第25話 バンコクキッド達の途中経過

 雨季が過ぎれば、タイに観光のベストシーズンがやってくる。

その頃の話に移る前に、先ずは同期メンバーの近況報告をしておこう。


 トムさんは無事にモザイク処理の会社へ転職が叶った。だが、契約とは話の違う夜勤シフトがメインになったとかで、顔を合わせる機会は滅多にない。

たまにくるラインでは「MP嬢の恋人ができた」と浮かれているが、どう考えても素直に祝福できる関係ではなさそうだ。

※MP(マッサージパーラー)=日本のソープランドによく似たシステムの性風俗店


 ミヤコさんはムエタイギャンブルにうつつを抜かす彼に給料のほとんどを使い込まれているという。彼女の昼休みを狙って、会社のエントランスに金をに現れるバイタクジャケットの男が同僚に何度も目撃されている。

近頃はアパートの家賃すら滞納する始末のようで、こうなれば同棲生活の解消は間近であろう。また、このおばさんは仕事の要領が悪く欠勤も多いので、今年いっぱいで解雇されるともっぱらの噂だ。


 さて、次は心配なマツジュンだが、相変わらず乱れた生活が続いているのは彼女の顔色をみれば一目瞭然だった。

実家が金持ちで本人もキャバ嬢時代に築いた貯金があるためか、なかなか男と縁が切れずにいるようだ。

俺は、ゴーゴーボーイに全財産を貢いだ日本人女が、身体を売ってまで金を作ったという悲惨な話を知っている。マツジュンがそこまで堕ちていかないことを祈るばかりだ。


 最後は俺のヒロイン、アヤカさんだ。彼女はヨガにエステにと自分磨きに余念がない。休日が重なれば、プチデートに誘ったり、朝まで一緒に酒を飲んだりと"友達以上恋人未満"のつきあいだ。


二人の行く末については、今後ゆっくりと時間を掛けて語らせてもらおう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る