第335話・冥頑不霊とのこと


 戦闘が終わると隆起していた氷の柱や穴ぼこなどはもともとからなかったかのように、氷の池は更地へと元に戻っていく。


「あ、あのさ……、アスィミ――」


 そんな中、フリソスは妹――アスィミの方へと歩み寄る。


「ログイン――してたんだね」


「う、うん」


 二人のやり取りがぎこちないのは本当に会話をすることも久しぶりなのだろう。


「ところでさぁ、二人が喧嘩したそもそもの理由ってなんなのよ?」


 オレがそうたずねると、アスィミは姉の方を一瞥するや、


「実は私の宿題――というかノートを間違ってフリソスが持っていっていて、その宿題を勝手にやっちゃってるのに気付かないで提出しちゃったから私が先生に怒られたんですよ」


 喧嘩の理由を話してくれたのだが、オレは思わず首をかしげてしまった。


「いや、それなら普通気付かない? だいたいノートの表紙に名前書くだろうし」


「それで自分のだって判別すればまだいいんですよ。先生もさすがに気付くと思うんですけど私たちって名前が一文字しか違わないから、物によっては私も自分のだって勘違いしてカバンに直しちゃってそのまま提出してしまう時があって」


 アスィミが苦笑を浮かべる。言うに結構頻繁に間違えているってことか。


「あっと……つまり喧嘩の理由がお互いのノートが入れ替わっていて、それに気付かないで宿題の提出した結果――先生に怒られたからってことか?」


 オレは頭を抱え二人を見渡す。


「喧嘩なんてもんは他人から聞けば大抵はしょうもないもんよ」


 ナツカの言う通り、オレからしたらしょうもない話だ。


「アタシいったよね? 金のマーカーでラインを入れてるのがフリソスの勉強ノートで、私のは銀のラインを入れてるって」


「あの時は急いでたし、ノートを片付けていなかったアスィミが悪いんじゃない?」


 そんな中、また口論を始めようとする二人を眇めながら、


「そういえばふたりとも教室が違ってたんだっけ?」


 アスィミから聞いたがそもそも見た目は――おそらく風月(セイフウとメイゲツ)と一緒で、はたから見れば間違えるくらい似ているのだろう。

 教室が違うのだから、本来は間違えるってことはないだろうけど。


「シャミセンさんが思っている以上に、一卵性双生児って教室が違っても間違えられることなんてしょっちゅうですよ。だから見た目を変えたりするんですけどね」


 オレの考えていることを察したのか、フリソスが苦言を呈する。


「それで間違えられてたら本末転倒なのでは?」


「まぁそもそもの話自分のものをちゃんと管理できてなかったってのが……」


 ナツカは言葉を止め、視線をオレの方――というよりは、そのうしろへと向けた。

 オレも流れるように、そちらへと視線を向ける。


「コレはコレはずいぶん珍しい」


 そこには着物を羽織った白髪の淑女が立っており、両脇に背丈七尺(二一〇センチ)はあるだろう青肌をした大柄な丈夫と、白虎の毛皮をそのままマントにして羽織った小柄な少女がいた。


