第3話 まほう の ことば

「では世界平和の為に頑張りましょう!」


「ああ……俺の平和を取り戻す為に頑張るよ」



やる気に満ち溢れている案内人(になるのだとさっき聞いた)とは裏腹に俺はガックリと肩を落としていた。

明らかなテンションの差をものともせず、案内人はサクサク歩き出す。

しかし俺のHPはどう考えたって0だ。

魔物に攻撃されたとか、バトル的なものが起きたとか言う訳じゃない。

なんというか。

100%目の前の案内人のせいだ。



(……王様が不憫でならねぇ…)



王様に会いに行こう!そんな一言で右も左も分からないままに連れていかれた馬鹿デカイ城。

そこでふんぞり返っていた王様。



「そなたが魔王を倒す新たな勇者か?」



そう偉そうに言われて一応頷いた。

訳も分からない状態で連れてこられて、人の話を全く聞かない案内人に苛立っていた上に。更には偉そうな物言いと上から見下されているような態度に今までの苛々レベルが募った気がしたが。

何故かこの王様も話を聞かないタイプな気がしたので口をつぐんでおいた。



「今回の勇者はすぐに使い物にならないようせいぜい「じゃあとりあえず魔王城までの交通費その他雑費下さい」……話は最後まで聞くように」



被せられた言葉に王様の眉がピクリと跳ねた。

だがいつもこうなのか、特にそれ以上の言明はせず、王様は俺に向き直る。



「まあ、貴様がどれだけ出来るから見物させて頂くとしよう」


「はあ…、どこまで出来るか分かりませんが」



一応の礼儀だよな?とそれだけ言ってチラッと案内人を見やる。

これからどうすりゃいいんだ?

俺の視線に気付いたのか案内人はニコリと笑い、



「話終わりました?じゃあ王様。お金」



はい。と両手を差し出してお金を強張る案内人。

その笑顔が怖くてちょっと足がすくむ。



「……お前はそれ以外が言えないのか」


「ある所から奪っ、貰うのが当然じゃありませんか?」


「……そうだな。お前はそういう奴だったな」



そうか。いつもこういう奴なのか。


肩を落とす王様が側に控えていた男(大臣と呼ばれていた)に金貨を用意するよう告げていた。

暫くして金貨だろうものがギッシリ詰まった布袋を持って案内人に渡していた。



「さ!勇者様。資金も集まりましたし、魔王退治に参りましょう!」


「……おう」



キラキラとした目で言われ、直ぐ様頷くというスキルがいつの間にか身に付いていた俺はやはり何も言わずに頷いた。

ただ王様?



「……まあ、大変だろうが頑張れ」



そういうのはさ。哀れみながら言われると心配にしかならないから止めて。



(魔王に会う前に疲れた気がするのはなんでだろうなぁ…)



▼ 勇者は魔法の言葉

 『現実逃避』 を覚えた

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