第96話・三歌仙とのこと
「よっと」
目の前にいる黒牛の身体に四カ所、緑色の光が点滅している。
場所的に言えばちょうど四つある胃がある場所。
額には赤い光が点滅していた。
そのうちのひとつ、緑色の光の点滅を手で触れる。
[[ミノ]を盗むことができました]
盗みスキルが成功し、アイテムゲット。
その瞬間、興奮した牛が突撃してきたけど、体現スキルというか通常攻撃だったのか刹那の見切りで避けることができた。
避けてすぐ、ライトニングで応戦。弓矢を引く構えで赤い光に向けて放つ。
チャージはかけてないけど命中しやがりました。
牛はオレとのレベルの差があったからなのか、それとも急所に当たったからなのかどうかはわからないけど、ダメージが五割減少。
もう一回、別の緑色に点滅しているところを、突進した時に触れてみますか。
バカのひとつ覚えなのか、もしくは突撃しか攻撃方法がないのか、牛はふたたびオレに突進してきた。余裕で避け……
「ぐふぅっ?」
……れなかった。
お腹にモロ食らった。
ビコウから借りた初心者用の法衣しか着用していないから、ダメージが半端じゃ無い。
だけどその隙にもう一箇所の緑の光に触れる。
[[ミノ]を盗むことができました]
さっきと同じ。っていうかミノって部位じゃないの?
残り二箇所も触れてみたが、ミノとミルクをそれぞれ盗むことができた。……いや、だからそれ部位だよね?
「あ、盗むスキルは食材可能モンスターの部位も手に入れることができます」
うしろで戦闘を傍観していたビコウがそう説明する。
あれ? でもそういう倒さないと手に入れられないアイテムは盗めないって言ってませんでしたっけ?
そうたずねると、
「そこはまぁ……抉り取ったとかそういう
ということらしい。それって盗むよりえげつないんだけど。
心なしか牛が最初よりちいさく感じるのは気のせいかしらん?
まぁいいや、そろそろトドメを挿そう。
「[アクアショット]ッ!」
チャージを緑までにし、水の波動を牛の足元にぶつける。
牛の周りが泥濘み、さらに牛の重みで地面が沈んでいく。
「……ふぅん」
うしろからビコウの感心した声が聞こえたが気にしない。
「[チャージ]ッ! [ライトニング]ッ!」
魔法エフェクトの色が青から緑へ、緑から赤へと変化し、光の矢を放つと、矢は牛の額で点滅している赤い光に刺さった。
牛のHPは一気に減少……全壊した。
「だいぶ慣れてきましたね」
「っていうか、二時間連続で戦闘ってどんだけ鬼畜だよ」
時間を確認すると午前十時を回っていた。
ビコウが普段利用しているバトルデバッグ用のサーバーでスキルを覚えたオレは、あれからレベル20制限が掛けられているフィールドの奥地で[盗む]と[極め]のスキルアップを
「[極め]は基本的に戦闘開始直後に使ったほうがいいですね。ただマミマミみたいに体現スキル無効化を使ってくるプレイヤーやモンスターには通用しないのが難点ですけど」
それはたしかに[極め]を使っていて感じていた。
ある程度色々なモンスターと戦闘しているのだけど、[盗む]の元々の成功確率は今のステータスで31%の確率になっている。
自分で言うのもなんだが、高い
「まぁ、一流のバッターだって、1シーズン三割行けばいいほうだからいいのかね?」
「今は弱い装備ですからそういうことになってますけど、シャミセンさんの場合はLUKが200くらいあるから、基本的にはAGIとDEXの合計値に変化はないと思いますよ。普通はそのふたつの合計値が高いほど成功する確率が高くなるんですけど」
とビコウがツッコミを入れてきた。
盗むスピードと技術がもっとも重要で、あとは運なんだとか。
たしかにシーフとかDEXとAGIが高いステータスじゃないと目も向けられないだろうね。
オレの場合はあれだな。その足りない部分をLUKで補っているといった形になっている。
「ビコウが[盗む]を使った場合、成功確率ってどれくらいになるの?」
「わたしが持っている装備を加えてで……ですか?」
ビコウは首をかしげ、すこし考えこむ。
「……あっと、たぶん39%くらいですね」
と答えてくれた。若干だけど負けてる。
