィーナと一緒にミナから距離を取る。
俺たちが離れた事を確認すると、ミナは魔力循環させ魔石に魔力を流すと、驚くことにすぐに魔石は淡い光を帯びた。
紫の人口魔石の時はボリュームを上げるように徐々に光り出したのに対して、赤の人口魔石はスイッチをオンにした様にすぐに光りだす。
まるで魔素の流れにまったく抵抗が無い感じだ。
ミナの持つ魔石の光が、徐々に弱くなって消えると実験は終了する。
「終わりました」
「おぉ、どうじゃった!」
ミナの実験終了の宣言を受けると、アルフィーナは待ってました!とばかりにミナのもとに駆け寄り質問する。
結果を聞きたい俺もアルフィーナの後に続いてミナのもとへ向かう。
「はい、実験は成功です。一酸化炭素は出ていません。純度が高いせいか魔力の通し易さ、魔力量ともに飛躍的に上がっております」
「なんと!」
「おおー!やった」
実験の成功にアルフィーナは驚き俺は喜んだ。
しかも魔力の伝達速度や魔力量が大きくなるとは、大成功と言っても良い!
「すべてはミナのお陰だよ!ありがとう」
「いえ、私はマスターの所有物なのであたり前です」
ほとんどミナがやってくれたのに、当のミナは誇りもせずに優々とお辞儀で返す。
「お主らは、本当にとんでもない事を少しの時間でやってしまうな……これも、異世界の知識とミナの能力が有ってこそ……か、ふむ」
「いえ、アルフィーナ様、私の能力は他の物でも代用は可能です。今回はそういった物が用意出来なかったので急場として私が対応致しました」
たしかにミナの行なった作業自体は、日本でも機械が行なっているから機械自体を製作すれば解決できる。
あとは、知識と経験を積んでそれらの機械をどの様に使っていくかで今回の実験も再現出来るだろう。
「それじゃあ後は、魔導金属っと、これは銅などの金属に魔石を砕いた物を配合すれば良いんですよね?」
「そうじゃ、金属は何でも大丈夫なのじゃ!あとは魔石の配合に気をつければ大丈夫じゃ」
魔導金属は、すでに確立された技術があるので問題無さそうだ。
「そうすると残るは、魔結晶ですね」
「うむ、繰り返しになるが魔結晶は水晶などに魔石が混ざった物のことじゃ。私の知る限りでは鉱山などでしか見つかっておらん」
なるほど水晶などに魔石が混ざったか……ん?
「それってガラスでも代用できるんじゃないんですか?」
「ガラス?おおっ、あれか!たしかにアレならば……」
天然でしか手に入らないという事は、人工の物をまだ作り出せていないということ、ならば成分がほぼ同じガラスを使えば問題を解決できるのではないだろうか!?
「マスター、よろしいですか?」
ミナが何か提案してくると言う事は、ミナが記憶している情報の中により適格な項目か品があると言うことだろう。
ここは、ミナの意見を聞くべきだな。
「どうした?何か思い当たる事でもあるの?」
「はい、ガラスを使うのはとても良いと思います。ただ、ガラス自体は脆く割れやすいので、ここは超硬質ガラスを使うのをお勧めします」
俺の発想自体には問題が無いらしい。
たしかにミナの提案にもあるようにガラスは非常に割れやすいので普通のガラスではなく超硬質ガラスを使いたいと言ってきた。
「超硬質ガラスってなんだい?」
「はい、超硬質ガラスとは、ガラスに数種類の金属を混ぜて作った物です。とても硬く、鋼鉄に近い硬さを持っています。ただし通常は特殊な炉で熱して作らねばならないのですが、それは魔法で解決できると考えます」
なるほど、たしかに魔法を使えば特殊な方法も簡略化出来ることは、ガラス作りで証明出来ている
ミナなら魔石に直接魔力をかけない方法も知っているだろうから問題ないだろう。
しかし、鋼鉄に近い硬さのガラスが在るとは正直驚いた。
「ほう、そんな物が……まあ、考えていても仕方が無い。成功するか失敗するか実験してみよう!」
「はい、準備をします」
魔石の次は、魔導金属と魔結晶の製作にかかる。
俺は相変わらず魔法で電気を出すか熱を発生させるかで、砕く魔石の粒の大きさや混合させる量、温度、攪拌して魔石が均一にするなどは、すべてミナが担当した。
やっぱりこの子は俺なんかよりも“チート娘だ!”
魔導金属と魔結晶は、問題なく作ることが出来た。
ただ、魔導金属、魔水晶ともに魔石の含有量が違うものを数種類用意している。
これは、魔導金属なら魔力の伝達速度を、魔結晶は光を出す魔法を刻み一定の魔力で光の強さを見るために用意した。
すべての調整と測定は機器がまだ開発出来ていないのでミナに見てもらう。
「マスター、魔導金属、魔結晶ともに一番よい含有量が確認できました」
「うん、さすがミナだ!」
「いえ、これもマスターのおかげです」
人では、とうてい不可能な作業を事も無げにやってのけたミナを誉め讃えるが、ミナは俺のおかげと言うので頭を掻いて苦笑いを浮かべる。
ミナはミナで謙虚と言うか何と言うか、無表情でそんな事を言われても困るな。
「それと、マスター魔導金属、魔結晶それぞれ魔法で加工出来る事も分かりました」
「えっ、魔法で色々な物に成形できるの?」
魔石を使っている物なので魔力を流すと何らかの不具合が生じると思っていたが、どうやらそうではないらしい。
「はい、魔導金属は魔石含有率が低いせいか魔石としての集合体ではないせいか、魔力に反応はしても変質や増幅はしないようです。」
「へえ、そうなんだ。まあ、もともと魔力を伝える物だから変化しないんだろうね」
魔導金属は魔力を伝える物なので魔力で変化しては使い勝手が悪い。
「さて、魔石・魔導金属・魔結晶と魔道具を作る材料のすべてが揃ったんだけど……ミナ、これで集積回路作れるんじゃないかな?」
「はい、素材の特性を考えると、近い物が作れるかと思います」
伝導体があるので、条件しだいで魔力を放つようにすれば集積回路に近いものが作れるのではないかと考えミナに伝える。
すると、電気の特性と似ているので恐らく作れるだろうとミナの賛同が得られた。
これで今までにない魔道具が作れるかもしれない。
「のうマサキ、シュウセキカイロとは何じゃ?」
今までの作業の中で色々と聞きたい事を我慢してたアルフィーナが、どうしても我慢できずに質問してくる。
「そうですね、集積回路とは、条件次第で色々な判断が出来る物……ですかね」
「ほう、色々と判断できるのう」
そこまで電気工学を熟知していないので大雑把にアルフィーナに説明する。
「はい、組み合わせ次第では、さっき空を飛んでいた物も飛ばせるようになります」
「なんと、そのような事まで!」
「ええ、それが電気でも出来たんで魔法でも応用してみようと考えたんです」
アルフィーナは口を開けたまま声にならないほど驚いていた。
とりあえずこれ以上の説明は、俺には無理なのでミナに任せよう。
「ああでも、俺が作ったら大きくなってしまうからミナに任せてもいい?」
「はい、お任せ下さい」
俺の工作技術は素人レベルのハンダ付け作業程度なので、繊細な作業が出来るミナにこの辺の作業は任せた方がいいだろう。
「よし、じゃあ他に何か魔道具で作れないか実験してみよう!」
「はい、マスター」
「私も微力ながら手伝う……いや、作業を見せて欲しいのじゃ」
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