第108話・豁然とのこと


「あ、そうだ。シャミセン、今度の土曜日ってなにか用事とかある?」


 ランバオシ・ラビットを倒し、しばらく経って全員のHPが十分に回復したことを確認してから、次のモンスターを倒しに行くかと近くの切り株に腰を下ろしたオレを見ながら、セイエイがそう聞いてきた。


「今度の土曜日かぁ……夕方からバイトが入ってるけど大学に行く予定もないし、暇といえば暇だけど」


 そう応えるや、こころなしかセイエイの表情が朗らかになった。


「だったらわたしの誕生日がその日だから食事会するってムチンが言ってた。シャミセンと綾姫も来て」


 オレは綾姫を一瞥する。


「今部活もテストで休みだし、土曜日は友達と用事があるってわけじゃないから大丈夫だよ」


「前と同じようにサクラさんが東京駅に迎えに来るんかね?」


 視線をサクラさんに向けてたずねてみる。


「そういうことになりますね。ただあいにくと私はオフで綾姫さんを見たことがないので」


 サクラさんが綾姫を一瞥する。


「それだったらわかりやすいのがいいですね。なんかわかりやすい服ってあったかなぁ」


「あれだったらいいんじゃないか? 『mareマレ』って胸に刺繍されてる」


「それはヤダッ!」


 全力で拒否された。わかりやすいと思ったんだけどなぁ。


「というか煌兄ちゃん、その服結構前の、アタシが四年生の時、おばあちゃんが誕生日プレゼントにって買ってくれたやつだよ? さすがにもう入らないって」


「あぁお腹が……」


 言いかけた瞬間、綾姫がずかずかとオレのところに近付くや、


「延髄斬り」


 と上段回し蹴りをオレの顔目掛けて繰り出した。


「おっと……」


 オレは余裕綽々といった表情で、綾姫の回し蹴りを受け身で防御した。

 いくら空手有段者でも、ゲームの中ではオレの半分にも満たないステータスだ。動きが遅かったし、避けることもできたが、受け身のほうがいい。


「むぅ~、そこは普通に身体が大きくなったとか言わないかな?」


 オレに防御されることを予想していたようだけど、それでも受け止められたことに不服な表情で綾姫は口を窄めた。


「いやだからお腹……まぁいいや」


「言いかけたよね? いま完全に太ったって言いかけたよね? これでもいちおうクラスの中ではスタイルいいほうだよ」


 怒っているところ悪いけど、多分キミの近くにいる同級生と比べるのは酷ってものですかね。


「……? どうかした、シャミセン」


 セイエイがキョトンと首をかしげる。


「いやなんでもない。さてどこに行きましょうかね」


 正直に言うとレベル制限がされていない今いるフィールドだとあんまり成長にはよろしくないし、はじまりの町の裏山の奥にあるレベル10から入れるところだったら綾姫でも入れるだろう。



