第2話
数瞬気が飛んでいたのだろうか、蒼弥が気がついたのは体中に突き上げてくるような、ドシンという衝撃と耳をつんざくような金属が擦れるような音を聞いた時であった。
ふらふらする頭を振りながらあたりを見回してみると、蒼弥から十数メートル離れた前方の雑木林の中に大きな穴が空いていた。
焦点が合わない目で、その穴と穴を空けたであろう物体が降ってきた空とを交互に見比べ自分が何故ここにいるのかを考える。
「あっ!」
記憶がつながりUFOが落ちたのだと思った。だが肝心のUFOはどうなったのだろうか目の前の穴は横幅は大きいが深さはあまりないように見える。
「いったいUFOはどこに……」
周りを見渡しながらUFOが落下して作ったであろう大穴へと向かう。が、その途中で何かを踏みつけて転倒した。
「いてっ、いったいなんなんだよ」
転んだ足元を見ると、直径五センチほどの石のようなものがあった。その石をよく見てみると微かに銀色に光っており、自然に出来たものではないことがうかがえた。
「これは、いったい?」
不思議に思いながらも、もしかしたらUFOの残骸かと思いその石をズボンのポケットにねじ込んだ。
そして、改めて大穴へと向かった。
「やっぱりなんにも無いか……」
穴の淵に座り込んで穴の中をのぞき込んでみるが地面がえぐられまわりの木々がなぎ倒されている以外、なにもなかった。
「落ちた衝撃でバラバラになったのかな」
そうつぶやき、ほかの場所を探してみようと立ち上がろうとした瞬間だった。
「振り向かないで!」
突然背後から女の子の声が聞こえた。そして、頭にゴツッと鉄のような硬く冷たい感触が当たった。
「あなたは今日、この場で何も見なかった。普段どおりに生活をして、普段どおりに眠りについた。そう誓えるのなら無事に帰ることができるけど、どうしたい?」
「なっ!?」
振り向こうとするが、後頭部に当てられたモノがさらに強く押し付けられ首の動きを制される。
「振り向くなと言ったはずよ?それとも日本語の通じない密入国者なのかしら?密入国者なら問答無用で頭に大きな穴が空くことになるけど?」
「いえ、日本人です」
唐突に起こった自体に目を白黒させながらも、蒼弥はなんとか少女の質問に答えた。
「よろしい、それじゃ私の言った事は分かるわね。返答はイエスかノー以外認めないわ、今日見たことは全て忘れてこの場所に来たことも記憶から消しなさい。さぁ、返答は?」
少女が早口にそれだけを述べ最後にカチリという音が背後から聞こえた。
「い、イエス」
喉がカラカラに乾き、うまくしゃべれた自信は無いが、蒼弥はなんとかその言葉を紡ぎ出した。
「よろしい、今日見たものは忘れなさい。もちろん他言は無用。もし、それが守れないようなら・・・・・・」
後頭部の感触がさらに強くなる。
「わ、わかりました、誓います。今日は何も見なかったし、この話は誰にも言いません」
「うん、よろしい」
蒼弥の頭から鉄の冷たい感触が消えた。
「それじゃ、決して振り返らずに、まっすぐ家に帰りなさい」
足音が何度か聞こえ、少女がすこし後ろに下がったのがわかった。
「本当に帰っていいのか」
立ち上がり、両手を上げながら振り向かずに少女に確認する。
「私は気が短いの、さっさと消えて、ごお、よん、さん・・・・・・」
ぜろになったら撃つぞと言外に言っているような威圧的な声で少女はカウントダウンを始めた。
「うわぁぁ……」
蒼弥は我を忘れて駆け出した。目の前の大穴に転がり込み、それを登って雑木林をがむしゃらに走る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます