第6話 河童の正体
「バケツは100円均一で買えるような、ありふれたもの。他に気になるようなものは落ちていない。相当警戒しているのか、砂地を避けて、足跡が残り難い草地を移動している」
「屈んでいたんだろうけど、背は小さく見えたな。灯りがないせいで、容姿は全くだったが」
「私の
梨沙は目を見開いて
「自宅の灯りは一切点けないんだったか。訓練の
玲子は半笑いで、黙考する冬子の横顔を眺めた。
「
「そうね。溺死事件の方についても、現場に残された足跡が犯人のものであるとすれば、最初からカワラベの祟りなどではなく、人為的なものだったということになるわ。それは、実に悲しむべきことだけれど」
「これからどうしましょう?」
「調べたいことが一つ、準備しなければならないものが一つ、あとは、明日の調査次第でカワラベの正体を暴けると思うわ」
「本当ですか!?」
「スピード解決を都市研の売りにしていけそうだな。まぁ、便利屋ではないんだが」
「ホンモノの都市伝説に巡り合うためであれば、便利屋にでも何にでもなるわ。大事なのはその試行回数を最大化すること。そのためには、限りある時間を有効に使わなくてはならないわ」
「なるほど、なるほど……」
「遅くなってしまったから、りさぽんは車でご自宅まで送るわね」
「えっ、車ですか?」
「あと3分以内に着くはず。予め連絡はしておいたわ」
「1秒でも遅れたら減給だからなあ。トーコは身内には厳しいんだよな」
「心外だわ、レイレイ。約束を守れなければ、制裁が下るのは当然の摂理よ」
梨沙は二人の話についていけずに、右往左往していた。
「おお、減給回避か」
川沿いで立ち往生していた冬子たちのもとに、一台の車が停車した。
「さあ、乗って、りさぽん」
「は、はい……」
しどろもどろになりながら、梨沙は玲子と共に後部座席に乗り込んだ。
「お疲れ様です、冬子様」
「ご苦労様。今日は先に梨沙さんをご自宅までお送りするわ」
「
冬子は助手席から後ろを振り返り、梨沙の住所を訊きとると、すぐさま車は発進した。
「あの、運転手の方はどのような……」
梨沙は、隣で居眠りをしかけていた玲子に話しかけた。
「ん? あぁ、トーコのところの執事で、
「そうね、レイレイと神園の二人に武術で敵う相手は、おそらく日本にはいないでしょうね」
「冬子様、あの者は?」
神園は数100m先の異変に気がつき、冬子に意見を求めた。
「減速しなさい、神園。嫌な予感がするわ」
「畏まりました」
神園は、遥か遠くの人影に接近する前に停車できるよう、速度を調整した。
「しつこいやつだな……」
「えぇ。どうやら、例のカワラベの仕業のようね。りさぽんはこの目隠しをして、いいと言うまで外さないこと。いいわね?」
「は、はい……?」
車を一度停止させ、梨沙を除く三人は下車して、道路上のそれを見た。
草陰から現れた人影は既になく、道路上のそれを放置したのがその人影であることは明らかだった。
「河童の正体について、諸説あるけれど、そのうちの一つは、人間の水死体を見間違えたものではないかと言われているわ」
神園は警察への通報を済ませると、不審人物が未だ潜んでいないかと、警戒態勢に入っていた。
車のヘッドライトに照らされ、道路上に転がっていたそれは、精巧な河童の人形でも、動物の
皮膚は緑色に変色し、頭髪は
「リサが見たら
「えぇ。これで、ますます
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