【12話】 テールライト ヘッドライト

 

「あーっ! だめらしょうもーん! ルーリィがやるのーっ」


 

 俺とルーリィは、大きな湖のほとりに停車していた。


 

 そこで、ルーリィが俺の身体を洗ってくれているのだ。


 


「でも、ルーリィも疲れたろ? 俺も手伝うから」


「だめーっ! ルーリィが、らしょうもんにやってあげるのー!」


 

  もうっ! あわあわだらけで、幼女エルフ、かわいい!


 

「~♪」


 

 ルーリィはらしょうもんの歌的なものを口ずさみながら、俺を濡れた布でふきふきしてくれる。


 

 手の届かないところは、俺がマニュピレイトアームで、ルーリィを持ち上げてやる。


 


 湖畔の浅瀬、俺のタイヤをゆるい波が洗う。


 小魚が、つっついてくる。


 

「~♪」


 

 ルーリィ、洗車が上手だなー。


 

「疲れたら、やすみながらでいいんだぞ?」


「うんっ」


 


 ルーリィを補佐するかたわら、俺は【サイハティーン】までのルート確認を続けた。


 


 ルーリィを狙う魔王、ベルキオンを轢いてから、3日経っている。


 

 旅は道連れ、世は情け。


 

 ――だが、ベルキオンはこの異世界に転生して、旅を続けるうちに、きっとどこかで道を踏み外してしまったんだろう。


 

 でも、俺はルーリィを送り届ける道を間違うわけにはいかない。


 

 すべての道は、すべての場所に通じている。


 

 どこへでも行けるからこそ、どの道を進むかで、人生は決まる。


 

「おわったー!」


 

「ぴっかぴかになったなルーリィ!」


「うんっ」


 

 サイハティーンの姫、エルフ幼女のルーリィ。


 

「ねえねえ、らしょうもん!」


「どうした? ルーリィ」


「みずうみのまんなかに、もりがあるよ! いってみたーい!」


「いいね。お昼はあそこで食べよう」


 

 ルーリィが指差す湖の真ん中。そこに、ぽつんと小さな島がある。


 

 俺はカーナビで、スキル一覧を見返す。


 

 『足回り』の【ホバーモード】を、レベル5くらい取得すればいいかな?


 

 なにしろ、オルガネーシャの魔王軍の魂を吸い込んだ魔王ベルキオンを轢いたことで、

 俺の今のレベルは300を超えている。


 

 スキルポイントはもろもろのボーナスを含めて、350ポイント以上、あるわけで……


 

「よし! ルーリィ、あの島まで行ってみよう!!」


 


「おー!」


 


「【ホバーモード】おーん!」


 

 タイヤが引っ込み、ホバークラフトの巨大な枕みたいなものが登場!


 


 お゛お゛お゛お゛おんっ! お゛んっ! お゛お゛お゛おおおおん! 


 


 にゃん◯ゅうがお姉さんに電動マッサージ器のスイッチを切ってもらえないわけじゃない。


 

 俺の巨体が、湖面を爆走している音だ!!


 


「らしょうもん、すごーいっ!」


 

 窓を開けて身を乗り出したルーリィの髪が、風になびく。

 俺はそれを、マニュピレイトアームでささえてやる。


 


 サイハティーンまでには、どうやらいくつもの難所がありそうだ。


 


 でも、きっと同じくらい、ルーリィにとって、素敵な場所があるはず。


 


 

 ルーリィを故郷に届ける旅を続けよう。

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転生したらトラックだった件 ~魔物を上手に轢(ひ)けるかな? 奴隷エルフ幼女と征く無双ダンプカー異世界スロードライブ~ おかゆまさき @okayumasaki

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