42 冷凍

 冷凍カプセルに横たわる男が、ガラス越しに見た妻は涙を流していた。

 妻の横に立つ子供たちは、必死に背伸びをして男の顔を覗き込んでいた。

「きっと、あなたの治療方法が見つかるからね!それまで、少しの間、冷凍冬眠していてね」

 カプセル内に冷気が満たされ、男は永い眠りについた。


 男が目覚めた時、ガラス越しに皺だらけの老婆が見つめていた。それは年老いた男の妻であった。

「まだ、あなたの治療方法は見つからないの。でも、最後のお別れがしたくて、あなたを起こしたのです。あなたのことは、子供たちが面倒みてくれるから安心して。さようなら、あなた」


 次に男が目覚めた時、見知らぬ青年が立っていた。

「あなたの最後の子孫が亡くなったことをお伝えするために起こしました。残念ながら、まだ、治療方法が見つかっていません。でも、基金が冷凍カプセルの維持費を支払っていますから安心してください」


 次に男が目覚めた時、見知らぬ生物が立っていた。

 もう、人類は滅んでしまったようだ。

 男はその生物に頼んでみた。

「眠らせて下さい」


 次に男が目覚めた時…………。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る