考察と知る者
裕也の予想は奇しくも当たっているようだった。
先生の教室へ入るときの音、クラスメイトが先生に飛ばす野次、机に突っ伏す俊の姿、テストの内容。
全てにおいて裕也は見覚えがあった。
二回目の休み明けテストには身は入らず、ずっと扉夢について考えていた。
今現在分かっていることをテストの問題用紙の裏に頬杖をつきながら書き出していく。
『扉夢は二部屋目があった
ハマツキ アヤの存在
白い何か(天使様?)がいた→それに俺は殺された(?)
死んだ瞬間今日に戻った←?』
……我ながら”?”が多いな。確かに体験したはずのことなのだが、いささか非現実的すぎて書き出していくと馬鹿らしくなってくる。
ふとまだ書いていないことを思い出した。
『死ぬのはつらい』
当然のことであり誰しもが思うことであるが、図らずとも実際に体験してしまった裕也の脳内には表しきれない死への恐怖が人一倍くっきりと深く刻まれていた。
考えれば考えるほど分からないことが浮き彫りになってくる一種の絶望と、精神的な疲れからテスト中ということも忘れて、裕也は大きく「はぁぁぁ……。」と声を伴うため息をついた。
瞬間、隣の席の男子が吹いた。どうやら面白いことがあって笑っているようだが何かあったのか。カンニングを疑われぬように目だけできょろきょろしていると、テスト監督としてクラス内を巡回していた先生がこちらに向かってきた。
そして裕也の席の前で立ち止まった。隣の男子は未だ笑いを堪えているようだ。
「加藤くん……。たとえ問題が難しかったからといってこんな静かな中そんなに大きなため息つくことないんじゃない?」
と先生は笑い交じりに小さな声で裕也にそう言った。
あぁ……なるほど隣の笑いはそういうことか……。
「あぁはい……すみません。」
「もう……。落書きまでして……。 え。」
先生は裕也のメモをみて驚愕の声を漏らした。裕也は怒られることを直感した。
「ああぁすみません今すぐ真面目にやりますから―」
「加藤くん。」
裕也の声を遮るように先生は言う。
「あっはいなんでしょう。」
「テスト終わったら話があるわ。」
裕也はその言葉を聞いて血の気が引いた。
今まで無難に過ごしてきたため無縁だったもの、これが噂に聞く”生徒指導室呼び出し”なのか……。隣からは堪えきれない笑いが聞こえてくる。テスト中の落書きはそこまでの重罪であったか、気を付けなければ。
などと考えていると先生が顔を近づけ、更に小さい声で確かにこう言った。
「扉夢のこと、教えてあげるわ。」
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