若き未亡人となったレディ・ハーパーを手に入れようと、世界中の男達は躍起になっていた。そんなある日、レディ・ハーパーの傍らに東洋人青年が現れた。何の後ろ盾もない青年について、当初は彼女の気紛れという見方をされ、シンデレラ・ボーイと揶揄されていた。しかし、その青年こそが後のレディ・ハーパーの第二の伴侶であると、誰が予想しただろうか。


 先週、転属してきた白峰智哉がコーヒーを渡してくれた。

「しがない契約社員なんだから、気を遣わないで。」

「花村さんが、自分の希望で契約社員なのは、みんな知ってますよ。それに仲良くなりたいんで。」

白峰は29歳、NY支社から来た優秀な人物だ。

「ありがとう。」

屈託なく笑う彼はNY支社で、営業マンとしてトップセールスを記録している。

「語学も堪能だし、一体どちらで?」

「学生時代に短期留学しただけ。」

「ホントに?あれだけ流暢なクイーンズイングリッシュを話せるなんて信じられないや。」

白峰は両親共に日本人ながら、NY生まれ、NY育ちの生粋のニューヨーカーだ。

「俺のパートナーはイギリス人なんだ。」

「なるほど…。美術品に詳しいのもパートナーのおかげなんですか?」

何だか尋問されているみたいと思ったが、日本人であって日本人ではない彼に悪意はないのだろう。

「それもある。父方の実家が古美術商でね、子供の頃はよく蔵で遊んだんだよ。そのせいかも知れないしれない。」

目を輝かせて俺の話を聞く彼は、まさにクール・ジャパンに憧れる海外のティーンエイジャーそのものだった。

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