正夢に抗う
踊るルンパッパ
変わりゆく運命
第1話
--人の運命は、最初から決まっていると言われています--
--よく、こうなる運命だったんだ…というセリフを耳にしますもんね--
--しかし、先生はそうは思わないね--
--そんな、誰かに決められた運命は、つまらないじゃないか--
大体、アーノルド先生はこう言い終わったあと、チラリと窓側の席をみた。
そこには、まるで音楽の時に使うシンドロームのようにこっくり、こっくりと頭を上下に揺らしながら惰眠を貪っている生徒がいた。
その生徒の名は、
「起きなさい。マイク・シュミット」
マイク・シュミット。特に目立つ訳でもない。頭の回転が早いが、勉強ができるわけじゃない。ただのよく考える努力家だ。
「…………………あっ!」
マイクはやっと、自分が寝ていることに気づいたのだ。
そしてその瞬間に、授業を終えることを告げるチャイムが鳴り響いた。
「………あとで私のところまで来なさい。」
そして授業が終わると、マイクはアーノルド先生のところに向かった。
「すいません先生。あまりにも眠たすぎてつい…」
「そのセリフはもぅ聞き飽きたぞマイク。」
今月に入って5回目だ。友達のいないマイクは、陰でスリーパーと呼ばれている。
寝すぎるからだ。
「今回ばかりはもぅ先生も、堪忍袋の尾が切れてしまったよ。」
そういう先生の顔は意外にもにこやかだった。
しかし、その後が、怖いのだ。その後にくる言葉が。
「罰として今日の授業で君がやる筈だった自分の運命について何かを考える作文を書いて来なさい。もちろん、皆よりも量は倍増だ。明日までにだよ」
「そ、そんな殺生な………」
「君に拒否権は無い。後で職員室に来なさい。追加のプリントを渡すから。」
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マイクは、職員室でプリントを貰った後、家までの道を歩いていた。
「ついてないな……。眠くなるのは仕方が無いことなのに…。これはもぅPTAに昼寝の時間を設けるように訴えかけるしか………。」
マイクはそんなことをぶつぶつと呟きながら歩いていると、気づいた時にはT字路まで来ていた。
そして、マイクははっと何かに気づいた。
「ここ、夢で見たような……」
そう、マイクは1ヵ月程前に正夢を見ていたのだ。ちょうど、このT字路を真っ直ぐに渡って角を左に曲がった瞬間に、トラックに跳ね飛ばされるという、なんとも寝起きが悪い夢をだ。
筆者も正夢というものを経験したことがあるが、それはなんとも不思議なものだった。
頭では、これは正夢だ、と分かっていても体は勝手に夢で見たことと同じことをしているのだ。
つまり、マイクの場合は…
「(やばいんじゃないか?……このまま進んだら)」
たらり…とマイクは冷や汗をかいた。冷や汗をかくところまで正夢の通りだとは…。
マイクの頭は最悪の結末を思い浮かばせた。
命があるかどうか…。
「(止まらないと!………えっ?)」
歩みが止まならない。いや、止まれないの方が正しいか。マイクは1歩、1歩確実に死へと歩んでいるのだ。
しかも、歩いている途中でアーノルド先生に貰ったプリントを落としてしまった。
ところで、読者の皆さんの中には、夢は、所詮夢じゃないか。と思もいの方もいるかも知れませんが、
正夢は違う。
おぞましい程に、夢の内容と同じなのだ…。
「(嘘だろ……こんな所で死ぬのかよ……はぁ…。)」
あと1歩、あと1歩で角を曲がる!
………しかし、マイクは幸運だった
「これ、落としたよ。」
マイクは、突然青年に肩を叩かれた。次の瞬間
「えっ?(あれ、体の自由を取り戻せた……)」
マイクはピタッとその場で立ち止まった。すると、
びゅぅぅぅぅぅぅうん
風切り音とともに、鉄の塊、もといトラックはマイクの前を通り過ぎていった……。
助かったのだ。ご都合主義というかなんというか…。
マイクは一瞬何が起こったかわからなかったが、事態を呑み込めると、青年に向かって礼を言った。
「あ、ありがとう。助かったよ。(命が)」
「いいんだよ。困った時はお互い様だよ(あのプリント、そんなに大事だったんだ…届けてよかった)。」
この出会いが、2人の運命を変えたことを、彼らはまだ知る由もなかった。
それを見ていた人物がぽつり、
「………。運命を変えるとはな…。残念ながら、彼らは許されないことをしてしまったようだな。」
と呟いて、どこかに消えてしまった…
To be continued
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