ビコウのステータスはロクジビコウが見せていたから、オレもなんとなくは覚えていた。たしかLUKが基礎で93だったけど、装備品での上昇はしていなかったはずだ。
そうなると計算上LUKの数値は28ってところか。
DEXとAGIの計算は合計で138になるから、その28……39%(正確には38.64%だけど、最近のアップデートで小数点繰り上げになったらしい)の確率になる。
「うぅん、やっぱりDEXとAGIの合計値が高いほどいいわけか」
「とは限りませんよ。やっぱり最終的な確率はLUKで決まりますから……ほらまたモンスターがドロップしてきましたよ」
その言葉どおり、オレとビコウの目の前でモンスターが召喚されてきた。
馬の身体に鹿の頭部。立派な
[ムマシカ]Lv19 属性・木
モンスターを認識したことで、簡易ステータスが表示される。
が、それよりも……
「そろそろ休ませてくれない? 考えてみたら朝飯食べてなかったし」
「わたしなんて事故の影響で意識があっても体が動かない植物人間になってからは延命のために管を腕に繋がれて栄養剤を含んだ点滴を
ビコウの口唇はやんわりとしているが、目が笑ってない。
帰るなってことですか? そうですか。
ってかそれって言い方はあれだが食事してるよね? 朝はサプリだけって人もいるみたいだし。
「それにまだシャミセンさんのアカウント停止が解除されたことを知ってる人は運営とわたし、セイエイ以外はいないんですし……転移アイテム持ってませんでしたよね?」
うん、歩いて帰ったらプレイヤーに見つかるやね。
オレの姿はイベントの時とかあのバカがアップした写真のせいで完全に知られてるからなぁ。
転移アイテムというか、そういうスキルを持ってるビコウが一緒じゃないと正直ホームである魔宮庵には無事に帰れそうにないし。
ここは嫌々ながらも眠り姫のわがままに付き合いますか。
戦闘は極めを使ってアイテムを盗んで魔法で倒すという単調だったので描写は省略。
「レベル上がらねぇ」
結構戦闘しているわりにはモンスターの経験値が妙に低いんだけど。やっぱりこういうのはプレイヤーの運で決まるんだろうか。
まぁ100でもオレのレベルだと4増えるくらいだから、地道に上げていくしかないわけだが。
ちなみにムマシカから盗めたのは[鹿角]と[馬肉]のふたつだった。
いや、だからそれ部位……と思ったけど、食材可能モンスターって話なら納得だな。
「でも結構盗みスキルが成功してますよね。確率的には十回に六回は成功するけど、四回は失敗するって感じなのに」
納得がいっていないのか、ビコウはあごに手を当て、オレをジッと見据える。
「そこはやっぱりあれじゃないの、ST継続率が60%だったとしても単発で終わる人もいれば、十回以上継続する人だっているわけだし」
「あぁそれだったら納得ですね。そういうのって結局は時の運でしかないですから」
オレの高いLUKはどうやら[盗む]には適用されておらず、あくまでスキルでの計算上の確率でしかないらしい。
「もしLUKの数値が適用されてたら、計算なんて無駄なシステム作りませんよ」
ということらしい。
「うーん、本当にそろそろ休ませてくれ。リアルにお腹が空いてきたぞ」
「仕方ないですね。それじゃぁホームに戻ってログアウトしたら今日は休んでください」
ビコウはパチンと指を鳴らす。
次の瞬間、オレとビコウの足元には紫色の魔法陣エフェクトが出現し、オレたちを飲み込んでいく。
「そういえば……それって魔法なの? それとも体現?」
身体が沈んでいく中、オレがそうたずねるや、
「あぁこの転移スキルですか? あっとわたしのはまぁ――禁則事項です」
ちいさく笑みを浮かべ人差し指を口唇に当てて茶化すビコウ。
「場所指定したら、普通は行けない場所でも行けるとかじゃないよな? よくRPG作製ソフトのデバッグとかにある」
「…………」
おい、視線逸らすな。図星だからってわかり易すぎるんだよ。
とオレのツッコミもままならず、二人の身体は魔法陣に飲み込まれていった。
目の前が枕……じゃないや真っ暗だった。
ただ、甘い匂いと柔らかい感触、そしてなにより温かい肌のようなぬくもりが、オレの触感と嗅覚を刺激する。
ってか、ここどこ? あと妙に重たいんだけど?
