第2話
後から知ったことだが、あの青年は同じ大学の同級生らしい。学生証を持っていたのを見たからだ。
そんなことを思い出したが、そんなに気にもとめず僕は家路へと急いだ。
それよりも。もっと不思議なことがあったからだ。
頭の中は、何故止まろうとしても体は止まれなかったのか、そんなことばかり考えていた。
勿論、答えは出なかった。
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そうこうしている内に、アパートへと辿り着いた。
ここの203号室に、マイクは住んでいるのだ。
いつも通りに鍵を開けてうがいをし、すぐさま辞書やPCを開いて正夢について調べてみた。
--夢に見たことのことが現実となる夢--
--現実と一致する夢。あとでそれが現実となる夢--
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ひとしきり調べ終わったところである異に気がついた。
正夢とはいえ、体の自由が奪われることはないらしい。
その気になれば、体を動かしたり、喋れたりするらしい。
しかし、僕は体を思うように動かすことはできなかった。話すこともだ。
自分の正夢だけ、明らかに何かが違うのだ。
「じゃあ今日のあれは一体なんだったんだ……?」
考えたところで、今のマイクには何もわかる筈が無い。
「とりあえず、疲れたし寝るか。また明日考えよう。」
辛いことがあったら寝て忘れる。これがマイクが幸せに生きる秘訣である。
マイクはシャワーを浴びた後、余程疲れていたのか、ベットに入ると同時に、寝てしまった……。
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マイクは夢を見ていた。
何処かでつっ立っているようだった。
周りには、レジ、様々な味の飴が入った小さい箱、ドーナツが入った縦に長い箱があり、マイクの横には女性が立っていた。
「(あ、あの人って……)」
その女性をマイクは知っていた。ソフィさんだ。
同じバイト仲間、同じ年頃の言わば同僚だが、明らかに自分よりも大人びていて、しっかりしているのでついつい、さん付けしてしまうのだ……。
そんなことより夢の中でまでバイトに明け暮れているなんて……。
あまりにもリアルすぎるので夢か現実か分からなくなってしまいそうだ………。ん?
夢か現実か分からなくなる?……まさか……。
これも、正夢なのか…………?!。
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そんなことを考えていていると、ソフィさんに話しかけられていた。
「ねぇマイク?ちょっといいかしら。」
しかし、僕はソフィさんの言葉が耳に入っておらず、これが正夢だった時の為に、周りを注意深く観察していた。
「(何かおかしい所はないか?正夢だった時の為に、少しの異変にも気付いておかなければ…)」
「ねぇ聞いてる?おーい?マイクー?」
「(……もしかして何もないのか?正夢(かもしれないだが)だからといっても全部が全部ドラマチックな訳でも無いか…。)」
「マイク!マイク・シュミット!!」
「はっ、はいぃ!!」
「ちょっと無視しないでよ!何?そんなに私のことが嫌いな訳?」
「そ、そんなことないですよ。」
「だったら敬語止めなさいよ。同い年でしょ?」
「それはちょっと……で、話ってなんですか?」
「あぁ、そうそう。そうだったわ。店長があまりにも遅いの。さっき陳列について聞きたいから呼んだんだけど……」
「マイク。ちょっと様子を見てきてくれない?」
「えぇー?なんで僕が……」
「私はお客さんの対応で忙しいのよ」
「客なんて1人もいないじゃないですか!」
時刻は既に午後2時。店内は依然ガラッとしていて淋しさが漂っている。夜勤組は僕とソフィさんと、先輩であるむっさんがいるのだが、今は僕ら2人だけの様だ。
「いいから!さっさと行って!あとでお礼をするから!ドーナツだけど。」
「わかりましたよ……」
こうして僕は、店長がいると思われる荷物倉庫へと急いだ……。
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どうやら僕の読みは当たっていたらしい。休憩室には誰もいなかった。勿論、むっさんもだ。
倉庫への道は休憩室を左へ曲がった直線を進んだら直ぐだ。
行くのにはそう困らないが……。
「(なんだ?この臭い……)」
困ったことに、少なくともこの夢は幸せな夢では無さそうだ。
腐った冷蔵庫の中に入れていた生肉のような、言わば腐卵臭が辺り一面に充満していた。
「(店長、鯖のサンドイッチでも腐らせたのか……?)」
そう考えていると、何処からか、いや考えられる場所は1つしかないか。荷物倉庫の方から歌が聞こえてきた。
--ゆっくりゆっくりじわじわと、息の根止むまで切り刻もう--
--足の指落として手も切って~綺麗になったら首落とそう--
「(!!?!??!)」
何故だ?何故、店長はこんな歌を歌っているんだ?
分からない。いや、分かりたくない。逃げないと…
しかし、僕は愚かだった。
恐怖よりも、好奇心の方が勝ったようだ。気づいた時には、半開きだった荷物倉庫のドアから顔を覗かせていた。
果たして…………そこには……………
To be continued…
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