第5話 まおう な ふうふ
「今起こっている事を30文字以内に纏めて教えてくれ」
「魔王と喧嘩をして家出をしたので倒して下さい」
迎えに来た魔王と一緒に歓迎されながら城の中に入った。
この時点で疲れきっていた俺は案内人に理由を説明させる。
「俺の知らない間にまた違う男を連れてくるとか何を考えているんです?いい加減精神を破壊するだけで留めては差し上げませんよ?」
「離婚も辞さないと思ってます」
さっきまで犬属性宜しく手を振っていたのにとんだ狂犬だった。
とかはどうでもいい。
噛み合わない2人の会話を聞きながら俺は思った。
なんていうかさ。
「完っ璧痴話喧嘩じゃねぇか!?」
俺は叫んだ。
力の限り叫んだ。
魔王がイケメンな顔を歪めて禍々しい殺気を放ってくることとか。
そんなことを一切気にせず俺に魔王(自分の旦那)を倒せと言う案内人とか。
諸々に半分意識が飛んだが気にしない。
気にしたら負けだと俺の中の何かが叫んだ。
「大体なぁ。お前ら話が噛み合ってねぇんだよ!まずはちゃんと話し合え!何が原因で喧嘩したんだ?ん?」
「貴様に関係ないでしょう」
「案内人!」
「なんていうか、家に帰ったら魔王が浮気してまして。キレまして。王様の元に泣き付きまして、ぶちギレた魔王が王様の胸ぐら掴んだので流石に私も止めたら飛び火しまして。もういっそ魔王殺っちゃう?的なノリでアナタで三人ほど呼び出しましたら二人はまあ、とりあえず魔王に精神的にヤられました」
魔王じゃ話にならないと案内人に聞けばつらつらと紡がれるワケに頭が痛くなってきた。
「それは魔王が悪いな」
「ですよね!じゃあそういうことなので、」
撃沈している魔王?
気にしたら負けるって俺の中の何かが言ってるって言ってるじゃないですか。
「さぁ、勇者!魔王をサクッと倒すのです!!」
「うん。今の話の流れでそんなこと言うとかお前は悪魔か!いやむしろ、お前が魔王だ!!浮気は悪いが倒すのは無しの方向でちょっとお前ら話し合え」
というか漸く気付いたけど、案内人って神官だろ?
絶対そうだよな?
だって今、呼び出したってハッキリ言ったし。
つまるところあれか?
俺を痴話喧嘩に巻き込むためにホラを吐いていたと。
「てへっ☆」
「すっごい殺意湧くんだけど!?」
「人の妻に殺意を向けるだなんて。死にたいのですか」
「元はお前の責任だろうがぁぁぁ!!」
復活した魔王は暗い瞳でゆらりと剣を引き抜く。
何か禍々しいオーラが出てて冷や汗が止まらないんですが。
案内人に助けて欲しいと視線を向ければ、いつの間にか魔王に抱き込まれていた。
案内人はへらりと笑って親指を立てる。
「逝って来いってか?ふざけるな!」
王様。俺は今、貴方が何故あの時哀れんだ視線を寄越したのか理解しました。
「頼むから俺を巻き込むなあああああああ!!!」
夫婦喧嘩は犬も食わないんだぜ。
魔王と異世界から人間呼べる神官の夫婦喧嘩なんてバイオレンスなもんに首突っ込んだら絶対死ぬっ。
肉まんの行方とかもうどうでもいいから。
とりあえず王様の所に行って慰め合いたい。
▼巻き込まれ勇者は戦闘を放棄した
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