桜降る代に決闘を
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【登場人物】
サキ:24歳。元システムエンジニア。現在色々あって無職。就職活動中。
マイ:24歳。在宅ワーカー兼サキの同居人。現在は色々あって恋人へ昇格。ボードゲームが好き。
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サキの部屋には角に大きめのベッドが1つある。
これは元々マイの部屋にあったもので、サキが遊びに行った時など、よくその上に座ったり寝転んだりしていた。
「サキ、そのベット、好き?」
「んー、好き、かな。実家の頃から布団で寝てたから、ベッドってなんか良いよね」
「じゃあ、あげる」
「え?」
「その代わり、私も一緒」
「えーと、ベッドをあげるから、居候させろってこと?」
「うん。そう、それ」
「なんで?」
「お母さんが、サキと一緒ならいいって」
「あぁ……そう言うことね」
「お父さんはイヤがると思うけど」
「だろうね。まあ、マイのお母さんがいいって言ってるなら」
「うん。大丈夫」
「で、私には事後承諾、と」
「……ダメ?」
「んー、別にいいんじゃない? でも私の部屋、狭いよ?」
「うん。狭いほうがいい」
「なんじゃそりゃ……まあ、マイがご飯作ってくれるなら、私も楽だしねー」
「うん。まずは胃袋が基本」
「ん? 何が?」
「なんでもない」
そんなこんなでベッドとマイがサキの部屋にやってきた。
そして、なんやかやがあって、サキとマイは——。
「サキ、決闘しよ」
「決闘するような仲になった……って、え?」
「うん。
「なんでそこで詩的表現……? あ、それのこと?」
「そう。このゲームを、やろう」
以前、ガイスターが乗せられていた丸テーブルの上に、また違った趣のものが乗っている。
前はいかにも舶来モノといった感じの見た目だったが、今回は和風のものだった。
「へぇ、何か前のとはぜんぜん違う雰囲気だね」
「前のはドイツゲーム。これは国産ゲーム」
「あ、日本のゲームなんだ。てか、前のはドイツのやつだったんだね……」
「そう。これは、BakaFirePartyの新作」
「バ、バカ? ファイア?」
「メーカーの名前」
「そ、そうなんだ。なんか陽気な名前だね……」
「うん。楽しいよ。たぶん」
「たぶんって、まだやった事ないの?」
「サキ。私は、浮気しない」
「なんでそういう返事になるの……まあ、もう大体分かってきたけどさ」
「分かってくれて嬉しい」
「誰かとゲームしたくらいで浮気とか、別に思わないから」
「ふふふ」
「なんでニヤニヤしてるの」
「恋人っぽいと思って」
「なっ……べ、別に、そう言う話じゃなくて、価値観の話ね」
「かわいい」
「……で?」
「ので、決闘」
「いや、なんでそうなる?」
「勝ったほうが、相手に好きな事をできる」
「そ、そういう事にゲームを使うのは、良くないんじゃない?」
「別に。賭けはゲームのスパイス」
「う……意外と寛容。大体、私はそれやった事ないし」
「私も」
「いや、でも、マイはそういうの詳しいでしょ?」
「サキ、格ゲー、好き?」
「は? いや、え、何の話?」
「格闘ゲーム。好き?」
「まあ、好きだけど……マイ、やってくれないじゃん」
「このゲームは格闘ゲームです」
「いや、そんなキリっと言われても……格闘ゲームのボードゲームなの?」
「うん。だからマイもできる」
「うーん……また、絶妙なチョイスを……既になんか負けてる気がしてきたんだけど」
「まだ負けてないし、サキが勝ったら、私を好きにしていい」
「……はいはい。わかったよ。やろうか」
「!!」
「ちょ、喜びすぎでしょ……ったく、かわいいんだから」
「? なにか言った?」
「なんでもない。さあ始めようよ」
「うん。このゲームは――」
『桜降る代に決闘を』――ボードを使用して遊ぶ二人対戦型カードゲームである。
主にカードを使って対戦をするのだが、各プレイヤーの状態や戦いの場の状況などはボード上で表現される。
まずゲーム開始前にキャラクターを2柱(キャラクターは全員メガミという設定で、プレイヤーはメガミを宿して戦うミコトという存在)選ぶ。
選んだキャラクターをお互いに見せ合った上で、そのキャラクター用のカード束の中から規定の枚数分だけ好きなカードを選び出す。これを「デッキ」と呼び、ゲーム開始前にお互いがデッキを作ってから対戦をするのがこのゲームの肝となっている。