「クビコさん? それにディンキーさんにハザンさんも」


 フリソスがおどろいた表情で彼らを見渡す。「知り合い?」


「私達が所属しているeスポーツのメンバーです」


 オレの問いにアスィミが応じる。


「はじめまして、あなたがシャミセンさんね」


 ふっと笑みを浮かべ、着物を着た女性――おそらく彼女が例のクビコという女性なのだろう。

 彼女はオレに近づくや握手を求める。


「あ、こちらこそ」


 握手を返そうとしたが、『――君主ジュンチュ

 ワンシアの声が聞こえ、オレは咄嗟に差し出した手をうしろへと引っ込めた。


「あら、握手を求められたら返すのが礼儀では?」


 心外だと言わんばかりにクビコは困窮とした表情で首を傾げる。


「えっとクビコさん――だっけ? あんた今なにをしようとした?」


「フリソス、アスィミ、彼はなにを言っているのかしら?」


 クビコは視線を二人に向ける。


「えっと、普通に握手を求めただけですよね?」


 アスィミはオレを見るが、


「クビコさん、生憎あいにくとそこの愚僧を見誤らないほうがいいですよ」


 ナツカがオレを眇めるようにしてクビコに忠告する。


「見縊ってはいませんよ。なにことも油断してはいけませんから」


「油断……ね、ならなんでアスィミを見失ってんだ?」


「それに関してはこちらの落ち度ですから」


 スッと頭を下げるクビコだったが、


「アスィミ――たしかここに来たのはオレが持っている絹糸が目的だったんだよな?」


「えっ? そうですけど……」


 オレはクビコを無視してアスィミに話をふった。


「君と一緒に居たっていうメンバーは?」


 アスィミはハッとした表情でクビコを見る。


「ご心配なく、彼らは私がアスィミを探すということでログインしてもらいました。リアルを犠牲にしてはいけない。私たちはあくまでメインは別のゲームですから」


「ならいいんですけど」


 納得しているのか、そうでもないのか、アスィミは怪訝そうにオレを見た。


「それで――シャミセンはなにを警戒してるのかしら?」


「警戒はするだろ。さっきからうちの飼い犬が警戒心を解かないんだから」


 クビコと握手を交わそうとした時、ワンシアが「油断しないでください」と忠告をしなかったら多分なにかされていた。


「噂通り――ただの運がいいだけではないみたいですね」


 クビコが不敵な笑みを浮かべる。「そいつはどうも」


 もうそう言われるの慣れました。たださすがに長くやってきたせいもあるか噂も七十五日とはいかず、


「運だけでツワモノと渡り合ってきたというのもあながち嘘ではない――か」


 クビコは――ふぅ……と嘆息をついた。


「レベルが低いわけではなさそうだが、しかしながら彼がさほど強いとは思いませんがね」


 クビコの横を陣取る青肌の男が怪訝そうにオレを見る。


「見た目で判断しない。フレンド以外には名前を見ることができないシステムだから油断するのは仕方ないけど、彼からは見た目より強い感じがする」


 その隣、白虎の毛皮を羽織った少女が注意をうながしてみせる。


「そんなに強くはないんだけどなぁ」


 青肌の男――が、小馬鹿にしたような口調で言う。

 実際周りが強いだけで自分もって気がしていない――が、


「あなたもそうだけど、クビコを注意するようにうながしたのは、本能ではなく注意だった?」


 白虎の毛皮の少女の、的を得たような言葉にオレは思わず絶句した。

 おそらくだが、ワンシアのことに気付いたか――。


「とりあえず、今日は目的のものを得られなかった――クエストは別に受注ではないからペナルティがないから良いけど、今度はそうは言えないわよふたりとも」


 睨むようにアスィミとフリソスを見るクビコに、二人は思わず背筋を伸ばして、


「「はいっ!」」


 とうわずった声を上げた。


「そ、それじゃぁナツカさん、シャミセンさん今日はありがとうございました」


 頭を下げ、フリソスとアスィミはクビコたちとともにその場を去る。

 そんな中、オレの方へとやってくる白虎の毛皮の少女――名前を見ると匿名にしているのか調べることができなかった。


