27 引きこもり

『いい加減にそんなゲームなんか止めて外に出てきなさい!』

 私が部屋のドアをこぶしで叩くと、返事が返ってきた。

『外の世界は怖いからイヤダ!』


『しかたないわね!』

 私は炎の呪文を詠唱すると、ドアを吹き飛ばした。

 部屋の中にはゴブリンの子供が一人、ゲームのコントローラーを握りしめて立ちすくんでいた。


 外に連れ出そうと、私はゴブリンの子供の手を引っ張った。

『ヤダ!ヤダ!外の世界は戦いばかりで恐ろしい!ボクはこの部屋の中で遊んでいる方が楽しいんだ』

『何を言ってるのよ、弱虫ね!ネトゲ世界の中のゲーム機なんか、ガキのオモチャじゃないの。』

『フン!ネカマのくせに!』


 その時、私の背後からリアルにドアを叩く音がした。


「タカシ!いい加減にそんなゲームなんか止めて外に出てきなさい!」

「うっせな!クソババァ!今、忙しいんだよう!」


 俺は再びモニターに向かうと、チャットで素早くタイプした。

『さあ!私と一緒に、モンスター狩りに行きましょ!』

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