「えっと、ごめん。全然わかんない……」
「大丈夫。最初は初期デッキでやる。サキのは、これ」
「あ、かわいい。この子たちの名前なんていうの?」
「ユリナとシンラ」
「へぇ、あ、筆文字で名前が書いてあったね。達筆すぎて気づかなかった」
「私のほうはヒミカとトコヨ」
「へー、そっちもかわいいね。前のおばけもかわいかったけど、こういうのもいいね」
「……浮気?」
「ん? あぁ、かわいいって言ったから? ……妬いてるの?」
「う……べ、べつに妬いてるとかじゃ、ない」
「あらあら、まあまあ」
「もう、いいから、はやく、やろっ」
「はいはい。で、ここからどうするの?」
「間合いとライフとオーラに初期の数だけ桜花結晶を置く」
「うん。わからん」
「ここに10個、ここに8個、ここに3個、置く」
「ほいほい……この桜っぽいの、キレイだねー」
「桜花結晶」
「……?」
「おうかけっしょう」
「あぁ、はいはい。桜花結晶ね」
「うん。で、このカードが――」
『桜降る代に決闘を』は、主に「基本行動」と「攻撃カード」と「行動カード」の3種類を駆使してバトルを行う。「基本行動」では前進や後退と言った基本的な動作を行う事ができて、行動カードも基本的にはそれらと同様だが、やや強めの効果を持っている。
そうして基本的な動作を行いつつ、攻撃カードを使って相手に攻撃を仕掛けるのだが、攻撃カードには「射程距離」が存在し、プレイヤー二人の間に存在する「間合い」によって使用可能かどうかが決まる。自分に有利な距離へ場をコントロールするのがこのゲームにおいて肝要となる。
「はいはい。なるほどねー。うん、面白そう。やろうやろう」
「じゃあ、ジャンケンで勝ったほうが先手で」
『ジャンケン』「パー!」「グー」
「あ、私が先手」
「私が後手。デッキからカードを三枚引く」
「で、いらないカードはデッキの下に戻して、引きなおす。だっけ」
「うん」
「よし、これはいらないかなー」
「私はそのまま。後手は集中力が1から始まる」
「先手は0からだね」
「うん」
<サキの第1ターン>
「よし、じゃあいくぞー」
「……ばっちこい」
「お、ちょっと燃えてる」
「私が勝って、サキをペロペロする」
「うん。何されるのかわからないから、とりあえず阻止しようか……まず、行動カードの『足捌き』を使うね」
「間合いの桜花結晶が2つ、ダストへ飛ぶ」
「よし。で、カードを1枚伏せ札にして、前進!」
基本動作である「前進」は、間合いの桜花結晶を自分のオーラに移動させる。「前進」を行うためには集中力が1ずつ必要なのだが、手札を捨てることでその代わりに出来る。
ちなみにオーラは防御力のようなもので、0になると負けてしまうライフの代わりに、攻撃を受けることができるところ。
「前進するとオーラが増えて、固くなる……厄介」
「うん。だよねー。なんか、こっち強くない?」
「一応……ハンデ? でも、説明書に書いてある初期セットだから、たぶん大丈夫」
「そっか。じゃあとりあえずターン終了ね」
サキは手札を1枚残してターンエンド。ちなみにターンエンド時に3枚以上の手札を残していると、2枚になるように手札を捨てなければならない。2枚までしか次のターンに持ち越せないのだ。
<マイの第1ターン>
「私のターン。間合いが7……『シュート』で2、1の攻撃」
「えっと、オーラで受けたら2で、ライフで受けたら1のダメージね」
「うん。オーラで受けたらダスト、ライフで受けたらフレアに桜花結晶が飛ぶ」
「フレアは格闘ゲームで言う必殺技ゲージだよね。うーん、ライフで受けるのもアリかな。ライフで受ける」
ちなみにダストとは「ゴミ捨て場」のような場所で、何かによって消費された桜花結晶が飛ばされるところ。防御に使ったオーラや、必殺技である「切り札」を発動するのに使用したフレアの桜花結晶が主に送られる。
「うん。じゃあ、『バックステップ』でカードを1枚引いて、ダストの桜花結晶を間合いへ。間合いが8になる」
「げ、何それ。いいなぁ」
「で、『バックドラフト』で、相手のフレアから相手のオーラへ桜花結晶を移動」
「あぁ、せっかくライフで受けたのに……」
「3枚目に『バックドラフト』を使ったから、追加効果の『連火』で、さらにカードを1枚引く」
「うわぁ、何かやりたい放題じゃん」
ヒミカには『連火』という能力があり、三枚目以降に特定のカードを使うと追加の効果を得ることができる。
「ふふ。サキをペロペロ……楽しみ」
