第3話 結合(3)

金色のうねりがかった髪が風に靡くのを右手で押さえ、彼女は言った。


「あの~、私の顔に何か?」


「えっ、いや別に…」


セツナは、彼女の美しい顔をまじまじと見つめていた事に恥ずかしさを感じて、顔を赤らめて俯いた。


そんなセツナの仕草にクスッと笑って彼女は更に続ける。


「ところであなたは…?」


「あっ、俺はセツナ…」


「セツナさん…私はユナ。森を抜けた向こうの町から来たの」


ユナは後ろを振り返り、自分が今走ってきた方向を指した。

そして、思い出したように急にセツナに謝る。


「ていうかごめんなさい!ぶつかった事まだ謝ってなかった」


ユナはこちらを振り向きざまに頭を下げた。

金色の髪が重力に反するようにフワッと宙を舞い、空からの光を吸収したかのように光輝いて見えた。


慌てて謝るユナの姿がとても滑稽に見えたのと、人のよさが滲み出ている何とも言えない態度にセツナの表情が弛む。


何気なく見上げた空は、雲を蹴散らすように青く澄んだ色をしていた。


「あっ…空が晴れてく」


どんよりとした灰色の雲は消え、木々の隙間から太陽の光が木漏れ日となって幾筋も大地へと降り注ぎ、森全体が幻想的な雰囲気に包まれた。


何故だかセツナは漠然とした不安に襲われた。


「この場面…確か前にも…」


既視感のような感覚が一つの原因ではあるが、必死に考えてみても自分がセツナという事以外、何も思い出せないことに焦りを感じたからだ。


自分は何処から、なんの目的で、何処に向かっているのか。

澄み渡る空とは裏腹に、どうしようもない黒い孤独感がセツナを覆いはじめた。

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