【3話】 いきなりピンチ!? 轢(ひ)けない敵!?

 

 【キフォンの森】

 

 

 という表示が、くっきりカーナビに出てる。

 

 まじでか!

 

 

 まじだ! 縮尺いじると、全部周辺地図がでるんだが……!!

 

 

 まさかカーナビが異世界にも対応していたなんてな……。

 

 

 地図をいじくってわかったことだが、

 明らかにここは日本でもないし、地球でもない。

 

 なんか、ハート型の巨大な大陸を、真ん中で真っ二つにしたような世界だ。

 

 

 で、俺達はハートの右片の、ちょうど中央、さらにちょい右あたりの森にいる。

 

 

【キフォンの森】の、さらに端っこが、

全身トラック野郎俺と奴隷エルフ幼女ルーリィの現在地だ。

 

 

「じゃあ、ここを、こうすれば……」

 

 

『目的地を入力してください』

 

 

「シャベッタァァアァァアアア!!」

「しゃべったぁあああああああ!」

 

 

 ルーリィも俺の真似をして叫んだ。

 いや、もうさっきETCとかしゃべったんだがな。

 テンション上がって、ついな。

 

 

「ルーリィ、故郷の名前はわかるか!?」

 

 

「わかる! さいはてぃーん!」

 

 

 さ・い・は・てぃ・ー・ん、と!

 

 検索!

 

 

『ルート検索しています。     完了しました』

 

 

「案内、開始!」

 

 

『目的地までの予想到着時間は、80日後です』

 

 

「マジでか!!」

「まじでかっ!」

 

 

『目的地の現在の天気は、晴れ』

 

 

「ルーリィの家、晴れてるってよ!」

「やったー!」

 

 

『実際の交通規制に従って、運転してください』

 

 

「了wwwww解wwwww」

 

 

 長い旅になりそうだぜ!

 

 

「じゃあ、ルーリィ、出発だ!」

「しゅっぱつだー!」

 

 

 では、エンジン始動!

 

 

 ぎゅんるるる、ふぉす、ふぉす、ずもももももも!

 

 

「わああああああっ!」

 

 

 エンジンの振動に、大喜びのルーリィ。

 

 

「では、羅生門、発進っ!」

「はっしーん!」

 

 

 お゛お゛お゛お゛おんっ! お゛んっ! お゛お゛お゛おおおおん! 

 

 

「おおおおおおおおーん! おおおおおおおーん!」

 

 

 ルーリィは吠えなくていいんだが?

 

 

 

『次の大木を、左折です』

 

 

「左折、OK!」

「おーけー!」

 

 

『ピロピロピロ 左折します、ご注意ください。ピロピロピロ 左折します、ご注意ください。』

 

 

 旅は順調に始まった。

 

 

 途中、カーナビに、リンゴのような木の実のマークが出ていたので、試しに停まって調べて見た。

 

 

「これ、桃か?」

「ももか!」

 

 

 なんかいい匂いのする果物が木になっていたので、いっぱいもいで、ルーリィのご飯にした。

 

 

「らしょうもんも、たべる? おいしいよ?」

「ルーリィがいっぱいおたべ?」

「うん!」

 

 

 座席もルーリィもべったべたになった。

 

 

 

 奴隷だったエルフ幼女を乗せた俺は、

 森の中の道を、ゆっくりと進み、やがて平原に出た。

 

 

『まっすぐ15キロメートル、道なりです』

 

 

「了解」

 

 

 満腹になったルーリィは座席で眠ってしまっている。

 

 

『進行方向、事故による車線規制があります』

 

 

 は?

 

 

 見れば、道なりに遠く、細く黒い煙がでてる。

 

 

 事故?

 

 

 燃えてる?

 

 

 きゅっきゅーん、ぷしゅ、ぷしゅ、と、一旦停車した時だった。

 

 

 ガクンッ!!

 

 

 はぁッ!?

 

 

 車体が不意に揺れた。

 

 

 べきべきべきっ!

