17話 対戦相手の能力を丸裸にしてもよいだろうか







「(あ、モッチー、ちょっと頼みたいことができたんだが……)」



 とあるアイディアが浮かんだので、おもちゃの女神に相談してみる。



《# な、なんですか? 富士雄っ!》


「(この【玩具創造トイ・ファクター】を使った【魔素契約樹プロトマ・グラム】の生成→

 →魔術果実の体内保存→属性階級別整理っていう工程をプロトコル化して、

 オリジナルの【デミスキル】にしたい。……この企画書、通りそう?」


《# い……、一発OKですっ!! 【玩具創造トイ・ファクター】によりデミスキルを作成します!

   スキル名はなんですか?》


「派生デミスキル名は、そうだな……」

 


 俺は、こちらを警戒するアランドラをちらっと確認しつつ、



「魔術を封じた果実、【封果フウカ】を体内ストックするデミスキル【封果チェンバー】って

 ことで!」



《# そ、それって富士雄……【だいまほうつかいステッキ】の企画書にあったアイデアですよねっ!》



 えっ!? なんでモッチー知ってるの!? いやっ、あれはステッキを、さらに聖剣を模した玩具に

組み込むっていう【マジックチェンバー】っていう派生商品案だけども!!



《# 【封果チェンバー】設定完了……しました!! ……わたし……わたし、

   この、富士雄の考え、すごく! すごくいいと思います! すごいです!!」




「どうやら魔王という名は、伊達ではなかったようだね」




 モッチーと脳内会話しながら態勢を変えない俺にアランドラが話しかけてくる。



「ボクの名はアランドラ・トアロ。トアロ家の魔王だ。アランドラと呼んでくれ」


「俺はフォースタス・フィスト。フィスト家魔王。フォースタスでいい」



『挨拶! 友情を芽生えさせてる場合じゃないディェエース! 試合はまだ、続いていマァース!』



「ではフォースタス、ボクは認識を改めよう」



 明らかにアランドラの雰囲気に変化が生まれる。



「おっ?」 


《# 本気を出したようですよ!?》



 アランドラが発する、魔王の、魔王たる証のような、禍々しいまでの威圧。

 

 その正体が、俺の【情報化視界】に鮮明に描かれ始める。



「あれは……、ん? 見られてる?」



 アランドラの両目が、薄暗い樹形図で飾られていた。



「【魔素契約樹プロトマ・グラム】……?」



 だが、俺の【情報化視界】はなんかムズムズするだけで、

 どんな魔術が形成されるのかを示さない。



「……でも、……あれは風属性に近い……のか? 

 いやぁ、どちらかっていうと、クラーラが言ってた光属性ってやつ……?」



 それにしても、【魔素契約樹プロトマ・グラム】といい、魔素がめぐる樹形図――



 【魔素樹形図(かってに俺が命名)】って、美しいなぁ……。



《# ま、待ってください富士雄! 富士雄には、あれがどんな魔術か、わかるんですか!?》



「なんとなくな。あぁ……いや、でも、あれは魔術じゃねーな」



《# 魔術じゃない??》



「これ、あいつのスキルか」



《# ……なんで、わかるんですか?》



「わからん。なんとなくそう思う」



《# なん……っットロフィーを獲得しました♪》


 

 おっ? 毎度このタイミングもわからん。

 というかモッチー、スキル【天の声】に操られてないか……? 今、声を乗っ取られただろ……。

 システムボイスとして使われるモッチー、かわいいです。



《# 『プラチナ』 スキル看破者 》

  

 

 プラチナ! 俺これで二つ目!



《# トロフィーリワード 【情報化視界】制限解除、デミスキル【スキル看破】が解放、

          及び 【魔素知覚】制限解除、デミスキル【スキル構成樹トラクチャ知覚】

              が解放されました》


 

 俺の予測、あの【魔素契約樹プロトマ・グラム】がスキル関係ってのが当たったってことなのか、これ。



 ■ ■ ■ ■

 名前: アランドラ・トアロ

 俗称: 魔眼のアランドラ

 種族: 魔族

クラス: 魔王(トアロ家魔王)


スキル:【未来視】【無詠唱魔術】【魔力ブースト】【剣技】【ワイン鑑定眼】

デミスキル:【口説き文句】


 〔戦〕  20000


 〔謀〕   8000


 〔非〕     39


 ■ ■ ■ ■


 

 つまり俺は、

【スキル看破】によって新たに相手の所持スキルがわかるようになったのか!


 なにげに【ワイン鑑定眼】のスキルがあるってことは、本当にワイン好きなんだな……このアランドラ。



「ということは……」



 たぶん、アランドロ・トアロの両目を、

 今やおもしろメガネのようにヤバイ感じに渦巻いている、あれが【スキル構成樹ストラクチャ】か。



「つまり、あれが【ワイン鑑定眼】……!」



 さすが『魔眼のアランドラ』という名を持つだけのことはあるな。



《# い、いえ! たぶん【未来視】の方だと思います!》



「本当かなぁ……」



「ボクの魔眼には、もう見えている、キミの敗北が」



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


スキル構成樹ストラクチャ


スキル名称:【未来視】

属性   : 魔眼系

等級   : SS級(伝承級)

効果   : 目に映る物体の超近未来を観る


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



「本当だ!」


 

【情報化視界】がムズムズっとし、ついに情報が開示された。



『おおっと! アランドラ、ここで勝利宣言ディェエースッ! 今回も見せるのか!?

 二秒先の世界を見通すという魔眼の力をッ!』



みんな知ってるのかよ!!


っていうか……



「でも、やっぱり俺には、あれがいわゆる【未来視】のスキルには見えないんだが……」



《# ふ、富士雄は【大百科エンサイクロペディア】のスキルが示す表示を疑うんですか!?》



「いや、そーいうわけじゃないんだが……なんか腑に落ちん」


《# か、かと言って、富士雄をワインとして見ているってわけでは……》


「よし、モッチーが正しいか、俺が正しいか、手っ取り早く試してみよう」








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勇者到着まで あと 67時間17分20秒

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