最悪過ぎる異世界ライフ

シュタイン

第1話 夏休み

ここはとある田舎。俺は、小学校時代からの旧友3人と、近くの公園で久しぶりに遊んでいた。

「あぁ〜……あっちぃなぁ〜…」

この金髪でピアスをつけているチャラ男は樋口五郎。頭が悪い代わりに、運動はよく出来るスポーツマンだ。

「仕方ないよ。なんて言ったって今日は32度だからねぇ」

この黒髪でメガネをつけていて、如何にも優等生らしい男は秋澤孝汰。実際に頭が異常なほどいいから、驚きだ。

「こんな暑い日に受験勉強なんてやってられねぇぜ。なぁ?弘樹」

山本弘樹。俺の名前だ。最近は少し弾けてしまって、髪を青く染めた。というのは嘘で、青い髪は生まれつきだ。全く……どういう遺伝子をしてるのやら。

「孝汰はいいとして、五郎。お前はそろそろ必死に高校受験、勉強しないとやばいんじゃないのか?」

そう揶揄するように、俺はにやにやと笑いながら言葉を放った。それに反論するように、乱暴な口調で五郎が言い放った。

「るっせ。余計なお世話ってやつだ。大体こんな田舎だ。勉強したところでいい学校なんて、都会にでも行かなきゃ無理だろーが」

それはご最もだ。俺も昔は勉強して都会に進出しようかと思っていたが、そんな度胸は一欠片もないし、なにより今の生活に満足している。だけど……

「孝汰。お前は確か、来年東京行くんだろ?高校のために」

「まじで!?孝汰!お前引っ越すのか!?」

目が飛び出る程驚く五郎を宥めるように、孝汰がニコニコしながら言った。

「まだ決まった訳じゃないけど……でも、確実だと思う」

元々俺は予想だけは出来ていた。こいつの頭の使い道はここにはないと思っていたからだ。だけど

「寂しくなるな……」

2秒ほどの沈黙があったが、俺にとっては1分のように感じた。重苦しい空気を変えるように、孝汰は話題を変えた。

「そ、そういえば小腹がすかない?なんかお菓子買おうよ!」

「そういやぁ、昔3人でよく行っていた駄菓子屋があったな。久しぶりに行くか!」

五郎が陽気にそう言った。確かに、昔3人で駄菓子屋によく行っていたし、なにより、おばあちゃんとは仲が良かったから、安否を確認したかった。

「行くか」

俺達は、トコトコと、駄菓子屋に足を運んだ。


駄菓子屋は酷くボロボロに変わり果てていた。だが、駄菓子は品物として並んでいるし、経営は維持している様子だった。

「おや、あんた達。随分と久方ぶりじゃあないかい」

駄菓子屋の奥の扉からひょこひょこと出てくるおばあちゃん。なんにも変わっていない様子を見て、安堵に浸った。

「ばあちゃん!お久!」

五郎が嬉しそうに言い寄った。孝汰が「おばあちゃん、元気だった?」

と聞くと、おばあちゃんは

「まぁねぇ。ボケが始まっとるけどねぇ。まぁ、ゆっくりしておゆき」

と言い、また部屋に戻った。ふと、目をレジに向けると、直径30cm程の、白くクリアな丸い石が置いてあった。

「あ!それ懐かしいね!僕達が小学校6年生の時に空から降ってきた隕石でしょ?3人で取り合ったけど、最終的にはおばあちゃんにプレゼントしたんだっけ」

隕石……にしてはあまりにも綺麗すぎると思うが。これは売れば高くつきそうだな。

「にっしても不思議だよなぁ。ほら、こう持ってみても全く重さを感じないんだぜ。ほら、弘樹。もってみろよ」

突然ぽいっと投げ渡されて焦ったが、なんとかキャッチした。全く、落として割れたらどうするんだ。にしても…

「本当に軽いな……物理法則どうなっているんだ」

そう不思議がると孝汰は首を縦に振り、同意のジェスチャーをとった。と思ったら不思議そうな顔をして

「弘樹君。なんかその石、光ってない?」

「は?そんなわけ……本当に光って」

光ってる、と言いかけた瞬間、周りの空間がいきなり歪み出した。

「うおっ!なんだこれ!蜃気楼か!?」

驚く五郎に俺は なわけあるか! とツッこみをいれた。そして手に持っていた石が、いきなり激しく光り出し、あまりの眩しさに、俺ら3人は目を瞑った。


5秒ほどして目を開けると、そこには、見たこともない異世界の街があった。

「「「これって…異世界転生!?」」」

僕達は、口を揃えてそう言った。


ここから俺達の物語は始まる。

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