「今現在、だいぶペロペロされてる気がするけど……」
「カードを1枚伏せて、オーラをフレアへ宿して、ターン終わり」
基本行動は「前進」と「後退」以外にも「纏い」と「宿し」がある。纏いはダストにある桜花結晶を自分のオーラに移動させる。「宿し」は、自分のオーラにある桜花結晶をフレアに送ることが出来る。
マイは手札を1枚と集中力を1つ残してターンエンドした。
<サキの第2ターン>
「よし、じゃあ私の番だね。このターンから開始フェイズってのがあるんだよね」
「そう。ターンが始まった時に集中力が1上がって、カードを2枚引ける」
「ほいほい。じゃあ、集中力を使って前進して、カードを1枚伏せてさらに前し」
「できない。オーラがいっぱい」
「え? あ、そうか。オーラが満タンだと間合いからオーラに送れないから、前進できないのね」
「うん。だから、宿さないとダメ」
「宿し、か。うん、じゃあさっき伏せたカードの分で宿し……っと。で、ついでにもう1枚カードを伏せて前進して、終わり」
「さっきの『シュート』をオーラで受けてたら前進できてた」
「あ、なるほど。そういう事も考えないといけないのね。へぇ~」
サキは手札を1枚残してターンエンド。間合いが2つ詰まり、フレアが1つになった。
<マイの第2ターン>
「私のターン。集中を上げて、2ドローして――」
「ドロー?」
「カードを引くって意味。カードゲーム用語、かな」
「へぇ~」
「間合いは6……ギリギリいける。いけ、『フルバースト』!」
マイが使用した『フルバースト』は「全力」という属性を持っており、それを使用すると他の行動が一切できなくなるし、他の行動をした後では使用することができない。
「オーラ3か、ライフ1かぁ……よし、じゃあさっきのアドバイス通りにオーラで」
「フルバーストはオーラとライフ、どっちにもダメージを与える」
「うぇ、まじ? ひどくない?」
「そういう技だから。ターン終わり」
「あ、でもそれしかできないんだね。じゃあ強いのも納得……なのかなぁ」
マイは手札を2枚残し、集中力も2つ残してターンエンド。マイの『フルバースト』によってサキのオーラは2になり、ライフは7となった。
全力カードの使用時は「基本行動」さえできないため、集中力やカードを余らせてしまう事がある。
集中力は2までしか増えないので、現時点で2になっているマイは、次の開始フェイズに増える集中力を無駄にしてしまう流れとなっている。
<サキの第3ターン>
「サキの番」
「あ、うん。えっと、集中上げて、カードを引いて……間合いは6かぁ」
「オーラが3減ったから、3歩前進できる」
「だね。じゃあ集中1とカード2枚を伏せて、3歩前進して、終わり」
サキは手札を1枚だけ残し、それ以外の全てを前進に使ってターンエンド。
<マイの第3ターン>
「私のターン。集中はもう2になってるから上がらない。2ドロー……は、デッキがなくなってるから、まずライフを1つフレアに送って、デッキの再構成をする」
このゲームのデッキは7枚しかなく、すぐにデッキがなくなる。デッキがなくなるとライフを1つ支払う事で自分が使用したカードや伏せ札を混ぜて再びデッキを作ることが出来る。
「あれ、私のデッキはまだあるのに……あ、途中でカードを引いてたから早いんだね」
「うん。新しく作ったデッキから2ドローして、間合いは3……ちょっとしんどい」
「そうなの?」
「ヒミカは遠距離攻撃タイプだから、近づかれると攻撃できない」
「なるほどね」
「だから……選手交代。カードを1枚伏せて後退する」
基本行動の「後退」は前進とまったく逆の事を行う。つまり、自分のオーラを間合いに置くのだ。
「間合い4で、トコヨの『梳流し』。ライフに1ダメージ」
「あ、違う子だ……あれ、オーラのダメージは?」
「この攻撃はオーラで受けれない」
「うあ、マジ? うーん……しかもそれ、攻撃後にデッキに戻るんだよね」
「うん」
「つ、強いね……あ、でも、対応って書いてあるカードはこの時に使っていいんだよね?」
「!? う、うん。つ、使うなら今――」
「じゃあシンラの『反論』を使うね、間合いは4だから問題なし、と」
サキが使用した『反論』は、相手が攻撃カードを使用したときにも使える攻撃カードで、相手のカードよりも先に発動する。『反論』はオーラにのみ1ダメージを与える攻撃カードだが、その攻撃後に相手の使った攻撃カードを無効化する。よってマイが使った『梳流し』の攻撃後の効果である「デッキに戻る」も発動しなくなる。
