01 朝陽

 完全に闇に包まれたビル街に、揺れる光のカーテンが立ち上がり、ゆっくりと広がってゆく。


 マンションのベランダから、私と彼女は夜空のオーロラを見上げた。


「素敵ね!」


 ワインを飲んでほろ酔い気分の彼女は、私の肩にしなだれながら言った。


「北欧では古くから、オーロラは神と人間の世界を結ぶ橋と信じられていたんだ」


「神秘……的……ね……………」


 彼女はワインに入れた睡眠薬で眠りに落ち、華奢な指先からワイングラスが落ちて砕け散った。


 私は彼女を抱きかかえると寝室に運び、ベッドの上に静かに横たえた。


 彼女は、太陽の巨大な爆発、スーパーフレアが起きたことを知らない。


 わざわざ怯えさす必要もない。


 彼女は、このまま静かに眠らせてあげよう。


 強い放射線と高エネルギー粒子に曝され、既に地球の裏側は壊滅した。


 ここも間もなく、夜明けとともに太陽フレアが直撃する。


 私は恋人が眠るベッドに腰かけ、静かに窓を見つめた。


「知ってるかい?オーロラを一緒に見た恋人たちは、一生一緒にいられるという……………」


 

 朝陽が昇った。

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