第4話つかまる!?


ヤツはウスラ笑いを浮かべて、私たちの席の前に立った。


「こんな時間に高校生が何してんだ?」


しらじらい言い方で牽制してきた。


「ちょっと交番まで来てもらうよ」


「そんな必要無いでしょ?人殺し!」


森野さんが応戦すると、ヤツはギョッと目を丸くした。そして低くして呟く。


「そんな事言ったところで、誰か助けてくれると思ったか?俺は警察官だぞ?」


「どうかな?」


”どうかな??”


「結構、助けてくれそうな人いるけど?」


森野さんの言葉に反応して回りを見てみると、何と言うか、ガラの悪そうなお兄さんがいっぱいいる。


「この店の人達、警察とか嫌いそうって思わない?」


今度は、森野さんがニヤリと笑った。


なるほど!森野さんはこれが狙いだったんだ!


”安全なところ”って言うのは、こういう意味だったんだ!


森野さんが見込んだボディーガードは、凄い顔でヤツを睨み付けている!


「やめてよ!私たち何もしてないでしょ!」


森野さんが演技がかった声で叫ぶと、お兄さんたちが2、3人立ち上がった。


「何してんだよ?!この娘ら嫌がってますけど!?」


ヤツはあっという間に囲まれた。


「どうした?善良な市民にイヤガラセか?!」


「ごめんなさい!私たちもう帰りますから。それでいいですよね?」


今度はカワイイ声で言って森野さんは席を立った。


”行こ”


目配せで、そう訴えてくる。


「そうしな!そうしな!お巡りさんもそれでいいでしょ?!」


お兄さん達の優しい声に見送られて、私たちは出口に向かった。


ヤツは凄い形相でこっちを見てる。



「めんどクセーなあ」



一瞬、静まり返った店内に悪魔のような声が響いた。



ガチャリ…。



凍りつくようなその音に、森野さんは振り返った。


「アブナイ!!」



パッーーン!!



ガシャーーン!!!!



店の大きなガラスが目の前で粉々に砕け散った!


誰にも当たりはしなかった。みたいだ。


「ぶっ殺してやるぅぅ!!」


ヤツはわめき立てて拳銃を振り回した。


お兄さん達もさすがに後ずさる。


遠巻きに人垣をつくると、ヤツは誰に向かうとなく話し始めた。


「仕方が無かったんだ…アイツが裏切るから…」


撃っちゃった人の事?


「おとなしくしてりゃいいものをぉぉ!どいつもこいつもぉぉ!」


勝手な言い分に腹が立つ!


そう思ったのは、私だけじゃないみたいだ。



「どっちにしてもサイテーだ…」



怒りに震えた声で森野さんが呟いた。


「アンタの勝手に振り回されて堪るか。そっちこそ、おとなしく自首しろ」


静かにたたずむその姿は、凛として力強く、拳銃に負けない迫力があった。


「見てみなよ?外?」


森野さんは真っ直ぐにヤツを見ながら言った。


”ああ”


今まで気付かなかったけど、外は凄い騒ぎになっている。


「どっちにしても、もう終わりだよ?」


森野さんは一時もヤツから視線を外さない。


ヤツは呆然として、外を見ている。


「そうだな」



「終わりだな…!」



言い終えた瞬間!ヤツは大きく腕を回した!


銃口を森野さんに向けた!


「止めてーー!」



私が叫んだ時、森野さんはすでに次のモーションに入っていた。



ガコッ!



森野さんが投げたトレーは円盤のように飛んで行き、ヤツの顔面に当たる!



「内田さん!逃げるよ!」


出口に向かう森野さんに続いて、私は走った!


ヤツは倒れている。


外に出ると、お母さんの顔が目に入った!


”今度こそ助かる!”


私は夢中で走った!



ガコ!



また空き缶!?



「痛ーい!」


本日2度目のマナー違反は、私の身体を地面に転がした。


「内田さん?!」


森野さんが振り返り手を延ばしてくれた。


ホントに優しい…。


私も手を伸ばして立ち上がろうとした。




その時…。




覆いかぶさるように、長い影が伸びた。




私を見るみんなの動きが止まった。



私は、怖くて、振り返る事が出来ない…。



「も、もりの、さん」



身体が震え出す。



その時、髪の毛が強く引っ張られた…。




「イヤーーー!!!」




私の身体は地面を引きずられて、ズルズルと後ろに進んで行く。



「内田さん!」


駆け寄ろうとした森野さんは警官に押さえられた。



私はヤツに腕を掴まれ、無理矢理立たされる。



「コイツは人質だ!言う通りにしないと殺すぞ!」



コメカミにあてられた銃口は冷たくて、そのせいか、ヒドイ頭痛がした…。



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