第7話 失うものは何もない
バンコクでは会社近くのアパートを借りる予定だが、良い物件が見つかるまでの間はホテル暮らしをする必要があった。しかし、なにぶん思いつきでタイに来たため資金面の準備は乏しく、おのずと節約プランでのスタートを強いられた。よって、なるべく出費を抑えようと選んだのが「怪しい者たちが集う宿」だったのである。
ちなみにこの宿は、シングルで1泊300バーツと激安にも関わらず、しっかりとお湯シャワーが完備されている。工事がいい加減な東南アジアでは水回りは最重要のチェックポイントだ。ロケーションもバンコク中心部からは外れるものの、近くのスーパーのフードコートを利用すれば、1食40バーツほどで空腹が満たせる。
このように、宿の長期滞在者たちから情報を集め、ざっくりと今後の生活費について見積もりを立ててみると、初任給が入るまで持ちこたえれば何とかなる計算だ。
地元のネットカフェでコールセンターの求人を見かけた日から、ここにたどり着くまでに要した期間は、わずか4週間。
俺の人生は予想もしなかっ方向に転がり始めた。
小学生の頃がピークだったなどという無様なストーリーのままでは死んでも死にきれない。
あと一歩だけ前に進もう。失うものは何もない。
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