第3話
「~♬♪」
放課後の学校。裏庭に響く声は、透明で、ちょっぴり暗い。
「湊くん、悩ましいって顔してるね」
相変わらずきれいな声だけど、影があるよ。大きな石に座って、白いセーラー服の袖をまくりながら、少女は言った。
「進路のことでしょ? もう決めないとだもんね」
少女は目を伏せながら言った。少年は、紅葉した桜の木の下で暗く低い声で歌い続ける。
「湊くんはさ、大学なんか行かないで、東京行って歌手になりなよ」
返事は返ってこない。ただ、少女にはわからない英語の歌詞が響く。返事がなくてもなお、少女は言った。
「湊くんなら絶対スターになれるよ」
私が保証する、と小さく微笑みながら。
校舎の屋上に設置されたスピーカーから五時を知らせる音楽が流れる。
「湊くん、暗くなっちゃうから帰ろう」
少年は、歌を止めて桜の木を見た。ぼんやりとして、何も映していないその瞳で、まっすぐに、少女を見つめていた。
湊くん。少女は小さな声で言った。湊くん、もう来なくていいよ。
少女は、泣いた
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