1章「初心者」

初戦その1

麻雀とは、数字を合わせて役というものを揃えるゲームである。

神様は、このゲームを作るとある効果を付与した。付与したものは市場に出回り既製品は存在しない。すべてが神様の手作りである。付与された効果は・・・・・・。

「続きが読めねぇ」

なぜか異世界語の文字が手に取るようにわかる。なんか集中してみると異世界語が日本語に見えるのだ。なんて便利な。つうか麻雀ってなによ。ゲームなのはわかるけどルールがよくわからない。しかし言葉に苦労しないのはいいことなんだが。

妹は、興味なさそうに俺の隣から離れない。

そして周りが妙に騒がしい。

「雀にぃ、私ここ嫌い」

先ほど彼女に教えてもらった『コリア』とかいうお店は、下の階が居酒屋、上の階は宿泊施設となっていた。ただお金がないと言ったのに後で料理持ってくるとか言われた。

何か裏でもあるのか?

「お客様・・・・・・珍しい格好ですね」

「これまた美少女・・・・・・って腕そっちに曲がりませんよまおさまぁ!」

「デレデレ禁止」

んなこと言われても美少女だぞ。希少種だぞ。

しかもまた貧乳じゃない。普乳だ。

えっ?

違いがわからない?

馬鹿め、膨らみかけと膨らんでいるでは天と地の差があるわ・・・・・・ってなんか不機嫌な顔で力がさらに強くぅ。

「がはっ」

「雀にぃはそこで寝てる」

「なんか兄妹に見えませんね・・・・・・実は恋人?」

「雀にぃ、この人いい人」

「ならこの手をはなそうよ・・・・・・ちょいいたいからぁ」

機嫌の良くなった妹は、簡単にほどいてくれた。

ふぅ、胴体と腕がお別れするかと思ったぜ。

「で、結局のところどうなの?」

「恋人です」

「普通に兄妹だ」

「雀にぃ、往生際悪い」

「無理やり既成事実作ろうとするお前の方が悪い気がするのは俺の気のせいか?」

そんなこんなで笑える展開を行ったところで机に座る。

すると料理が並んだのだった。・・・・・・それもたくさん。

何事?

「麻央、まだ口をつけるなよ」

「うん」

「そう言いつつ焼きそばめちゃくちゃくっておるやん」

兄を差し置いて全力で食べちゃっとるやん。

もう罠だろうと関係ないだろうと口に料理を運ぶ・・・・・・。

瞬間服が弾ける(気がした)だけ。

「なんだこれ超うめぇ」

焼きそば、肉まん風の何か、どれもうまい。

罠の可能性も一旦捨て去り喰らい尽くす。

十分経たずに全て平らげた。

「くったくった」

「久しぶりに量も満足」

お腹いっぱい満たした俺たちの前にごつい男とさっきの美人女性店員が座った。

・・・・・・やっぱり罠だったのか。

「焼くなり煮るなり好きにしな、ただし妹には手を出すなよ」

「ほう、潔いあんちゃんだ。だけどそれは勝負の終わった後にいいな。だしなカフス」

「あいあいさー、どーん」

と、置かれたのは緑色の四角いマット。滑り止めが施されていてついでに角は少しだけせり上がっている。そのマットにジャラジャラと小さな四角いものが無造作に出される。

「無一文の客人には、お腹いっぱいになってもらってから勝負するんだ。お腹減っていては戦ができないというだろう。そして麻雀とは頭を使うものだ」

・・・・・・これが麻雀。全く何のゲームかさっぱりだ。

「おや・・・・・・まさかその年になって触ったこともないんか」

「・・・・・・私と雀にぃは触れたことすらない」

「おっとマジですかいな。まぁ容赦なくやりますけどねぇっと」

「あなた達の席はこっちよ」

「あいよ」

俺はごつい男の前。麻央はウェイトレスの人の前。

座席の位置としては囲むようになっており俺の右隣は麻央。

左隣にはウェイトレス。前方にはごつい男。

「始まる前はこういうふうに準備するんだ」

四角の小さいものが綺麗に並べられていく。

全くわからない。この手のゲームには手を出したことは無いのだから。

とりあえず同じように並べていく。絵柄を見たが数字のよう・・・これを並べるだけのゲームか?

合計14の四角が2つほど並ぶ。

そしてごつい男は上に一つをもう一つの方に乗せる。

「俺はここの店主オーガいうもんだ」

「見かけ通りの名前かよ」

悪態つけながら俺は同じように乗せる上手くいった。

妹の方は一個ずつ丁寧に乗せている。

なんか可愛かった。

「じゃ、ちゃっちゃっと始めましょう」

サイコロが2つ真ん中に投げられる。

出目は合計で7。

「次、あなたの番よ」

「私」

サイコロを渡された麻央は同じように投げる。

コロコロ・・・・・・出目は合計9。

「親はあなたみたい。もう1度振ってください」

そう言うとウェイトレスは東と書いてあるプレートを置く。

これがなんの意味を持つかはわからないが親という言葉を聞く限り最初に行動を行うプレイヤーを示すものなのだろう。

つっても何も知らないのもまた事実。

そして負けた時の代償・・・これがわからないのも問題だ。

「そんで・・・・・・俺らが負けたらどうなるわけ?」

「おっと失敬。それを決め忘れていたな」

ごつい男ことオーガは大げさに笑い、真剣な顔でこういった。

「お前達には俺達の食材を直輸入してもらっている業者に働きに行ってもらう」

「奴隷ってことかよ」

オーガがニヤリと笑う。本当に奴隷当然のことをさせられるとしたら割に合わない。

絶対的勝利が確信できない時にやるかけじゃない。

博打がすぎるぞ畜生。だが何故かこの麻雀というゲームから離れられない。

「言い忘れていたが麻雀はとある魔術師が作ったものでな。いろいろと演出と強制力が働く。それは人の心は含まれないが待遇程度は変えられるのさ」

「ちっ、異世界の洗礼さえもハードモードか」

演出というのも気になるがこいつの言葉通りなら。

間違いなく奴隷になる。抗うことすらできずに。

俺は呼吸を荒らげた。どうするどうする。

逃げることすらできない。負けたら終わり。

なら勝つしかない。でも知らないゲームでどうやって勝つ。

無理だ無理だ無理だ。

勝てるわけがない。

「雀にぃ落ち着いて」

麻央が声をかけてくれる。

そして麻央はオーガに聞いた。

「私たちが勝った場合どうなる?」

「いいところつくな嬢ちゃん。お前達が買った場合はそうだな。俺達の家に客人として迎え入れてやるよ。多少なりとも忙しい時は働いてもらうがな」

結局働かせられるのかよ。

まぁ、忙しい時限定ならまだいい方か。

「んじゃ、決まったことだしやるぞ」

麻央がサイコロを振る。

俺達は負けるわけの行かない勝負に挑むことになった。

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