第2話
「~♬♪」
放課後の学校。裏庭に響く歌声は、透明で、ちょっぴり悲しい。
「湊くん、相変わらずきれいな声だね」
大きな石に座って、少年の歌う歌をハミングしていた少女は、笑いながら言った。それから、まじまじと少年を眺めた。
「湊くん、好きな人できたでしょ」
顔に出てるよ、青春だねぇ。少女は、いたずらっぽく上目遣いで言った。少年は、とっくに花が散った葉桜の下で顔を赤く染めて、いねえよと反論するが、少女は、そんなことに構いもしない。何も望まず、言葉を放り出す。
「私にもいたよー、好きな人。少女漫画みたいにイケメンじゃなかったけど、素朴で優しい人。私、その人の声を聴くのが大好きだったんだよね」
まあ、もう叶わぬ恋になっちゃったけど。少女は、石の上に落ちていた桜の葉に触れようとした手を引っ込め、俯いて悲しく笑った。
「湊くん、もっと、前向きに恋しなよ。悩むのもわかるけどさ、今しかできないんだから」
少女のその言葉と同時に、五時を告げる音楽が流れた。少年は、スクールバッグを肩にかけ、ぼんやりとしていて何も映っていない瞳を桜に向けた。
「じゃあ、いつまで待てばいいんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます