姉(ねえ)たま ~姉のたまご~

甘口万才

姉のたまご

「大事に育てるのよ?」


 そう言って母親から買って貰ったのは姉ちゃんの卵だった。

「うん」

 俺は毎日姉ちゃんの卵と一緒に添い寝した。

 早く産まれないかな?と。


 ピキピキ……ピキピキ……。パリーン。


「……?」

 姉ちゃんは、初めて見た生き物を弟と思い込む生き物だ。


「ほら、姉ちゃん。解る?弟だよ……」

「オトウト……?」

「そう、弟だよ」


 オッドアイの美少女……姉ちゃんは無事に孵った。


「はい、姉ちゃん。食事」

「……ン」


 毎日俺に依存してくれる姉ちゃん……。なんて素敵な毎日なんだ。


……


「キモいッ……何だこのキモさは!?」

「うるせえな……」

 俺の自作の小説をリアル姉に偶然見られ、俺は俯いた。

 姉はオッドアイで、俺と血が繋がっていないんじゃないか?ってくらいの美少女だった。

「大体、先に生まれているのに姉ってのはおかしいだろう。これ私がモデルだろ?」


 そう言って自分を指さす姉ちゃん。

「……うん、でも卵から産まれるってアイデアは良くない?」

「つまらん、何が面白いのか解らんぞ?」


 ディスられる俺の小説。

「そもそも、お前は頭が悪くてキモいんだから、部屋に閉じこもってないで運動でもしろ」

「うるせえよ!?」


 ディスられる俺自身。

「もういいよ、こんな卵から姉が生まれる訳ねーもんな。そうだよ、ただの妄想小説だよ!」

 よかった、小説の続きは姉ちゃんとアレしたりコレしたりする話があったんだ。

 投稿前で本当に良かった。そう胸を撫で下ろしながら俺は姉ちゃんを部屋から追い出した。


 その日の夜中、トイレに降りた俺は姉と母親の話声が聞こえて部屋の中を窺う。、


「ただいま」

「お母さん、買ってくれた?前のはちょっとキモくなっちゃって……」

「はい、弟の卵よ。生まれて最初に見た物を姉だと思い込むわ、って二回目だから解るわね?」

「うん、ありがとう。次は素直に育つといいな」


 俺は、頭にチクチクした物を感じて、手をあてる。

 そこには、白い何かの卵の殻が付いていた。


~FIN~

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姉(ねえ)たま ~姉のたまご~ 甘口万才 @amazai

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