【その2ーーー母】
あの日、もう冷たくなった娘の身体に相見えた時。
私は慟哭した。
愛しきわが子の骸にすら触れられぬ運命を恨み。
届かないところへ飛んで行ってしまった娘の御霊。
なぜ、救ってやる事が出来なかったと、悔恨に震えた。
なぜ、語り合えなかったのかと、涙に暮れた。
娘の同級生たちは悲しみに泣くフリはするけれど、
踵を返した瞬間の、あのスッキリとした笑顔を垣間みてしまった。
楽しそうに歌うように彼女たちは笑い合っていた。
娘はもう、あの空間には戻る事が出来ない。
なぜ、娘の命を奪ったの?
これほどまでに悲嘆にくれる家族がいる事を、あなたは知っているのか?
でも、私のその声は、彼女たちには届かない。
もう、娘にも届かない。
私が痛みを感じれば感じるほど、彼女たちは喜ぶから。
娘は自由になったのだと、せめて、感じる事が出来るように。
あなたを、もう一度、抱きしめたかった。
鎖 和紀河 @akikawashinobu
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