40 利用規約

 余命いくばくもない妻のために何をしてやれるか。


 男は妻を喜ばすためのショートショートを書こうと決意した。


 男はWeb小説の投稿サイトに登録し、一生懸命投稿した。


 人気はなかったが、妻は毎日、病室で楽しそうに読んでいた。



 ある日、突然、男は投稿サイトにログインできなくなった。


 慌てて男が運営に問い合わせると1通のメールが返ってきた。


『利用規約に違反する行為を確認し、会員登録を取り消しました』



「ごめんなさい、あなた!私が悪いの!」


 聞けば、人気がなくて男が寂しそうだったので、妻が何人ものユーザー登録をし、偽りの高評価をつけたのだった。


 夫婦の自作自演は運営にばれ、登録は抹消され、投稿作品はすべて削除された。


 やがて、妻は失意のうちにこの世を去った。



 妻の葬儀が終わった夜、夫は再び投稿サイトに登録をした。


 世をはかなんだ夫は、当てつけに「遺書」を投稿し、自殺した。




 その後、運営から1通のメールが送られてきた。


『公序良俗に反する投稿のため、会員登録を取り消しました』

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