4.夢中にて
ガーナットは倒れている間、なんとも心地の悪い夢を見た。ガーナットの母マリーがこの世を去った日の夢だった。
夢の中、ガーナットはマリーが寝ている姿を見下ろしていた。その日、マリーは朝から調子が悪く寝込んでいた。だが、ガーナットは2年前のその日のことだとは気づいていなかった。
マリーは村でも1、2を争うほどの美人で、その寝顔も実に安らかで、息子のガーナットとって、それは癒しだった。その寝顔を見ながら、ガーナットは「謎の声」について考えていた。
「謎の声」から発せられた海嘯とは何のことだろうか。津波?意味的にはそんなところだろう。だがテンダールットは海とはかなり離れている時聞いたことがある。だいたい海や津波も話でしか聞いたことがない程度だった。何かが起きるという意味だろうか。いくら考えても答えは出てこなかった。
考えているうちにまた、新たな疑問が生まれた。この夢はおかしくないだろうかと。ガーナットは普通、夢の中ですぐに夢とは気づかないんじゃないだろうかと不思議に思ったのだ。それにひどく息苦しく、胸のあたりに圧迫感を感じる。そしてガーナットは気づいた。この夢があの日のことであることを。
それまで穏やかに眠っていた、マリーの顔は苦痛に歪み始めた。何もかもがあの日のままだった。
喋ることもできずに、目をつぶりもがいていた。まるで彼女の意識はどこか遠くにあるようだ。それが続いている時、デリーやランディー、ランディーの祖父母なども駆けつけてくれていた。そこにはガーナット自身の姿もあった。
マリーは一瞬だけ落ち着きをとりもどし、何か悟ったような顔をした。目は相変わらず閉じたままで。次の瞬間、悲痛な叫び声、まるで声のないような叫び声をあげて力尽きた。
やめろ・・・
もうやめてくれ・・・
こんなのを見せるな・・・
やがて夢の中でガーナットの周りは漆黒の闇に包まれた。何をない虚無な空間。ガーナットが不意に手を伸ばした、その先に小さく輝く星のをような光を見つけた。ガーナットはその光を求めて近ずいた。きっとあそこに行けばこの長く辛い夢が終わる。夢から覚められると思って。
だが、近ずいても近ずいても光の大きさは変わらない。一瞬諦めようかと思ったその時、暗く、何もない空間は群青色の光に包まれた。
そしてガーナットはランディーとデリーに見下ろされながら、自分の部屋のベットで目を覚ましたのだった。
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