第2話 結合(2)

鳥たちの囀りが森を谺していた。


セツナは方膝を立てて、大木に寄り掛かる様に座っていた。

驚いたように辺りを見回し、鬱蒼と生い茂る木々の中に自分がいることに気付く。

葉の隙間から見上げた空は、相変わらず灰色でどんよりとしていたが、雨は止み、雷もおさまっていた。


(...えっ?これは一体.....)


自分に何が起きているのか全く分からなかった。自分がどうしてここで座っているのか、今まで何をしていたのか、記憶が曖昧に感じた。


(なんなんだ...)


こめかみに右手を当て、必死に何かを思い出そうとしていた時に、目の前を優しい光がユラユラと通り過ぎていった。


何かが通り過ぎていった方へ目を向けると、幻想的な七色に発光する蝶が、吸い込まれるように森の奥へと翔んでいくのが見えた。


セツナは立ち上がり、蝶が翔んでいった方へ向かおうとしたとき、突然後ろからの衝撃を受けた。


「痛っ!」


「いったーい!」


セツナはその衝撃で前に倒れそうになるのをなんとか堪えた。自分の声と重なるように誰かの声が背中越しに聞こえた。


セツナが振り向くと、頭を押さえ、尻餅をついた格好で呻いている女の人がそこにいた。


「あの、大丈夫?」


セツナは女の人に手を伸ばした。


「はい、すみません...」


女の人は一瞬躊躇したが、セツナの伸ばした手を掴んで立ち上がり、服についた土を払う。


「ありがとうございます」


白いローブに身を包んで、ニッコリと微笑む顔はとても綺麗で、彼女を見たセツナは、まるで女神だと思った。



灰色だった空に、ほんの少しだけ青空が顔を出していたのをセツナはまだ知らない。

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