「んっ、ふぅっ」
なんかかすかに喘ぎ声が聞こえてきた。
それと同時に顔が潰されるほどの圧迫感。
「ちょっ? ここどこだよ? ってかビコウは?」
「シャ、シャミセ……ンさん――? な、なんで私のローブのスカートの中からいきなり? って……あ、あまり――息を……あふぅっ!」
聞き覚えがあるんだけど、真っ暗でなにも見えない。
「いいかげんにしろっ!」
背中に激しい衝撃を食らい、オレの身体が前のめりに倒れこんだ。
「キャッ!」
「くうげぇ?」
あ、視界が明るくなった……。
「いったぁ……ちょっとセイフウッ! もうすこし優しく――」
「いてて、いったいなにが」
頭を振るいながら周りを見てみると、オレの視界には可愛らしい薄いピンクと白のストライプが入り込んでいた。
「えっと、どういう状況なの? これ」
「あ、あふぅっ?」
顔を上げるとメイゲツが顔を紅潮させ、アワアワと口を動かしている。
「うん、わざとじゃないんだほんとだよ」
そう謝罪をすると、メイゲツは無言でコクリコクリとうなずいてくれた。
わざとじゃないってことは理解してくれているようだけども。……
「この状況でよくそんなこと言えますね」
うしろから静けさの中にも怒涛で満ちあふれているセイフウの声が聞こえ、ついでに殺気も感じたから怖くて振り向けない。
「ま、まぁまぁセイフウ、メイゲツがシャミセンさんの転移ポイントに立っていたのが悪かったわけでシャミセンさんもわざとじゃないし……ってかなんで二人が客間にいるのよ?」
ビコウが苦笑を浮かべながら、オレの弁護をしてくれた。
たしかになんで二人が客間にいるの?
「あぁシャミセンさんに渡すようにって白水さんからの預かり物を持ってきたんです。オレたちは特にリアルで今日は出かける用事があったわけじゃなかったですし」
いやだからなんで部屋に……もしかしてセイエイが許可出してた?
入室できるプレイヤーは四人までとなってるけど、いつでも変更できたんだっけか。オレはそういうプレイヤーがいないからほとんどセイエイが入室許可を出してる。
「白水から預かり物?」
「セイエイさんからの依頼品である[女王蟲の耳飾り]と、白水さんがシャミセンさんに前から渡そうとしていた[燐紙]です」
メイゲツが恥ずかしげに顔を俯かせながらも、そのふたつのアイテムをオレにわたしてくれた。
【
∨+18 D+9 I+17 L+7 ランク?
すべての虫モンスターからの状態異常を無効化できる。
レベルの低い虫モンスターから攻撃されることがない。
*[反逆者]を持ったモンスターには通用しない。
「あぁ、こっちにDEX上昇のクリスタルを使ったのか」
オリジナルだからかランクは?になってる。
で、毎度のことながらクリスタルによる追加ポイントが結構もらえている。
さて気になる[燐紙]の説明文を読んでみると、
[燐紙] 魔法アイテム ランク?