「今日は予定があるからこのまま帰るけど、今度会った時は決闘していい? あなたもだけどそのテイムモンスター・・・・・・・・・・とも勝負してみたい」


 と言うや、踵を返すようにしてクビコたちと合流した。



 彼女たちが五里雪中の中に消えていったことを確認すると、


「ふへぇ~~~~~~ッ」


 オレは脱力したかのように身体を大の字にして倒れた。


「それでさっきの行動だけど――ワンシアがなにか忠告でもしたのかしら?」


「油断しないようにって」


 言い返され、ナツカは得心とくしんしたように、


「まぁワンシアの判断は正しいわね。少なくとも警戒していた私が彼女たちの接近に気付かなかったんだし」


「戦闘中だったんだから仕方ないんじゃ?」


「それならそれで納得はできるけど、彼女たちが現れたのは戦闘が終わった直後よ。いくらなんでもタイミングが良すぎる」


 たしかに言われてみればそうかもしれない。


「つまり高みの見物ってわけか」


「もっと悪くいえば物見遊山ものみゆさんってところでしょうね」


 オレはすこしばかり首を傾げたが、ナツカの言葉に納得する。


「やり方がなんともいけ好かんな」


 物見遊山――意味は『気晴らしにいろいろなものを見物しながら遊びに出かけることのたとえ』だ。

 つまりアスィミがはぐれたことも彼女たちからしてみれば重要視していない。

 むしろフリソスと喧嘩していたことを加えて、オレと遭遇するように仕向けていた。


「オレたちというよりはオレに接近したのも?」


「興味本位からでしょうね」


 ならワンシアの忠告はオレにとっては渡りに船だったというわけか。


「で、これからどうする? 私はあんたの用事も済んだし、久しぶりの休みで買い物とかしたいのよ」


「あっとスマンね、ビコウが迷惑かけたみたいで」


「それに関しては別に気にしてないわよ。そもそも[シャミセンさんと久しぶりにパーティーが組めるけど、MOBのデバックが終わってなくて、居酒屋のバイトまで他のことできないから代わりに手伝ってあげて]ってビコウからメッセージを貰ったらね」


 そういえば魔宮庵の部屋から出ようとした時に本当に残念そうな顔してたな。


「まぁしかたないんじゃないか? あいつは――」


「しかたないですめばいいけど、あの子は自分の立場を弁えないといけないのよ」


 ナツカがオレを睨むような目で言う。「どういうこと?」


「それに気付かないようじゃ、あんたに好意を寄せてる人は苦労するなって思っただけ」


 言うや、オレになにかを投げ渡す。


「どうせあんたのことだから脱出用のアイテムもなにも持ってないんでしょ? 準備くらいはしっかりしないといつか積むわよ」


 オレに渡したのは[空蝉の糸]というダンジョンの入り口に戻れる転移アイテムだった。


「それじゃぁ、私も失礼するわね」


 言うやナツカはスッとその場から消えていった。


「パーティーが解除されたか」


 仲間が一定距離を離れるとパーティーが解除される仕組みになっている。たしか設定にもよりけりだけど最低で半径3里(1.5キロ=1里500メートル)だったはず。

 その範囲から外れるとパーティーが離れたということで解除される。


「ここにいてもあれだし、さっさとシュエットさんのところに行ってクエストを終わらせよう」


 依頼主のところに行くまでがクエストってね。

 オレは[空蝉の糸]を掲げ、ダンジョンを脱した。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 [韻経山いんきょうざん]の入り口から、さいしょの町――[イースゴッドの街]へと舞い戻る。

 町につくと、足早に(破損した右腕はマントの中に隠しておく)シュエットさんのいる『玉女穿梭ぎょくじょせんさ』へと向かった。


「失礼します。シュエットさんいますか?」


 店のドアを開けて、中の様子を窺い見る。店の中はプレイヤーで賑わっており、各々シュエットさんが降ろした防具の品評をしているようだ。普通の装備品では得られない鍛冶職人じゃないとつかない付加もあるからか、ある程度稼いでいるプレイヤーはここに集まることがある。