「『梳流し』が無効になって……カードを1枚引く……」
「あれ、それだと相手に有利だよね。止める代わりにプレゼントって事かな」
「それもあるかもしれないけど、このゲームはデッキがなくなるごとにライフが減るから、たぶんカードをたくさん引くのは危ない……かも」
「あ、そう言えばそうだった。調子良くカードを引ていくのもちょっと危ないんだね」
「うぅ、私の『梳流し』が……サキ、ずるい……」
「ふふ、なんか格ゲーやってる時みたいになってきたね」
「……ちがう。まだ負けてない」
「うふふふ」
「く、いい気になってる……カードを2枚伏せてオーラを2回纏って、ターン終わり」
マイは手札を全て使いきってターンエンド。本来であればオーラを纏うのに使用したカードは『梳流し』から連続使用するためのものだったのだが、その起点となる技が防がれてしまったのだった。
<現在の状況>
間合い:4
サキのライフ:5 オーラ:5 フレア:2 集中力:0
マイのライフ:7 オーラ:2 フレア:2 集中力:2
一見、マイの優勢にも見えるが、遠距離がメインのマイにとって間合い:4は圧倒的に不利な状況。
なぜか集中力を使おうとしないマイに何らかの思惑がある様子でもある。
<サキの第4ターン>
「よーし、じゃあ集中上げて、デッキがなくなってるからライフを1つ払ってデッキの再構成をして、2ドローして、集中1で宿して、カード1枚伏せて前進して、終わり」
「なんか、慣れてる……」
「うん。結構慣れてきたかも」
ゲームに順応してきたサキはフレアを2に増やし、間合いを1詰め、カードを1枚残してエンド。
あえてガムシャラに詰めずにカードを残す辺りが慣れてきている事を感じさせる。
<マイの第4ターン>
「私のターン。集中は2だから上がらなくて……く、無駄になってる……」
「マイって全然、集中力使わないよね」
「トコヨのために取っておいたけど、全然使えてない」
ヒミカの『連火』のように、トコヨにも『境地』という能力があり、集中力が2の間は一部のカードの力が強くなるのだ。だが、マイのデッキはヒミカが主体のため、あまりその能力は活かされていない。
「うーん、やっぱりそっちの子たちって難しそうだね」
「べ、別に難しくない。作戦だから」
「ふーん」
「む……とりあえず2ドローして……集中力を1つ使って前進して、『跳ね兎』!」
「あ、初めて見るやつだ」
「間合いが2以下の時、ダストの桜花結晶を間合いに2つ送る」
「へぇ~緊急回避みたいな感じかぁ」
「その後に集中を1つ使って後退して、『バックステップ』でカードを引いて……あ」
「あれ、デッキ、ないね」
「さっきの『反論』……! サキ……ズルイ……!」
「いやいやいや、そんなのぜんぜん狙ってないから、まぐれだから」
「うぅ、カードが引けないから、代わりにオーラをダストへ……」
実は、カードを引く際にカードが引けない場合、オーラかライフに1ダメージを受けなくてはいけないというルールがある。そのため、マイはオーラを1つダストへ送ることになった。
「うわ……なんか、大変そうだね……」
「で、『バックステップ』の効果で、ダストから間合いへ1つ送って、間合いが6になって……終わり……!」
「お、一気に間合いが6に」
「ふ、ふふ……」
マイは一時的に前進してオーラ増やしつつ『跳ね兎』の条件を満たして間合いを2、『バックステップ』で1、後退して1、最終的に間合いを6まで離すことに成功した。
だが『バックステップ』のミスで無駄にオーラを失ってしまっているのは痛い。
<サキの第5ターン>
「私のターンだね。えーっと、集中を上げて、2ドローっと……うん、だいぶ慣れてきたかな?」
「サキ、楽しそう」
「うん。面白いよ、これ。ちょっと難しいけどね」
「サキが楽しいと私も嬉しい」
「え、あ、うん……あ、ありがとう……?」
「ふふふ」
「……なにこのかわいい生き物」
「?」
「な、なんでもない。よし、じゃあ『足捌き』で間合い2つをダストに送るね」
「う……」
「そして集中力を1つかって宿して、カードを1枚使って前進で、終わり」
サキはカードを2枚残してターンエンド。『足捌き』はオーラに桜花結晶が溜まっていても関係なく間合いを詰める事が出来るため、遠距離タイプには非常に厄介なカードである。
<マイの第5ターン>
「一気に間合いが3……『足捌き』、ズルい」
「ほらほら、マイのターンだよ」