魔法が込められた四角形の紙。効果は紙が破れるまで。
紙は色々な形に折ることができる。
相手にぶつけると魔法が発動しダメージを与えることができる。
「魔法の属性は色で決まってるそうです」
メイゲツの話だと無色と光闇以外の魔法属性で、緑は木、赤は火、黄色は土、白は金、黒は水となっている。
もらった紙は三枚。緑と赤、黒の三色だ。
ただ、この組み合わせってなんか心当たりがあるんだけど……
「ビコウ、これって」
「五色ですね。まぁあくまで偶然なのか五行思想を参考にしたのか」
でも黒色の紙が水属性の魔法アイテムだということを知らない人には意表がつけられるからいいな。
未だに弱点属性の関係を知らないってプレイヤーもいるらしい。
「それじゃぁ渡すものも渡したので、オレたちは失礼します」
「あぁありがとうな。白水さんによろしく言っといてくれ」
「はい。それから……」
メイゲツがなにかを言おうとしたが、言葉を止めた。
「あれ? シャミセン戻ってきてた」
「ありゃ、セイエイあんた今日は朝から出かけるんじゃなかったの?」
客間に入ってきたセイエイを見て、ビコウが首をかしげる。
「フチンが星天遊戯の仕事の目処がつかなくなったから出かけるの中止になった。あたらしいVRMMORPGのテストできると思ったのに」
セイエイが不貞腐れたように頬をふくらませる。
「あたらしいVRMMORPG?」
「『ザ・ダークウィッチ・ナイトメア・オンライン』っていうタイトル。闇に染まった世界に
思わぬ情報。まぁまだ開発途中でいつから始まるのかは不明らしい。
「しかし親がゲーム会社に勤めてると、そういう先行プレイができるのってうらやましいね」
「そうかな? わたしはあまりそういうの好きじゃない」
オレの言葉に、セイエイは不服な表情で言い返してきた。
「そうなんですか? 私もシャミセンさんと同じでうらやましいなとは思いましたけど」
「あぁこの子の場合はあまり攻略サイトとか見ないのよ。遭遇してもいないモンスターの情報を前もって知っていると簡単にとはいかなくてもある程度の対処法がわかるじゃない? それがどうもこの子は嫌いでね」
ビコウはいったん言葉を句切ってから、
「わたしはこのゲームのデバッグを任されてはいても、あくまでバトルシステムでのデバッグだから、イベントのシナリオとかそういうのもデバッグしてはいても、あんまり口出ししたことないのよ」
と続けざまに言った。
「あ、シャミセン。マスターとローロさんのところに行ってお願いしていたやつ受け取りに行ってきた」
セイエイは虚空にウィンドゥを表示させると、自分の手元にふたつの、布切れと錫杖を取り出した。
「ってか、マジで作り上げたのか」
「ほんとこのゲームの生産プレイヤーの中では
セイエイが持っている装備品を鑑定していたのか、ビコウは「うんうん」と納得したような表情を浮かべている。
「三歌仙?」
ビコウの言葉に首をかしげる双子。
「あぁと、
オレがビコウの代わりにそう説明すると、意外にも双子が憧れにも似た目でオレを見ていた。
「シャミセンすごい」
「わたしも今のはすごいなって思いましたよ。六歌仙って言葉は知っていても、全員言えるとは思えませんでした。知っていても小野小町くらいだろうし」
叔母と姪コンビもおどろいた表情でオレを見ていた。
まぁ確かに知名度的には小野小町のほうが群を抜いているだろうし。
「まぁ、つまりはシュエットさんやローロさん、白水さんをその六歌仙に踏襲してそう言われているってことだな」
オレはセイエイから法衣と錫杖を受け取り、早速鑑定をしてみた。
[赤光の錫杖+5] S+9 I+28 L+10
プレイヤーのMP20%を魔法スキルの効果に付加できる。
[月姫の法衣+α5]
∨+29 A+16 I+13 L+9 ランク?
