20 特別興行

 PM2.5やら黄砂やら、様々な粒子状物質の混じった霞カスミが夜空を覆う。

 遠目に見える工場の煙突は、夜だというのに今も黙々と煤煙を吐き出している。


 広場には何万人もの観客が集まり、特別興業が始まるのを今や遅しと待ち構えていた。

 観客たちは皆、色とりどりのファッショナブルなマスクをして、時折咳き込みながらも、期待に胸をふくらませていた。


 やがて、壇上にスポットライトが当たり、一人の男が現れた。


 不気味な色をした夜空を見上げ、檀上の男は観客たちに言った。

「これより政府公認の特別興行をお送りいたします。この原理は、いわゆるスモーク・スクリーンの応用でして…」


「能書きはいいからとっと始めろ!」

 すっかり待ちくたびれていた観客たちが一斉に騒ぎ出した。


 檀上の男は少しむっとしたが、すぐに笑顔を取り戻した。

「では、説明は後回しにして、さっそく上映しましょう」


 男がスイッチを入れた。


 スモッグの空をスクリーンにして、ここ何十年間見られたことのなかった、星空が映し出された。

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