第4話 まおうじょう は かんこうち?

『さあいざ魔王の元へ!』



なんて格好付けてみたが、実際は何故か元居た世界とあまり違いのない、強いて言えばレトロだなー、と思うくらいの電車に乗って悠々自適だ。

こんなんで良いのか本当に。



「なー、後どんくらいで魔王の所に着くわけ?」


「そうですねぇ。時間にしてあと30分ほどかと」


「へー…」


「すみません、遠くて。それもこれもあんな辺境の地に家建てたアイツのせいなので、恨むなら思いっきりヤって下さいね!」


「俺からしたらビックリするくらい近いんだけどね!?あとヤってが殺ってに聞こえるのは俺だけ?やだよ?この年で前科持ちとか」



あとちょいちょい魔王に対して辛辣…てか、実は案内人と魔王って仲良かったりするんじゃないか?

言葉の端々からそんな予感しかしない。

まあ最初から嫌な予感しかしていなかったから、もうどうにでもなれとしか思わないけど。



そうこうしている内に視界に、黒くて禍々しい城のようなものが見えてきた。



(あれが、魔王城か…)



自然と拳を握ってしまう。

背中は冷や汗で一杯だ。

それもしょうがないだろう。

何せ俺はただの一般人で、まさかコンビニに行くだけだった外出が異世界の、それも魔王退治をさせられるなんて誰が思うか。

こくり。ツバを飲み込んで言い知れぬ恐怖をやり過ごそうとする。

と、向かいに座っていた案内人が指を魔王城に向けてニコリと笑った。




「えー右手に見えるのは、かの有名な魔王の住処でございます」


「観光地じゃないんだからそんな言いか……っ…観光地になってる!?」



バッと電車の窓を上げて良く見てみれば、魔王城のすぐ近くには店らしきものが軒を連ねていた。

うん。明らかに観光地の姿だ。

イメージとしては浅草雷門近くみたいな?

とりあえず俺の魔王城に対してのイメージとは百八十度違うことだけは確かだよね。

あれか?それとも案内人の勘違いで彼処はダミーで他にもっと禍々しくておどろおどろしい魔王城!みたいな魔王城があるのか!?



「あ、いやいや。あれが魔王城です」


「ですよね!」



だってほら。今駅になんかそれっぽいの居たもん。

黒いマント羽織った美形なのに威圧感ある男の人が居たもん。



「ちなみに、今駅に居ましたのが勇者様にさくっと倒される魔王で~す」


「ずっと言いたかったけどこの国メチャクチャ平和だろ!?危機感ないもん!…って、魔王めっちゃお前に対して手ぇ振ってんじゃん!?」



▼ 勇者は異変に気付いた

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