15話 改めて自分のステータスを他の魔王と比べてみてもよいだろうか







「はぁぁああ……、くぅぅ……っ」



 俺は陽の下で大きく伸びをした。


 しかたない。


 もう少し時間があればとも思うんだけど、あとは実際にやってみるしかないか……。



《# 富士雄、深呼吸! 深呼吸しましょう!》


「な、なんだよモッチー、落ち着けって!」


《#だって、すごい観客ですよ!?》


「いや、わかるけど!」



 俺の声も大きくなった。すごい賑わいだった。



「それだけ注目されてんだろうな」



 コロシアムの真ん中からの景色は、サッカー中継で選手が見ている視線から

 スタジアムを一望するシーンそのままっていうか。


 観客席の雰囲気も、人間が魔族に置き換わっただけで、よく似ている。

 旗とかも振ってるし。


 なんかこう、全体的に若者が多い気がするんだが、そういうのも似てるのかな。



《# 富士雄は、まさか、緊張とかしてないんですか……?》



「してるけど。フィスト家はこれ、チケット取れてんのかな……てか、チケット?」


 

 十二家の魔族がひしめいているとなると、こっからフィスト家を探すのは無理そうか?


 んー………。



《# もうっ、集中してくださいっ! 富士雄はさっきからなにをしてるんです!?》



「え? ああ、おもちゃ作り」



 俺は指折り、左右の両手を閉じたり開いたりする。



《# い、今ですか……?》

 

「モッチー」


《# な、なんですか……? 富士雄》



「ほんとに【玩具創造トイ・ファクター】のスキル、サンキューな。すっごい、わくわくしてる」


 

《# お、おねがいですから富士雄、今は目の前の試合に集中してください!》

  


「フォースタスさまーッ!」



「ん? この声……」


 

 方向は真横、右? 

 聞き覚えのある少女の声音に振り向けば、



「負けたら、ゆるさないからーっ!!」


「必勝ぞー!!」


「おおおおおっ!! クラーラ! リーゼル!」


 

 早速の応援!


 ということは、あそこがフィスト家の席かな?


 おお、みんないる。イケメン将軍のフィリップもいるし、

 脳筋のバンベルグ……は、めっちゃ不機嫌そうだ……が、クラーラとリーゼルには懐かれてるみたいだ。


 俺は手を振るが、双子の魔術師以外、なんだかノリが悪いな!


 あれ? 俺が出場するの、実は不承不承で、あんまり認めてないの……?



『それではCブロック第二試合ディェースっ!』



「おっ?」



 拡声された音がスタジアムに響いた。



『魔王同士が競い合う、「十二斂魔王トーナメント」もいよいよ佳境!!

 お次の試合は、


 『魔眼のアランドラ』ことアランドラ・トアロ 


         ヴァーサス!!


 『産まれたてのフィスト』こと、フォースタス・フィスト!



 注目の試合、まもなく始まりマァ―スっ!』




「こっちのノリは、いいんだな!」


 

 俺はアナウンサー席っぽいものをスタジアムに探す。


 

『実況は引き続き「鬼火のテーパィレン」閣下に魂を捧げるこのフランベルジュ』



 客席中段、

 マイクっぽいものを片手につかみ、テンガロンハットをかぶった金髪の女がテーブルの上に足を乗せていた。


 

『そして解説は、この「ガリアッレ・アレプテン」配下、メルドー・アレプテンが務めようじゃぁないか!』



 隣に、テーブルに肘をついて顎をのせ、白衣を肩に引っ掛けたメガネの魔族。


 年齢は外見からすると、どちらも元の俺と同じ28、9ぐらいか?



『しっかし、うぷぷぷ……っ! 見て! 見てぇ! ルックディス! フィスト家!

 もはや『十二斂魔王』をあきらめたと考えてよさそうディェースっ!』



 ん? なんだが、スタジアムがえらく沸いてるんだが……。



「あ、そうか、俺が人間の子どもだからか」


 

 なんか照れるな……。



「おー、クラーラとリーゼルが暴れとる」



 実況席にカチコミに行こうとする双子の魔術師を、バンベルグとフィリップが

 どうにか取り押さえている!


 がんばれフィスト家!



『そして相手はCブロック優勝候補! あのメイ・ファーも一目置く伊達男(だておとこ)!

 「魔眼のアランドラ」! 今日も未来視の「魔眼」が炸裂するのか!? 

 シード配置とも言えるまさに天の配剤! 運命はこの魔王に微笑んでいるに違いない!

 トアロ家は実にラッキーディェース!!』


『はっきり言ってトイレタイムだ。オレも失礼しよう。この試合に解説などいらないだろうからな……』


『ここで解説のメルドーが離席ッ! これは試合前から波乱ディェース!!』



 スタジアムは大爆笑に盛り上がっている。



「聞いての通りだ。運が悪かったね。フィストの」



 俺の前方に、腰までのストレート銀髪を持つ、背の高い青年が現われていた。



「あ、は、はぁ……」



 男の俺ですら、見とれるッ!



 これが魔族の美貌!? ちょっとなに? こいつ笑えるくらいかっこいいんですけど!!

 灰色がかった青い瞳とか超キラキラしてるし!!


 

 全体的に仕立ての良い服ってのは一目瞭然だし、

 頭の狩人みたいなツンと尖った帽子が、いかにも貴族! 

 しかも黒い毛皮のファーとかで縁取られたベストに細いスラックスは、

 もうこれちょっとしたパーティにいける……というか、


 きっとこのトーナメントを、彼はパーティだと実際に思ってそう。



 なんか、そういう表情だ。

 爆発しよう!



「ボクは今日、ここに遊びで来ているわけじゃないんだ。せめて、すぐに終わらせよう」



 ■ ■ ■ ■

 名前:  アランドラ・トアロ

 種族:  魔族

 クラス: 魔王(トアロ家魔王)


 〔戦〕  20000


 〔謀〕   8000


 〔非〕     39

 ■ ■ ■ ■



 俺の【情報化視界】の中に、魔王の表示が立ち現われ、

 美魔族青年を、白く縁取り、その能力を華麗に表示した。



 俺、パーカーとジーンズのしま◯らルックなのに!



「魔族の世界は力がすべて。キミでは勇者を、この大陸から退けることができない」 



 あ、あれー? しかも待って? ぱっと見、俺のステータスより、強くないか……?

 俺はとっさに、自分のステータスを立ち上げる。



 ■ ■ ■ ■

 名前:  フォースタス・フィスト

 真命:  米村 富士雄

 種族:  人間

 クラス: 魔王


 〔戦〕  21000


 〔謀〕  10000


 〔非〕    186

 ■ ■ ■ ■



「モッチー! これ、どーゆこと!?」




『それでは、試合、スタートディェエースッ!!』








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勇者到着まで あと 65時間22分01秒

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