「あぁっと、ちょっといいかな?」


 綾姫がくやしそうな表情でオレたちに声をかけた。


「お母さんが部屋に入ってきて、『お風呂に入れ』って声かけてきた」


 気付いたらもう午後八時半になろうとしている。


「ここからだとはじまりの町は遠いし、かと言って魔宮庵に行こうにもだいぶ離れた場所になってるし」


「それでしたら睡蓮の洞窟に行けばいいんじゃないでしょうか」


 サクラさんがそう提案する。


「まぁここからだったら一番近いけど、ナツカの許可がないとギルドハウスに入れないぞ」


「ギルドハウスって、ギルドに入らないとダメってこと?」


「いや、ギルマスが中に入るのを許可すれば、メンバーじゃなくても入れるようになるんだ。オレとセイエイ、サクラさんはどこにも所属してないんだよ」


 そう説明すると、「へぇ~」と綾姫は関心した顔を浮かべた。


「とは言ってもフレンドリスト確認したらナツカがログインしてないんだよなぁ」


 その言葉どおり、フレンドリストにあるナツカの項目がグレーになっている。

 メンバーの白水さんと双子、アレクサンドラさんはログインしているみたいだけど、やっぱりギルマスじゃないと許可証とか出せそうにないだろうな。


「綾姫、ちょっとこっちに来て」


「んっ、なに?」


 セイエイがちょいちょいと手招きをするように綾姫を自分のところへと呼び寄せる。


「さっき白水に説明したらギルドハウスに入れる許可証出してくれた」


「うそっ?」


 綾姫がおどろいた表情でセイエイを見据えた。


「あっと、どういうことだ? ギルドハウスの入出許可証ってギルマスじゃないと発行できないんじゃ?」


「入出許可証の作製はギルマスと副リーダーの特権だって聞いたことがある」


 いつもどおり、淡々と説明するセイエイ。

 ほんとたまに意表を突くことするよね。



「ここからだったらそんなに離れた場所じゃないし、急げば五分くらいで着く」


「よぉし、ちょっと急ごう。お母さん時間に厳しい人だから」


 綾姫がそう言った時だった。


「それでしたら転移魔法ですぐに行けますよ」


 サクラさんが魔法の詠唱を始めた。


「ところでセイエイ、白水さんにどんなメッセージ送ったんだ?」


「一緒にパーティーを組んでる友達がお風呂にはいらないといけないけど、今蛇腹嶺にいて落ちたら襲われるし、町まで離れてるから、ハウスの中に入れさせてあげて」


 なんともまぁ単刀直入なメッセージ内容だった。

 ただそれだけで許可を出す白水さんもすごいな。



「……で、到着っと」


 サクラさんの転移魔法テレポートで睡蓮の洞窟の前までやってきた。


「すごい、これが転移魔法なんだ」


「前から思ってたけど、これって成長で覚えるんだっけ?」


「そうなの? それじゃぁどこで手に入れられるか教えてくれません?」


 綾姫が目を爛々とサクラさんに憧れの眼差しを向ける。


「いや、初期の[アポート]をまず覚えないといけませんし、そもそもその[アポート]を覚えようにもINTが100以上じゃないといけませんし、ほかにもDEXが50以上じゃないとムリなんです」


 サクラさんは苦笑を見せながらそう説明する。


「あぁっと……」


 綾姫は自分のステータスを虚空に表示させる。


「いったいいつになったら覚えるんだろうか」


 と落胆した表情で肩を落とした。


「シャミセンだったら覚えられるんじゃない?」


 セイエイがそう声をかける。たしかにオレのステータスだったら難しくはないだろうけど、


「[アポート]ってスキルの書からだよな? 町のスキル屋にそんなのなかったぞ?」


 と首をひねった。


「えっと、あのまったくもって申し上げにくいことなのですが、[アポート]のスキルの書は課金専門のアイテムなんですよ」


 とサクラさんが苦言を呈した。


「あくまでオレは無課金プレイを貫くけど、いちおう参考までにいくらするの?」


「五千CN」


 サクラさんはぼそぼそと呟きながらうつむいた。


たけぇっ?」


 それって普通の課金十連ガチャ一回分より高くない?


「あ、でもこれにはちゃんと理由がありまして、アポートを成長させれば最終的にはプレイヤーやパーティーを自由に移動可能にできるテレポートを覚えますので、それだと転移アイテムを使わなくなりますから」


 それを踏まえて、課金専用であり高額にもなったってことか。



「っ? でもそれだけ高いアイテムをなんでサクラさんは覚えてるんですか? やっぱりお金を払って購入したからですかね?」


 ふとそう思ったのか、綾姫がそう本人にたずねた。


「えっ……と――ですね」


 あ、視線逸らした。


「サクラ、星天遊戯を始めた時、あまりVRMMORPGやったことないから、スキルの書を買う時に通常と課金を間違って購入した」


「あれ? でもそれって普通なら課金時のアナウンスが出るはずだけど」


 無課金だからスルーしてたけど、大体のMMOゲームは購入に関してのアナウンスが表示されるはずなんだけど。


「えっとですね、私はMMORPGをあまりしないんですけど、ネットショッピングは良くするんですよ。その支払いに使うクレジットカードのデータが、そのままVRギアの課金システムにも連動されていたようで」


