11 叫び

 老人が泣きながら鎌を振うたび、斬られた麦たちが断末魔の悲鳴を上げた。

 例え耳をふさいでも、麦たちの悲鳴は直接老人の脳に響き渡った。

「許しておくれ。わしらが生きてゆくためなんじゃ。死んでおくれ」

 と、老人の足元で、何十もの悲鳴が上がった。

 慌てて足をあげると、地面には老人が踏みつぶした蟻たちの死骸が転がっていた。


 センシティブと名付けられた流星群が地球に近づくにつれ、流星群の放出する未知の放射線が人類の脳を活性化し、動植物が発する断末魔の悲鳴を感じ取れるようになってしまったのだ。

 家畜たちは殺されるたびに悲鳴を上げ、穀物や野菜も刈り取られる時に悲鳴が聞こえるようになった。

 大勢の人たちが食事をとれずに餓死したり、ノイローゼになり自殺をした。

 人類はいかに多くの生命を奪って生きてきたのか、改めて思い知らされた。


 遂に、センシティブ流星群が地球に最接近した。

 轟音をあげ、足元の大地が激しく揺れだした。

 老人は立っていられなくなり、麦畑の中で倒れた。

「地球が泣いておる……!!」

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