第5話・新たな能力を得るとのこと
はじまりの町――[イースゴッドの街]のログインポイント。
「うーん、
そう思いながら、オレは自分のステータス画面を広げた。
【シャミセン】/【職業:法術士】/665N
◇Lv/10
◇HP25/25 ◇MP10/10
・【STR:14】
・【VIT:9】
・【DEX:19】
・【AGI:13】
・【INT:10】
・【LUK:80】
一度休憩を挟んだ形で夕食をすませてからふたたびログインすると、町の門をくぐり抜け草原に出ていた。
ココらへんのモンスターはある程度倒していて、対策も練っている。
それどころかすぐにやられるという心配はしていない。
ただ、レベルは10になったのだが、とくに魔法を覚えるということもなかった。
装備品や、スキルなどのステータスに変化がないので、ここでは省略しておこう。
レベルアップ時の振り分けポイントはかならず[5ポイント]で統一されていた。
あれからレベルが[8]上がっているから合計で[40]。
それをすべてLUKに振り分けた結果がこれだ。
草原のみならず、ほかの場所にもひと狩りしに行ってはいるし、レアアイテムもいくつか手に入れている。
大抵は回復アイテムで、装備品がほとんどでてこない。
さらに買い物をしようにも、魔法を使う時の消費があるため、MP回復薬を購入していたら、武器を買うお金がありませんでした。
「そろそろなにかしら対策を練らないとなぁ」
オレはうぅむと難しい顔を浮かべた。
「MOBくらいなら
それは初めて遭遇したモンスターにたいして能力を使いながらレッドゾーンに入った瞬間、攻撃を受け、一度失敗をしていたからだ。
おそらくレベルや
「うーん、スキルショップで魔法を購入するか?」
「えっと、ちょっとよろしいですか?」
声が聞こえ、桃花色のツインテール娘……テンポウが、挙手するようにオレを振り向かせた。
「どうかしたのかい?」
「魔法のスキルでしたら、ちょっといいものがありまして」
「それって
「いえ、ちがいます。方法さえわかっていて、うまくいけばレベル5でも取れると思いますよ」
それを聞いて、オレは唖然とした。
テンポウが言っていたスキル取得の条件は、話を聞いた瞬間、そんなことができたのかと、自分の不甲斐なさを嘆いた。
「魔法を出す時間をわざとためるのか」
そういいかえすと、テンポウはうなずいてみせた。
いつも、魔法を放つまでのゲージが満タンになったらすぐに放っていたから、そんなこと気付きもしなかった。
いや、戦闘中に攻撃が止まっていたらやられる。
だからこそ誰もこの方法をしなかったのだと思う。
「パーティーを組んでいれば、私たちが注意を引き付け、そのあいだに魔法を使う時間をためるんです。ただし注意が必要ですよ。そのあいだ術者はアイテムは使えませんし、メニューを開くことも、ましてや動くこともできなくなります」
なるほど、これはたしかにソロでは取れない取得方法だ。
誰かと協力する。それこそ術者が守られた状態でしかとれない。
だけど、新しい魔法スキルがゲットできれば、攻撃の幅も広がる。
「よし。どういうやつが取れるのか楽しみだし、ちょっとやってみるか」
オレはビコウ・テンポウ・ケンレンの三人とともに、スキル取得をするため、モンスター探しを開始した。
しばらく歩き回っていると、ちょうど目の前約20メートル先で2メートルくらいの大きなモンスターが、ノッシノッシと歩いているのを見つけた。
「それじゃぁ、シャミセンさんはダメージ計算が100%のイエローゾーンまで近付いてから詠唱を始めてください」
ビコウは武器である、棍を取り出し、一蹴でモンスターのところまで飛び込んだ。
「すげぇっ?」
戦闘時のBGMが流れ始める。ビコウの先制攻撃が成功したようだ。
二メートル級のモンスターはすこし頭を震わせている。
「さぁ、シャミセンさん」
テンポウとケンレンに連れられるように、オレはモンスターとの間合いを、イエローゾーンまで近付いた。
「ほい、ほい、ほい」
先頭に立ってモンスターの相手をしているビコウは、それこそモンスターの攻撃をすんでのところで交わしている。
いくらVRRPGがプレイヤーの手腕が大きく関わっているとはいえ、あれはさすがに異常すぎる。
たしか、彼女たちはオレと同じくらいに始めたらしいから、レベルはすくなくても20はいっていないはずだ。
おそらくビコウの
モンスターから攻撃を仕掛けてはいる。
しかし、ビコウからは一切の反撃を仕掛けようとはしていなかった。
今回はあくまでオレのスキル取得が第一だからだろう。
「よし、このあたりか」
画面の上に▼のアイコンが表示されており、色はグリーンからイエローに変わった。
ビコウはオレがいることを確認すると、すこしこちらへとやってきた。
おそらくモンスターがオレから離れると、イエローゾーンからグリーンゾーンに、コロコロと変わってしまうため、イエローゾーンの中心あたりにオレがいるよう調整しているようだ。
「とりあえず、なんでもいいんだな」
モンスターはビコウに任せて、オレの両サイドにいるテンポウとケンレンも第一に備えて得物を構える。
オレが動かないよう、またモンスターが遠距離攻撃をしてくる可能性を考えて、警戒していた。
「……………………」
詠唱をはじめる。
ゲージはゆっくりと溜まり始め、二秒ほどして放てるところまでバーが溜まった。
「すぐに魔法を放たず、そのまま詠唱を続けてください」
テンポウの言葉はすぐに理解できた。
最初白だった魔法詠唱のエフェクトの色が青に変わり、そのバーが再び溜まりはじめ、緑へと変わるや、再びゲージを貯め始めた。
そのバーが溜まった。
「……まだです。まだ……スキルをゲットできるまであと一段階なんです」
オレはジッとバーが貯まるのを耐える。
緑だったバーは赤に変わった。
ただし、今度は青どころか緑よりも貯まる時間が長い。
時間にして十二秒ほど貯めている。
「――っ! 今ですっ!」
モンスターの攻撃を避けていたビコウが叫んだ。
それと同時にオレの魔法スキルのバーが真っ赤に染まった。
「くらえぇっ! [ファイア]ァアアアアアアッ!」
杖を高々と上げ、魔法を宣言する。
杖から放たれた火は、小さなものだった。
だが、それは一瞬のことで、炎の大きさがだんだんと、建物を壊す鉄球ほどの大きさへと膨大する。
これがただのファイアなのだから、ギガフレアとか上級炎系魔法だとどうなっていたのだろうかと、期待と恐怖を覚える。
その炎はモンスターを飲み込んだ。
モンスターは跡形もなく燃え尽き、いつもより大量のコインを散りばめた。
◇魔法スキル【チャージ】をゲットしました。
というアナウンス。
「[チャージ]か」
さっきの大きな炎ではなかったのかと、若干ガッカリする。
「よかったですね。こんな一発で取得できるなんて思いませんでしたよ」
ビコウが、一蹴でオレの方へとやって来た。
その時、着地のさいに彼女の胸が大きく揺れたが、まぁ気にしないでおこう。
「そうだな。みんなのおかげだよ」
オレはスキルの説明文を読むことにした。
◇チャージ
*魔法スキル/補助魔法/消費MP:****
・このスキルの装備している場合、他の魔法効力が増幅する。
・上昇値は現在の魔法計算に[レベル]%を重ねたもの。
・ただし、この魔法で別の魔法を詠唱している途中で攻撃を受けたり、キャンセルすると、チャージしていた魔法スキルの消費MP分のMPを消費してしまう。
【取得方法】
・モンスターとの距離が黄(イエロー)から離れないこと。
・魔法詠唱中、一定時間その場から動かず、詠唱エフェクトが赤に変化させた後に魔法を使ってモンスターを倒すこと。
「効力はステータスとレベルに依存するのか」
オレはステータスを表示させ、
現在、オレの
「つまりチャージを使うと計算では15の10%だから――あれ? それだと上昇値1しかないんだけど?」
思ったほどないんだけども。
そんなことを考えていると、
「なにか勘違いしてるみたいですけど、攻撃魔法の場合は
ビコウがそう補足してくれた。
そうなると、えっと今の数値だと
「四捨五入して32のダメージが入るってことか?」
「うーん、ちょっと惜しいかなぁ」
ケンレンが肩をすくめるように苦笑を浮かべる。
ん? どういうこと?
「正確に言うと魔法攻撃の計算式が100%だとして、ステータスのカンスト値になっている255を合わせた510分のレベルが加算されるのよ」
っということは、32に550のレベル10%だから――。
「84ってことか」
そう答えると、ビコウたちはうなずいてみせた。
「まぁ
クリティカルなどは最終ダメージに加算されるようだが、弱点などのダメージは最初にされるらしい。
それでもダメージが入るかどうかは運次第か。
「それでもシャミセンの
ケンレンがクスクスと笑う。
おそらく、攻撃がヒットした時にクリティカルが出る場合があると思ったのだろう。
それでも一回の戦闘でスキルが取得できたのは、オレの
彼女たちの協力のもと手に入れたスキルだったが、嬉しい半面、すこし使い勝手の悪いスキルだと思った。
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