3.美しい世界

地球に一台の宇宙船が舞い降りた。中からは数人の緑色の姿をした宇宙人が現れた。

「ようこそ、木星の視察団の方々。私は地球代表の田中と言います。本日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「では、早速ですが案内させて頂きます」田中を始めとする十人程度の黒服の人間に囲まれて木星の視察団は地球を見て回った。

「田中さん。地球の噂は本当ですね。こんなにも民が笑顔で生活しているなんて、私の星では考えられません。私の星ではいつも、どこかの国同士が争っていますよ」

「すみません。私は渡辺です」木星人の一人が田中と渡辺を見間違えた。

「これは失礼しました。では、あなたが田中さんですか」

「いえ、私は中村です」

「では、田中さんは…」

「あ、すみません。私が田中ですよ」田中は中村のすぐ後ろにいた。

「いえいえ、こちらこそ、失礼な事をしてしまってすみません。どうも、木星人の私から見たら、皆さん同じ顔に見えまして」

「それは無理もありません。それこそが、この平和の象徴ですから」

「どういう事ですか」

「ですから、この星ではみんな同じ顔になるように整形しているんですよ。仲間はずれにされないようにね」

「え、顔を変えているんですか」木星人は田中の発言に眉をひそめた。

「そうですよ。昔は産まれてから気に入らない部分を改造していましたが、今は産まれる前の細胞レベルから改造してみんな同じ顔にしています。おかげで、差別も無くなり皆が互いの姿を愛し合うようになりました」

「そんな事をして、自尊心は無いのですか」

「我々は自尊心よりも周囲から孤立する事を最も恐れているのです」と佐藤が言った。


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