 

 

「お、や、やめろぉおおっ!!」

 

 

 上。

 頭上だった。

 

 

「なんだぁあっ!?」

 

 

 俺は、頭の金属部品をつかまれていた。

 

 大きく羽を広げた、モンスター!

 

 

「ワイバーンッ!?」

 

 

 俺はとっさに急発進!!

 

 

 お゛お゛お゛お゛おんっ! お゛んっ! お゛お゛お゛おおおおん! 

 

 

「ひぅっ、なになになにっ?」

 

 

 ルーリィが起きた!

 

 

「シートベルト! シートベルトだルーリィ!」

 

 俺は座席横からしゅるしゅるとシートベルトを伸ばし、

 ガッチリとルーリィを座席に固定した。

 

 

「つかまってろルーリィ!」

「わかった! らしょうもん!」

 

 

 でかいコウモリとトカゲを合わせたような、

 ワイバーンっぽいモンスターはいったん俺から離れ、

 ぴったり上空をついてくる!

 

 

 

 やろう! ひき殺してやる!!

 

 

 

「……ん?」

 

 

 だが、俺はこの時、当たり前のことに、思い当たる。

 

 

 まずい! 空はだめじゃね!?

 

 

「はッ!」

 

 

 ドォウウウウンッ!

 

 

 咄嗟に右に避ける俺!

 さっきまで俺がいた地面が爆発し、火柱が上がった!

 

 

 やべえ! あいつ、火の玉吐いてくるんだが!!

 

 

 おいこれ、

 どうすりゃいいんだー!

 

 

 俺は道を外れ、平原を爆走。

 空飛ぶモンスターから逃げ回る!

 


「うおわぁああああ-!」

「きゃあああああーっ」

 

 

 ドォウウウウンッ!

 

 ドォウウウウンッ!

 

 

 次々と火の玉が着弾!

 

 なんとか火の玉を避け続けるが、

 あいつ、なんかだんだん、上手くなってないか!?

 

 そろそろ当たっちゃいそうなんだが!

 

「くそっ!」

 

 

 俺は、舞い上がった土砂で汚れたフロントガラスに、

 ウィンドウォッシャーをぶっかけ、くいっくいっとワイパーで綺麗にする。

 

 

「こわいよおお!」

 

 

 くそっ! ルーリィを泣かしやがって!!

 ぽたぽたっと、エルフ幼女の涙が座席にこぼれ、吸い込まれていく。

 

 

「……んっ?」

 

 

 はっ! もしかして!!

 

 

「うぉおおおおおおッ!」

 

 

 俺は加速! 

 ぎゅんぎゅんとワイバーンを引き離し、

 

 

「せいいいいい!!」

 

 

 平原の真ん中で方向転換!

 

 空の上のワイバーンと向かい合う。

 

 

「くらえええええ!!」

 

 

 俺は、ウィンドウォッシャーの射出口を、上空のワイバーンに向け、

 

 

 

 「ウィンドウォッシャー・カッタァァァーッ!」

 


 

 最大出力で、放出だぁあああ!!

 

 

 ずぱぁあ!!

 

 

 よっしゃああ! 羽を切り落としてやったぜぇぇ!

 

 

 ワイバーン、墜落ゥゥゥ!!

 

 

 いッけー!

 

 

「これで、終わりだぁあああッ!!」

 

 

 

 お゛お゛お゛お゛おんっ! お゛んっ! お゛お゛お゛おおおおん! 

「おおおおおおおおーん! おおおおおおおーん!」

 

 

 ぐもももももももーっ!

 

 

 ワイバーン、上手に轢けましたぁぁぁあぁぁ!!

 

 

 そして

 

 ぱぱぱんぱんぱんぱん、ぱっぱぱーん! と、

 

 車内に響き渡るファンファーレ!?

 

 

 「どした!?」

 

 

 カーナビが俺の質問に答えてくれた。

 

 

『レベルアップしました。スキル割り振りをしてください』


 

 

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