「えっと、アタシはもともとVRゲームがやりたかったからVRギアを買ってもらったけど、たしかVRギアのブラウザソフトでネットショッピングできるってお姉ちゃんが言ってましたね」


 綾姫の言葉に、オレは怪訝な表情を見せた。



「はて? お姉ちゃんがって……誰か持ってたの?」


 てっきり綾姫がばあちゃんから入学祝いに買ってもらったとしか思わなかったから、姉妹の誰かが持っているとまでは思っていなかった。

 そもそもセイエイと同じ、都内の有名な私立わたくしりつらしいから、授業料だけでもバカにならんだろうし。


「うん、花愛お姉ちゃんが……って、たしかこのゲームやってたと思う」


「マジですか? っていうか名前わかる?」


 オレが綾姫にそう聞くや、バツの悪い表情で、


「ごめん、お姉ちゃんのアバターとはフレンド登録してないし、ゲームの中の名前教えてくれなかったんだよね。本人に聞いてみたけど自分で探せって言われた」


 と頭を抱えた。



「あれ? シャミセンさん、こんなところでなにをされているんですか?」


 声が聞こえ、うしろを振り向くとハウルの姿があり、その横にはチルルがいた。


「ちょっと蛇腹嶺で討伐やっていてね」


「へぇ……、それにしても――」


 ハウルはジロジロと人を鑑定するような目で綾姫を凝視する。


「えっと? なんですか?」


 あたふたと慌てた表情で綾姫はハウルにそうたずねた。


「うーん、初めてそんなに経ってないし、プレイする時間もないみたいだからあんまり強くはなっていないかなぁ……それはいいけど早くログアウトしてお風呂に入らないとお母さん怒ってたわよ」


 ハウルは、たとえるなら言うことを聞かない子供を見るような、でも怒るのもどうかといった苦笑にもにている表情で、綾姫に言い放った。



「「……は?」」


 オレと綾姫の声が重なり、さらには二人して唖然としていた。


「っていうかハウル? おまえなんで――綾姫が義伯母おばさんからお風呂に入れって言われてるの知ってるんだ?」


 オレがそうたずねるや、


「知ってるよ。人がテスト勉強してるのに、お母さんが部屋の中に入ってきて『香憐に好い加減ゲームやめてお風呂に入れって呼んで来い』って言われたんだから……ねぇ、シャミセンさん……ううん、煌兄ちゃん」


 とハウルは不敵な笑みを浮かべた。


「あ、あらららら?」


 オレの頭はハウルの言葉に対する理解を放棄しようとしていた。



「えっと? もしかして花愛お姉ちゃん?」


 綾姫がそうたずねると、ハウルはちいさく笑みを浮かべ、


「えぇそうよ。まぁ町の中だったら襲われる心配もないし、さっさとログアウトしてお風呂入ってきなさい。それから宿題もしたの?」


 と反問した。


「宿題はしたよ……って、あれ? さっき煌兄ちゃん知り合いみたいな感じだったけど、もう会ってたの?」


 綾姫はオレを見てたずねる。

 ごめん、なにがなんだかさっぱりなんだけど?


「いや、あの……それよりハウル……いや花愛っ! おまえなんでVRギア持ってるんだ? まさか香憐と同じで入学祝いにばあちゃんから買ってもらったとかじゃないよな?」


 さすがに孫二人が同時に高いおねだりして聞いてやるほどばあちゃんも甘くないはずだぞ?


「さすがにそれはないって、香憐のほうは中学受験を頑張ったからおばあちゃんがご褒美にって買ってもらったの。私はそれよりも前からVRギア持ってるって言わなかった?」


 カラカラとハウルは笑う。


「そういえばハウル、高校の受験でゲームやってなかったって言ってた」


 セイエイが、ハウルとはじめて会った時のことを思い出し、そうオレに言った。


「あぁそんなこと言ってたなぁ、ってことは……あぁそういうことか」


 オレは色々と思い出し、頭を抱えた。


「あのシスコンが買ってやったってことかよ?」


 綾姫とハウル……いや、香憐と花愛の姉である真鈴は、高校を卒業すると大学には進学せず、有名な一流企業に就職したと聞いていたから、その給料で買ってやったといったところだろう。

 当の本人は実家暮らしだから、自分の携帯と食事代くらいは出していても、家賃や光熱費は出してないと思う。

 高校の時からバイトの給料を自分のことよりは妹二人のために使っていたようなものだったしなぁ。


「あ、それはちょっと誤解かな。もともとは自分がするためにVRギアを買ったらしいけど、仕事が忙しくなってきたから、それを初期化して私にくれたんだよ。もちろんお姉ちゃんはお姉ちゃんで新しく買ってるけど」


「なんともはや、シャミセンさんの従姉妹しまい全員がVRギア所有者だったとは」


 唖然としていたのはなにもオレと綾姫だけじゃなく、サクラさんもなんと言っていのかと呆然としていた。



「でもハウル、だったらなんでシャミセンに教えなかったの? リアルで知り合いだったなら、すぐにシャミセンが本人だってわかったんじゃ?」


 オレがハウルに聞きたいことを、代わりにセイエイが本人に問いかけた。


「いや、煌兄ちゃんって昔からファンタジー系で名前入力が可能なゲームをする時って、かならずって言うほど『シャミセン』って入れてたから――」


 クスクスと含み笑いを浮かべるハウルのうしろに陣取ったオレは、


「ほぅ、それじゃぁ全部知っててオレを見てたってわけか? けぇいぃとぉおっ?」


 両手を物を包むような形に組み、ハウルの頭にはめ込むと親指の関節を曲げて、彼女のこめかみに押し込んだ。


「あぁいたたたたたたた……」


 悲鳴にも似たハウルの叫び声。たぶんVRギアがこめかみにはしる痛みを感知して、実際に本人の脳波に痛みを走らせてるのだろう。


「ご、ごめん、ごめんなさい煌兄ちゃん、だからやめっ! っていうかあれ? 私ってコンバーターとはいえ、煌兄ちゃんよりレベル高いのになんでうしろを取られてるの?」


 ジタバタと痛みから逃れようとオレの足を蹴る。だがフレンドの場合はダメージ判定もないから痛くも痒くもない。


「うーんっと、多分シャミセンのAGIのほうがハウルより高かったからだと思う」


 セイエイが冷静に説明するや、


「うそっ? っていうか煌兄ちゃんってどれだけ強くなってるの?」


 ハウルは目を丸くしてオレを見据えた。


「あっと今だと91だな」


「それ無課金でレベル26のステータスじゃないよ。もしかして本当にチートとかしてないよね? っていたたたたごめんごめんごめんっ! 煌兄ちゃんの装備品の効果でそうなっただけけけけけけ」


 いくらかわいい従妹でも、お仕置きっていうのは必要ですよね。

 あと本当にチートとかできるほど知識ないから。



「っと、久しぶりに戯れ合うのはこのへんにして……綾姫、そろそろ落ちないとほんと怖いんじゃないのか」


 アイアンクローから開放されたハウルは、その場にへたり込み、


「うぅ……、私、香憐を呼びに来ただけなのにぃ、テスト勉強だからちゃんとしないと先生に怒られるのにぃ」


 グズグズと泣きだした。


「あ、オレがしたことにたいして香憐に八つ当りするなよ。そもそも知ってたんならなんでオレに言わなかったのかって、そっちに怒ってるんだけど?」


「半信半疑だったんだよ。シャミセンって名前だからって煌兄ちゃんだとは思わないじゃない普通。VRギアをうちの倉庫に封印していたからVRMMORPGをやっているのは知ってたけど、まさか再開したゲームの中で助けてもらうなんて思ってなかったもの」