「あれ? シャミセンさん」


 声が聞こえそちらを一瞥すると、テンポウが試着室の前に立っており、オレを見ていた。


「中に誰かいるの?」


「あぁハウルが一緒なんですよ。シュエットさんにお願いしていたマントと服ができたんでその試着に――」


「テンポウ、ちょっとお腹周りが……」


 にゅっと試着室のカーテンから顔をのぞかせるハウルがオレを見るや、


「あぁシャミセンさん来てたんだ」


 普段どおりの声で返した。


「あのさぁハウル、今自分の格好わかってる?」


 テンポウに注意されるが、ハウルははてと首をかしげる。


「ブラ見えてるから」


 テンポウの言う通り、ハウルはトップスを脱いでいてちらりと白い柔肌が見えている。

 まぁ試着室にいたわけだし、服は脱がないと着れないしね。


「あぁ大丈夫。おじいちゃんの道場で組手をするときとか普通に見られてたから」


 柔道の組手をする場合、相手の襟を掴まないと投げ技とかが出せないから、自然と胸元がはだけてしまう。

 その時は見られてもいいように黒のスポブラとかしてるから、あんまり羞恥は意識してないって言うし。


「それはまぁたしかにそうかもしれないけど、いちおう女子高生なんだけどなぁ。少しは恥じらいってものを持ったほうがいいよ? いくら親戚の従兄妹どうしでもさ」


「わかってる」


「で、シャミセンさんはどうしてここに?」


 ハウルは試着室に引っ込み、テンポウがここに来た理由をたずねる。


「まぁシュエットさんからのクエストをクリアできたんで――」


 オレがそう言うや、テンポウが目を点にした。んっ? なにかまずいことでも言った?


「えっ? もしかして冰天虫倒せたんですか?」


「とどめを刺したのはナツカだけど?」


 オレはそれがどうしたのかと言わんばかりに首を傾げてみせる。


「あ、まぁナツカさんが一緒なら倒せなくはないけど、アイテムはゲットできなかったんですよね?」


「いや、[盗む]で手に入れられたけど」


 たしかに倒してからアイテムを手に入れたというポップはしなかったな。

 疲れていたから周りは探していないけど。

 レベルは先に上がっていたから、冰羆と虫の時はレベルアップしていない。

 などと別の事を考えていると、テンポウと――、試着室のカーテンから、上半身を覗かせているハウルが驚嘆したように、


「「その手があったぁあああああっ!」」


 愕然として崩れ落ちた。

 そもそもハウルはいい加減服を着たらどうなんだろうか。

 さっきは顔とすこししか見えなかったけどその状態だと完全に下着が見えてるぞ。


「あぁ、でも[盗む]なんてユニークスキル持ってるの盗賊とかそういうジョブになっている人くらいだしなぁ」


「こっちはそういうスキル持ってないから倒さないといけないし、アイテムなんて基本ランダムだからなにが手に入るかなんて倒すまでわからないしねぇ」


「ってことは、ふたりともシュエットさんのクエストやってたの?」


 そうたずねると、テンポウは眇めるようにして、


「モンスターを倒したまではいけたんですよ。私とハウルと綾姫ちゃんで挑戦したんですけどアイテムがゲットできないし、レベルも高いし定鳳丹の効能も通常のやつでしたからギリギリ一匹探索できたのが関の山でした」


「あれ? 綾姫ってもう30までいってたの?」


 たしか山に入るにはレベル30じゃないと通れなかったはず。


「シャミセンさんがNODをプレイしているあいだに結構レベル上がってたよ」


 ハウルはスッと試着室の中へと戻り、「うし、こんなもんかな」


 そう言って試着室のカーテンを開いて出てきた。


「テンポウ、こんな感じかな?」


 出てきたハウルは膝小僧が見える程度のスカートが上着と一体になっているのかトップスとの繋ぎ目がなく、その上をケーブで羽織っていると言った感じ。


「うん似合ってる」


 テンポウは褒めるようにしてサムズアップ。


「なんかあれだな。スウェーデンの民族衣装っぽい?」


 もしくは中学の制服みたいに吊りスカート。

 まぁあれはロングスカートだから違うといえば違うのだけど。


「あぁそれは間違ってないかもしれませんね。この装備品トップスとパンツが一体型になっていて――」


「あっとごめん、そこはパンツじゃなくてスカートじゃないの?」


 男のオレからするとパンツってズボンって意味じゃなくて下着の方を連想するんだけど。

 あとどっちかといえばボトムスじゃない?