「わ、わかってる。集中を1つ上げて、ライフを1つ払ってデッキを再構成してから、2ドローして、うぅ……集中力を1つ使って、オーラを纏って、ターン終わり」
マイは引いたカードを使わず、オーラを1つ纏っただけでターンエンド。この時に引いたカードは『フルバースト』と『バックドラフト』で、どちらも現在の状況には即していなかった。
<サキの第6ターン>
「私のターンで、集中を上げて、カードを二枚引いて……カード4枚と集中力1つか。じゃあ集中1で宿して、カード1枚伏せて前進して、マイのオーラって1つだよね?」
「ううん。100くらいあるかも」
「うん。1だよね。じゃあ、間合い2だから、『斬』を使うね」
「オーラ3、ライフ1……ライフで受ける」
「で、『一閃』を使うね」
「ライフに2ダメージ……」
「うん。とりあえず、ここで終了かな」
サキはカードを1枚残してターンエンド。
重い連続攻撃は1ターンでマイのライフを3つも削っていった。近距離タイプの本領発揮である。
<マイの第6ターン>
「集中上げて、2ドローして、カードを1枚伏せて……前進、する」
「え!?」
「もう1枚カードを伏せて、前進して、間合い0で切り札『クリムゾンゼロ』!」
「おぉ、遠距離タイプが超接近戦の切り札。燃える展開だね」
「フレアから桜花結晶を2つダストに送って、発動するっ」
「オーラ3か、ライフ2で、対応ができない、ね。よーし、じゃあライフで受ける」
「……オーラで受けない?」
「うん。ちょうどライフが3になるからね~」
サキの使っているユリナは、ライフが3以下になると一部のカードが強化されるスキル『決死』を持っている。サキはそれを使うためにライフでダメージを受けたのだった。
「その余裕、後悔する……。カードを1枚伏せてオーラをフレアへ宿して、ターン終わり」
マイはカード1枚と、集中力を1つ残してターンエンド。クリムゾンゼロを使用したものの、フレアはまだ5つ残っている。
<現在の状況>
間合い:0
サキのライフ:3 オーラ:5 フレア:6 集中力:0
マイのライフ:3 オーラ:1 フレア:4 集中力:0
サキの連続攻撃で大きくライフを減らしたマイと、オーラを維持したまま近距離に持ち込んだサキ。
――あとは互いの「切り札」次第と言った状況である。
<サキの第7ターン>
「集中上げ、2ドロー……あ、デッキが1枚しかないね。じゃあ、ライフを1つフレアに送って、デッキを再構成して、2ドローっと。で、間合いが0だから、集中力を使って後退して……」
「間合い……1……」
「切り札『月影落とし』!」
「オーラ4、ライフ3のダメージ……」
「1しかオーラがないから……勝った!?」
「それ、フラグ……対応で、切り札『久遠の花』!」
「え、何それ」
「相手にライフ1のダメージと、どんな攻撃も無効化する。フレア5も使うけど……」
「えー、私の『月影落とし』も5つ使ったのにー!」
「だから後悔するって言った」
「あー、ライフ1ダメージ受けて……うわ、残りライフ1だ」
「ふふふ、勝った……」
「それ、フラグだって自分で言ってなかった?」
「あ」
「私のカードはまだ3枚もあるからねっ」
「う……」
「まずは『逆討ち』! 『決死』の効果でオーラ3、ライフ2のダメージ」
「ラ、ライフで受ける」
「さらに今引いてきた『斬』で、オーラ3、ライフ1のダメージ!」
「あ、あ、私のライフが……」
「ライフが0になったから、私の勝ち、だよね?」
「…………負けました」
「やった!」
<サキの勝利>
「くやしい……」
「あー、面白かった。最後の必殺技が止められたの、ちょっとだけ焦っちゃった」
「サキとのキャッキャウフフが、めくるめくピンクなワールドが」
「何をするつもりだったんだか……まあ、そんな不埒な野望は砕けたということで」
「サキが私を好きにする。そう言う約束」
「ん? あぁ、そう言えば私が勝ってもそう言う話だったね」
「できれば、痛いのはやめてほしい……」
「何を想像してるのよ……あ、じゃあ、もう一回やろうよ、これ」
「別にいいけど、いいの……?」
「好きにしていいんでしょ? じゃあ、ゲームしようよ。楽しいし」
「うん……ありがとう」
「あ、でも、そんなに何かして欲しいなら……」
「?」
「今日、一緒に寝る時にゆっくり聞いてあげる」
「……っ!?」
勝手にやってなさい。
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