「オレが香憐と一緒に行動してるっていつ知ったんだ?」


「昨日っ! 香憐本人が言ってたんだよ。煌兄ちゃんが星天遊戯やってるってっ! このゲームって既存の名前はプレイヤーとかNPC関係なしに使えないでしょ? だからシャミセンが煌兄ちゃんだってわかったの」


 ハウルが涙目になってオレを睨んだ。


「しかし身内とはいえ女の子を甚振るって」


 とサクラさんが、花愛を憐れむような表情でオレを見た。


「あ、それは身内だからってのもありますよ。子供が悪いことしようものなら叱ってあげるのも年上の役目だと思いますんで。もちろん年下の子の態度が悪かったら矯正してやらないといけないってのもありますけど」


 サクラさんの憫笑に対して、オレはそう応えた。

 怒ると叱るはそもそも本来の使い方がまったく違う。

 『怒る』は腹を立てる。つまりは自分の感情を一方的に相手に与えてしまう。

 『叱る』は相手の行動を咎め、戒める。つまりは相手を思ってやることだ。

 両親や祖父母にはいっぱい怒られたし、バイト先の店長や先輩にも、たぶん数えきれないほど怒られている。

 まぁ、お金をもらっているのだから、仕事の指示が遅いとなれば怒られるのは当たり前のことだし、今はオレも後輩に指示したり作業を教える立場なんだよな。


「それはいいけど、綾姫本当に落ちないと怒られるんじゃないの? もう小母さんに呼ばれてから十分くらいは経ってると思う」


 セイエイがそう言うや、


「えっ? あ、本当だ。それじゃぁセイエイ、シャミセンさんお疲れ様でした」


 と綾姫は睡蓮の洞窟へと走っていった。



「お、おいっ! 綾姫っ?」


「あ、ログアウトしてる」


 オレが綾姫の後を追おうとした時、セイエイがそうオレに教えた。

 おそらく睡蓮の洞窟にあるキャラバンに入ってすぐにログアウトしたのだろう。


「はぁ……、それじゃぁ私も落ちるね煌兄ちゃん」


 そういうと、ハウルは睡蓮の洞窟へと入っていく。


「あぁそうだ……」


 ふと立ち止まり、オレのほうへと振り向きながら、


「セイエイさんや私にやったことに関しては香憐や真鈴姉さんには話してないから」


 と言って、睡蓮の洞窟へと消えていった。



「なんかスゴイねシャミセンの従姉妹って」


「もうなんか考えたくねぇ」


 ハウルが身内だったという衝撃の事実が今日一番のイベントだな。


「……でもそれだったらやっぱりハウルも、シャミセンや綾姫と一緒に来るってことになるのかな?」


 セイエイがむぅっと難しい表情を浮かべる。


「っとそう言えばビコウから聞いたけど、前にオフ会した時のメンバーにはCCメール送ったって」


「うん、でもメイゲツは鼓笛隊の発表会があって、セイフウは弓道の大会があって行けないって。ナツカはシフトが入っていてダメだし、ケンレンは学校の友だちと先に用事があったって言うし、テンポウも同じ理由」


 セイエイは喋っていくうちに、寂しそうな表情をオレに見せた。

 もちろんみんな用事があって、約束とセイエイの誕生日を天秤にかけたんだとは思うのだけど。


「まぁみんな用事があったとかじゃ、それをキャンセルにしてもらうほどじゃないしな。タイミングが悪かったと思わないと」


「うん」


「それにみんなちゃんと理由を言って断ってるんだろ? 嫌っているとかそういうのだったらそんな面倒なことを言わないしな」


 あとでビコウにお願いして、ケンレンたちに当日の予定を探ってもらうか。


「その分オレと綾姫……たぶんハウルも来るだろうけど、めいいっぱい祝ってやるからさ」


 オレはセイエイの頭を撫でる。


「うん」


 ふと見せたセイエイの表情は、安心した子犬のようだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る