第5話『魔災チルドレン』〜その弐〜

両親がなくなってすぐ、

ぼくらは県外の施設にうつされた。


高校にいくつもりはなかった。

働いて、妹を学校にいれてあげたかった。


その思いだけには現実感があり、

生きている意味をぼくに感じさせてくれた。


僕は中学を卒業して、

新聞配達と引越し屋をかけもちで、

寒い日も暑い日も毎日働いた。


もくもくとたんたんと働いていると、

余計なことを考えずにすんだ。


やがて、妹が無事にとある学校の

特別クラスに入学できたとき、

ぼくは本当にホッと胸をなでおろした。


それからまた少しして、

ぼくらは自分たちでアパートを借り、

妹と二人暮らしをすることになった。


仕事は肉体的にきつかったし、怒鳴られることも多かったが、それが心に突き刺さるというようなこともなく、次第になんとかこなせるようになっていった。


そうして3年がたち、正社員で採用してもらうことが決まったある日、ぼくは引越し屋の事務のおねえさんから、告白された。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る