夜のあいだだけモンスターまたはプレイヤーに見つかる確率がLUKによって低くなる。*パーティーには姿が見えている。
装備時、常時HPの10%が回復。状態異常は50%の確率で回復する。
*宝石は取り外し可能。
「あ、これマスターからシャミセンにって、まだ使えると思うけどもう装飾品以外には使えないみたい」
そう言ってセイエイが渡したのはルビーだった。削り削られてきた宝石は今では米粒くらいの大きさしかない。
「それからこれ……シャミセンから使ってもいいって預かってた素材アイテム」
ドサリと客室の床にそれらを出す。自分で言うのもあれだけど結構な量を預けてたんだな。オレはそれらひとつひとつをアイテムストレージに保存していった。
「赤光の錫杖のINTをクリスタルで上昇させたのか」
前に見せてもらったリストではINTは20になっていたはずだから、8ポイント上昇しているということになる。
「ってか、玉兎の時といい、今回作ってもらった装備品といい、結構いい感じにクリスタルが傾きましたね」
ビコウが嘆息を吐く。あきれてるのか感心しているのか複雑な表情だった。
「そんじゃぁ早速装備してみますか」
メニューウィンドゥを開き、装備品画面に移動させると、[赤光の錫杖]、[月姫の法衣]、【
【シャミセン】/【職業:法術士】/0N
◇Lv:25
◇HP:962/962 ◇MP:1487/1487
・【STR:14+30(9+21)】
・【VIT:9+68(47+21)】
・【DEX:19+21(+21)】
・【AGI:13+77(56+21)】
・【INT:10+109(88+21)】
・【LUK:160+56】
◇装 備
・【頭 部】
・【身 体】月姫の法衣+α5
(∨+29 A+16 I+13 L+9)
・【右 手】
・【左 手】赤光の錫杖+5(S+9 I+28 L+10)
・【装飾品】
玉龍の髪飾り(I+30 L+20)
「……な、なんじゃこりゃ」
自分が想像していた以上に成長してるんですけど?
「さ、さすがにこれはチートっていわれても文句は言えないんじゃ」
ビコウもおどろいた表情でそう言い放つ。
セイエイと双子にもそのステータスを教えた。ただしスキルはあえて教えなかったけど。
「シャミセン、いくらなんでも
いや、オレの場合は玉龍の髪飾りの効果で、LUKの10%が他のステータスに付加されてるけど、それでもセイエイとはとんとんといったところか。
いや、だからこそセイエイは不貞腐れてるってことだな。
「完全に法術士ってなんだっけってステータスですよね」
「うん、もう法術士じゃないなにかってレベルですよ」
セイエイと双子、三者三様の反応が返ってきた。
「っていうか、そもそもどうして初期職業を法術士にしたんですか? LUKにポイントを傾けるとかならギャンブラーでもよかったんじゃ?」
「あぁ、もともと力のない魔法使いでも運が良ければ強いやつを倒せたら面白いんじゃね? って理由で決めていたから、正直深くは考えてない」
オレの率直な理由を聞いて、
「うん、一度キャラデリして最初っから作り直しましょうか?」
ビコウが小さく笑みを浮かべる。
「なんでだよ?」
「そんな単純な理由でこんなにも強いキャラが出来上がりますか? 詐欺ですよ詐欺っ!」
「おねえちゃん、いくら自分の基礎ステータスが負けてるからってそういうことしちゃダメ」
めずらしくビコウをなだめるセイエイ。というかあくまで基礎の段階での話でしょ。ってかAGIが基礎で100じゃないか。どこが負けてるんだよ?
「うぅ、こっちはレベルマックスなのに兜を脱がなきゃいけないのってなんか屈辱を感じるわよ」
おいおいと姪っ子の胸で泣くビコウ。
「あ、シャミセン気になくていいからね。ただの嘘泣きだから」
「あぁ……と、別にいいんだけどさ」
というかもうツッコむ気がしない。
「それはいいとして、イベントって今日からだよな?」
「そうだけど、別に一日限定のイベントじゃないからあまり慌ててクエストに行くやつじゃないと思う」
セイエイがビコウの頭を撫でながらオレの質問に答えてくれた。
というか傍から見るとどっちが年上なのかわからん。
身長もよくよく見たらセイエイのほうが背丈が高いみたいだし。
「イベントクエストの受付ってイベント終了までやってるの?」
「あ、いや……もちろんクエストですからギルド会館の受付に行かないと受理されませんけど」
ビコウはどういうことだろうかとオレを怪訝な表情で見据える。
「なぁにちょっとした実験だよ。誰もモンスターでも気付かないってことは、その双子も気付かないってことだろ?」
オレはそう説明しながらも不敵な笑みを浮かべていた。
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