第6話『ちーちゃんとかれはさん』 ~前篇~
丘の上のまん中に、白くて大きな建物がたっていました。
その中庭に、太っちょの木が一本はえていました。
太っちょの木がいいました。
「オラオラ! はっぱども!
さっさと光とりこんでエーヨー運ばんかい!
太陽はんかて、いつまでも
てってるワケにはいかんのやで!
日ぃがくれてまうわ!」
はっぱをかけられた はっぱたちは
夏のあつい陽射しの中、汗をカキカキ働きました。
たくさんの光をエーヨーにかえては
太っちょの木におくらねばなりません。
はっぱたちがヘーコラヘーコラ働いている間に
あっというまに秋がやってきました。
さむい冬はもうすぐそこです。
はっぱたちは冷たい木枯らしが吹くたび
「はぁ…」とため息をつきました。
せいいっぱい働いて、カサカサになったカラダは
もうまともにエーヨーを運ぶこともできません。
「くぉら! いまため息ついたんはどいつや!
まともに働くこともできひんくせに
いっちょまえにため息なんぞつきおって!
クビじゃクビ! この役立たずどもめが!」
そう怒鳴りちらした太っちょの木は
カラダを ぶぉんっとふるわせて
はっぱたちをふるい落としてしまいました。
バサッ。
バサバサバサッ。
はっぱたちは小さな悲鳴をあげながら
次々と地面におちてゆきました。
残るはっぱはあと1まい。
「ほぅ、なかなか根性あるやんけ」
太っちょの木が目をほそめました。
「おねがいです!もうやめてください。
ここを離れたら、ぼくは行くあてがないんです!」
「……んなもん、知るかッ!」
ぶぉん!
――と、太っちょの木がおもいきりカラダをふるわせた瞬間、
最後まで残っていたはっぱも
とうとう枝を離れ、はらりはらりと
地面に落ちてゆきました。
「がははははははは!」
落ちてゆくはっぱを
太っちょの木の大きな笑い声が
どこまでもおいかけていきました。
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