「まぁ男性は混乱しますね。衣類の知識がないとまず違いがわかりませんし」


 しぶかれた声が聞こえ、そちらを一瞥する。


「あぁ、シュエットさん」


「それでシャミセンさんはどうしてうちに?」


 聞くのは野暮だろ。オレがここに来た理由なんてわかっているはずだ。

 なにせここに来る途中、アイテムを手に入れたから店で待っていてくれと念を推していたからだ。


「それじゃぁ、今回のアイテムです」


 オレは[氷蚕ひょうちゅう絹糸きぬいと]をアイテムストレージから取り出し、シュエットさんに渡す。


「うむ、以前手に入れた蜘蛛の糸もまだ使用回数が残ってましたな。そいつを合成してより強い糸にすることも可能ですが」


「それってアイテムが消えるなんてことは?」


「使用回数が減るだけでアイテム自体は0にならない限り使えますよ」


 オレは蜘蛛の糸もストレージから取り出し、そちらもシュエットさんに手渡す。


「それじゃぁその流れで。それでどれくらいかかります?」


「そうですね、こちらの都合もありますが遅くても一週間以内には。遅れる時は連絡をします」


「気長に待ってますから大丈夫ですよ」


 ゲームよりリアルを優先しないといけないしな。

 シュエットさんはおれから受け取ったアイテムをストレージに治すと、客の対応をしにカウンターへと戻っていった。



「あ、そうだシャミセンさんに聞こうと思ったんだけど、シャミセンさんってギルドとか作らないの?」


 ハウルにそう聞かれ、「別に必要ないだろ?」と言い返す。


「あぁでも作って損はないですけど特もあんまりないですしね。そこはシャミセンさんの自由だから」


 テンポウもちらりとオレを見る。なにか言いたいのか?


「小規模なのもいれば大人数のところもあるから良し悪しってのが」


「なに? なにか言いたいことがあるなら言いなさいな」


「いやそうじゃなくて、シャミセンさんがギルマスになってくれればその恩恵でアイテムの探索クエストが楽になるなって――この前から綾姫と一緒に考えてたんだけど」


 どういうこと? とオレはテンポウを見据える。


「ギルマスになるとそのプレイヤーのステータスの何割かをパーティーメンバーに付加することができるんですよ。例えばシャミセンさんの場合は幸運値LUKがカンストしているから最低でも25ポイントがギルドメンバーで構成したパーティーのステータスに付加するんですね」


 なるほど、たしかに運が良くなればアイテムも手に入りやすいやね。


「でもなぁオレがギルドを作るとして、誰か入りたいやつなんている?」


 オレが怪訝そうに言うと、


「むしろナツカさんたち以外でシャミセンさんとフレンド登録している人はほとんどギルドに入ってませんけど」


 言い返され、オレは思わず「お、おう」とたじろいた。


「でも色々と面倒だろ? ギルドの作り方なんてなかったし」


「ないというよりは必要としていないってのが正しいですね。ほら実際の会社を立ち上げるのだって誰かが立ち上げない以上会社は作れないじゃないですか。そこに自分も他人も関係ないんですよ」


 つまり誰かがそれを作って募集しないと集まらないし、募集がないと集まることもないってことか。


「あぁでもシャミセンさんが一緒なら面倒なはちみつを手に入れるのも楽になるしね」


「そうそう。ついでにギルドでしか参加できないクエストもあるし、そっちの報酬も美味しいしね」


 二人が青写真を描くようなことを言っているが、


「それって人数制限とかってあるの? 何人までなら入れるとか」


「まぁ人数制限はたしかギルドのランクにもよりますね。ひくいところは二十人までだけど、ナツカさんのところは五百人プレイヤーが入れますけど、百人は在籍していたはずですし」


「そんなにいたの?」


 とおどろいたが、基本的にみんな出張らっているんだとか。


「でも登録には最低でもプレイヤーが十人必要で、しかも全員ギルドに所属していないってのが条件なんです」


 なるほどねぇ。そう考えながらふと今日のことを思い返す。

 アスィミがメンバーと逸れたことはクビコの意図的なものだとしても、やったことはどうも納得がいかないし、ワンシアが止めてくれなかったらオレはなにをされていたのかわからない。


「二人に聞きたいんだけど――」


 オレは肩の力を落とし、心を落ち着かせた。「ギルドってどうやって作るの?」

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