第3話『覚醒』

気が付くとそこに立っていた……。

記憶喪失だろうか。自分の名前すら思い出せない。


私以外の連中も同じなのだろうか。

みな、寡黙に押し黙ったまま茫然としている。


番号のついたネームプレートをつけられ、

綺麗に整列させられているところをみると、

何か悪いことをしでかした報いを受けているのだろうか。


青ざめた顔してる奴もいれば、

血の気のひいた白い顔の奴もいれば、

肝臓に疾患があるのか、病的に黄色い顔の奴もいた。


っう! 突然、頭の中に白い閃光が走り、

記憶がフラッシュバックする。


無骨で無機質な大きい部屋――実験施設内の無菌室のようなところで、

体中を好き勝手にいじられまくっている感覚が蘇る。

寒気と吐き気が同時に襲ってくる。

なんとおぞましい感覚だろうか。


時折、うっ!というくぐもった声がどこかであがる。

みなもフラッシュバックに苦しめられているのだろう。



――数時間経過してわかったことがある。

なんの前触れもなく、 私たちの中から誰かが選ばれ、どこかへ連れ去られていく。

そして、彼らは二度と、戻ってこない……。


みな、次は自分の番かと戦々恐々としはじめた。また、ヤツらがきたのだ。


ヤツは私の前で足を止めた。

次の瞬間、そいつは無造作に私をつかみ、

乱暴にカーゴに放り込んだ。


乗り物にゆられること数十分。私は見知らぬ建物の中へ押し込められた。

そいつは私をまっすぐに立たせると、

いきなり身ぐるみをはぎとった。


なっ!? 


私は抵抗する間もなかった。

にやりと笑ってそいつが再び接近してくる。


くっ!


一体私をどうす――

言葉も言い終わらぬうちに、そいつは唯一残されていた大事な秘部を覆い隠すシールドを

半分ほどまくり上げ、そこに強引にぐつぐつと煮だった煮え湯をぶっかけた。


うわあああああああああああああああああああああ!!!!


私はあまりの熱さに悶絶し、意識を失った。

薄れゆく意識の中で、そいつが下卑た笑みを浮かべているのが見えた。



どれだけの時間が経過したのだうか。

気が付くと、そいつがまた私の前に立っていた。


も、もうイヤだ!


声の出ない叫びをあげる私を無視し、そいつはまたもや私に手をかけた。今度は大事な部分を覆い隠していたシールドもすべてはぎ取られた。


や、やめろ!


頼むやめてくれ!


お願いだ!


なんでもする!


だからもう―― 


うわああああああああああああああああああ!!!!!!




























「いっただきまーす!」


……へ?


突如、あまりにも場違いな、能天気な声が私の頭上に響いた。


――っ!?


私の脳内に再び白い閃光が走った。


そして私は、唐突に、すべてを思い出した。


そうか……そうだったのか!?


私は―― 


私の名前は! ――

























カップヌードルだったんだああああああああああああああ!!!!!





お買い上げ、ありがとうございましたー!

どうぞ、おいしくお召し上がりくださーい!


              END


※白いのは普通のカップヌードル。

青ざめてるのはシーフードヌードル

黄色い顔はカレーヌードルでした。

番号のネームプレートはバーコード

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