初戦その2


麻央の振ったサイコロの目は6。

「おっと、左6つか。お兄さんの山だな」

「山?」

「山というのは今さっき作ったもののことだそしてこれは雀牌と呼ぶ」

オーガは縦二つ横二つを綺麗に指でつかむ。合計四牌を麻央に渡した。それを次に次に俺。その次にウエイトレス。最後にオーガだ。

それを3度繰り返し最後に手前の上と二つ先の上の牌をとって麻央に渡す。

俺達には一つずつ。麻央以外には合計13。麻央には14の雀牌が配られた。

これでなにをしようとするのか。

「坊主たち、少しだけ説明してやる」

オーガは自分で並べた牌の左端を崩した。牌には、鳥の絵と丸い玉模様が描かれている。

「これらが基本的な形を作るシューパイだ。逆に・・・おい、出してやれ」

「仕方ないわね」

そう言うと東と書かれた牌を表に出す。

「これが字牌だ。東の時はこれを三つ集めるだけで役ができる」

「役?」

「それはおいおい覚えるといい。始めるぞ」

そして始まった。俺達の運命の一戦。ここで負けたら後はない。

麻央は少し考えて西と書かれた牌を出す。

西、普通に考えたがこれはこれでなにか意味があるのかもしれない。

しかし気を待つこともなくそれはすぐにわかる。

「ポン!!」

ウェイトレスが麻央の捨てた西を手に取り彼女から見て右端に置く。

左右は縦で真ん中だけは横。これも意味があるのだろうか。

そしてウェイトレスの彼女は牌を一枚捨てる。先程出した東の雀牌だ。

そして次はオーガのおっさんへと繋がっていく。

この瞬間俺達は気づいた。

((やっぱり圧倒的に不利))

ルールを知っているもの、戦略を知っているものに対して初心者である俺らが刃向かうことがまず間違いだった。だからといって逃げることのできない状況だったのも確か。

まずこのポンに対してわかったこと同じ牌を取ったということ。

これぐらいしかわからない。

「これが鳴き。他にもあるがその時その時で教えよう」

あくまで情報の開示は最低限まで。こいつわかっていやがる。

このウェイトレス・・・もう面倒だ。女と仮呼称しよう。

女も同様だ。あまり目立ったように言葉を繋がない。にこやかな笑顔でこちらを見ているだけだ。・・・普通に怖い。なんか裏がありそうだ。

「次は嬢ちゃんの番だ」

いつの間にかオーガは東を切っている。

そして麻央の番になった。

麻央の手配には何があるのかわからない。

(雀にぃはそう考えているはず)

麻央の手牌は綺麗とはいかないまでもかなり揃っていた。

さっきまでの情報を元にして麻央はルールを少しだけ覚える。

(もしこれでいけるのなら)

麻央は手牌の内の真ん中を切る。

出したのは緑の線が三つ彫ってあるやつ。

「強気だな、では兄の方だ」

「わーてるよ」

牌を引っ張るもののダメだ。さっぱりわからねぇ。

麻央のヤツ普通に出しやがったけどもしかしてルールの一部でもわかったのか。

でも確証がないから口に出すことは出来ない。

麻央は天才だが応用力に欠けている。

持ってきた牌は西。場に3枚出ている。

4枚目・・・牌の数から考えるとこれが最後の1枚か。

俺は西を切る。何事も無かったかのように場は動き出す。

女、オーガと牌を切る。

どちらも5つの赤い丸が描かれている。

そして麻央が手を伸ばす。

牌を掴むと空中に放り投げる。

「何しやがる」

俺の動体視力でかろうじて見れたのは丸一つの牌。

麻央は自分の手牌を広げ高らかに宣言する。

「あがり」

「そんな馬鹿な」

俺もそう思ったよ。でもやるのが天才新麻央だ。

本当に役が出来てやがるとオーガは驚いている。

でも役は安いらしく1500点だそうだ。

上がれなかった俺達全員が払うらしい。

・・・どこに点数を形作るもの

があるんだ?

「初心者に積もられるとは思わなかったぞ」

そう言っているオーガの服の一部が光となって消えていく。

おわっ!!

よく見ると俺のまで光になって消えてるじゃねぇか。

「服を溶かされるのは久しぶりだわ」

な、なんだと。

男だけではなく女子の服まで溶かすだと!!

何その神仕様。男が裸にならないならもっと神仕様。

ガバッ。

「ガッデム」

「ごめんね、簡単には肌は見れないよ」

スカートの一部が消えてスリットみたいになっている・・・。

これはこれでエロスだな。

「にぃ、集中して」

おおっと。

妹様がなんかほほ膨らましていらっしゃる。

大変可愛いがなでなでたらもう負けてもいいやになってしまうので辞めておこう。

俺、我慢できる子。

「次も嬢ちゃんの番だ」

「ルールは詳しく教えてくれないの?」

「嬢ちゃんならもうそれなりに理解してるだろ」

俺は考えた。妹が上がりを宣言した時。手牌はどうだったのか思い出した。

雀牌は鳥の絵と北が3枚ずつ数字が書いてある牌が一二三、三四五と並んでいる。

最後に一枚あったのが丸が9個ついていた牌だ。

ここから考えるんだ。法則を、概念を、このゲームでは何を揃えるべきなのかと。

俺にわかることといえば数字は連番で揃える。漢字なら同じように三つ集める。

問題は鳴くという行為が、どのような行為になるかだ。

「まぁいい、まぐれだ。しかしまぐれでも上がられるとは」

そう言っているオーガの服が一部光に包まれる。えっ、乳首の部分が光ってるんだけど。

心配になって自分の姿を見ると脇腹のあたりが光っている。そしてその光ってる部分が消えると穴があいている。

「うお!!」

もしかしてこれは女子にも行われているのか女を見る。

しかし見えるところに穴が空いていない。

「畜生」

「あらあら、一応見えないところは消えてるよ」

「マジでか」

女には適応外だと思っていただけに心躍る。

今日から神信じちゃう。

「ふう、お前大丈夫か」

「あなた大丈夫500点じゃ派手に消えないわよ」

「・・・はっ?」

今あなたとおっしゃいました?

えっ、嘘。嘘だと言って。

俺の脳内がそれを否定したがってるから。

「言っておくがこいつはオレの嫁。スリカだ」

「がはぁ!!」

憎しみでこの鬼を殺せたらと心底思うぞ。

筋肉あふれるこの強面のやつにこんな奥さん?

死ねばいいのに。

「さて、また嬢ちゃんの番だ」

「わかった」

麻央はサイコロを受け取り放り投げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る