第5話 結合(5)

「ユ...ユナ」


セツナは、自分の手を引くユナの力が思ったより強いことに驚いた。


「ユナ、そんなに強く引っ張らなくても」


「えっ、あっ、ごめんなさい」


慌てて繋いでいたセツナの手を離した。しかし、何故自分がセツナの手を強く引いてしまっていたのかすぐに分かった。


「なんだろう...いつもと森の雰囲気が違うような気がする」


「森の?」


「うん...森の草木たちが騒がしいっていうか...ううん、草木たちだけじゃなくて森の動物たちもいつもと違う」


「俺にはさっぱり...」


辺りを見回し、草木の音を聞いてはみたがセツナは特に何も感じられなかった。

その時である。遥か後方のさっきまで自分がよしかかっていた大木の影辺りから、こちらを睨む悪意のような気配を感じたような気がした。


「セツナさん、少し急ぎましょう...」


「あぁ...」


再び町へと歩を進めながら、セツナはもう一度後ろを振り返ったが、そこに気配は感じられなかった。


(さっきのは一体...凄く冷たい視線だったような...)


二人は暫く無言で歩き続けた。

どれくらいの時間を歩いただろう。森を抜け、辺りの空気感が変わるのをセツナは感じた。


「着いたよ、セツナさん」


目の前に町並みが広がっている。古びてはいたが寂れたものではなく、そこに住む人達の賑わいや活気が溢れていた。


「さっ、行こ!」


ユナはセツナの背中を押して町へと招き入れた。


「おっ!、ユナちゃん。相変わらず元気そうだね~」


「ありがと!」


「ユナちゃん、頼まれてた生地が手に入ったよ」


「じゃぁ、後で取りに行くね!」


「また森に行ってたのかい?あそこは危ないから近づいちゃ駄目よ」


「はーい」


「その子は?ユナのお友達かい?」


「うん!」


町の奥へと進むなか、沢山の人がユナに話しかけてきた。町人との会話からユナはここで大切にされてるんだと感じられた。


町の外れまでやってきた。さっきまでの活気は一切なかった。

少し先にくすんだ緑色の人など住んでいそうにない三角屋根の家が寂しく佇む。

その佇まいは来るものを拒んでいるようにも感じられた。

屋根の尖端にはカラスが不気味な眼差しでこちらを睨んでいた。


セツナとユナが近付くと、妖しい羽音をたてて飛び去っていった。


飛び去るカラスを見つめていたセツナは、軽い目眩を覚えた。


辺りは薄暗くなり、体に感じる空気が少し冷たく感じた。

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