青とエスケペイド

冬野瞠

プロローグ

 記憶の小路を遡る。やがて、袋小路に突き当たる。

 ここが、すべての始まり。

 そう呼べる出来事を、人は誰しも、胸の内に持っているものなのだろうか。

 自分の場合は、あの幼い日の夜。

 大きい男の人と、小さい男の人が、自分を助けてくれたあの夜が、始まりだったんだろう。


「我々はね、君自身のことを、君よりもよく知っているんだよ」


 そう大きい男の人は言った。


「運が良ければ……いや、運が悪ければ、と言うべきか。また相見えることもあろう。さらばだ、少年」


 そう小さい男の人は言った。

 当時は分からなかったけれど、すべてを知った自分には、二人の言葉の意味が分かる。

 はっきりと。

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