第3話 ~逃亡~

国を離れてしばらくは馬を走らせ続けた私達だったけど、そろそろ限界が来たみたいだった。一番最初にそれが来たのは私達の馬だった。

「ねえ、フレアくん。この子ふらふらしてない?」

「うん、さすがに限界みたいだね。」

私達の会話が聞こえたのか、ガリューさんが話に入ってきた。

「では、そろそろ野営いたしましょう。このあたりには洞窟も多い。少しなら身を隠せるかと。」

「そうですね。」

「では、アンドリューに伝えて参ります。」

そう言って私達を追い越して行った。

手近な洞窟はすぐに見つかって、私達は馬を降り、中に入った。中は結構広く、馬も入る事が出来た。

「ゆずり、野営は初めて?」

寝る支度(と言っても枕や布はないため、地面の状況を確認してなるべく平らな所を探すだけだけど・・・)をしながらフレアくんが言った。

お父様にお願いして、フレアくんにはいつもの態度で接してもらってる。その方が怖くないし、安心だから。

「うん、キャンプとかならしたことあるけど、こんなのは初めて。」

「そっか。まあ、この辺には動物もあまりいないし、みんないるから怖くはないと思うよ。」

「うん。」

話ているうちに見つけたのか、フレアくんは「ここならいいね」と言った。

「ゆずり、はい、ここで今日は寝てね。一応、頭にはこれ、敷いといて。」

そう言って渡されたのはフレアくんのハンカチだった。

「え!これ、フレアくんのじゃん!わ、悪いよ!」 

「ダメだよ、ちゃんと敷いといて。そうしてくれないと、今度俺が王様に怒られる。」

そこまで言われるとさすがに意地を張れず、私はハンカチを敷いて横になった。途端に眠気が襲ってくる。

「疲れたもんね。大丈夫、俺はここにいるから、安心して眠って。もし、何かあったらゆずりを抱きかかえて逃げるから。」

「ぜったい?」

「うん、ぜったい。」

「ぜったい」は二人の約束の言葉だった。この言葉を言ったら絶対に守んなきゃいけない。

だから、フレアくんの「ぜったい」を信じて、私は眠りについた。

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