蝉時雨

@amanatsu

第1話

私は死んだ。


「もうちょっと早く来ればよかったねー。」吉野山の桜を見下ろしながら、私は彼(レン)に言った。4月末、山桜とはいえ満開の時期は過ぎてしまっていた。こんなに散っていても、花見に来た人の多いこと多いこと。急な坂道を登るアリのような行列の中の2匹が私たちだ。上千本への途中、神社があった。厳かにそびえ立つ鳥居は、私を拒否したいように思えた。

「山降りる途中で桜アイス食べようよ。」

「桜のお菓子はあんま食った覚えないなー。一口もらおっかな。」

「桜味ってほんとに美味しいんだよー?絶対レンも気にいると思う!」

なんて話ながら、売店見つけて購入。山登ってヘトヘトのおかげで絶品アイス。レンは一口ならず半分くらい食べた。じゃあ1人1つ買ったら良かったんじゃない?って思ったのは内緒。これでもってお花見終了。と思ったとき目の前が真っ暗になった。これが悪夢の始まりだった。

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