2話『前夜』

 月に一度の《銅の券ブロンズ・チケット》配布会。

 あまりの倍率の高さにギルド側が徹夜で列を作るのを禁止し、当日の受付開始まで百メール以内には魔導結界により入れないようになっている。


 前回の敗因は気の緩みだった。

 定員二十名という、いつもより多い枠に油断し、今回もいつも通りいけるだろうと思ったら失敗した。


「前回の時は参加者に刺客を雇っている奴がいて、その刺客に襲われていた俺はチケットを手に入れる事ができなかった」


「じゃあ、今回もその刺客が妨害にくるかも知れないってことだね」


 ライルは情報通だ。その刺客に関しても何か知っているかもしれない。


「ああ。黒いローブを被っていて顔は確認できなかったが、小柄でかなりすばしっこいやつだった」


「おそらく、そういう荒事を引き受けているのはクラン《偽物の偽者ノット・クリア》だろうね」


「《偽物の偽者ノット・クリア》?」


「最近になって急激に力を伸ばしている《鉄壁の要塞ギルド》非公認の悪党クランだよ。 盗難・殺人・陵辱何でもありらしい。しかも団員全員にメンバーを増やすのを許しているらしくて、メンバー数は相当みたいだよ」


「普通、クランのメンバーを増やす際にはリーダーの許可が必要だろ、そんなに団員の数を増やして統率はできるのか?」


「統率どころか、リーダーがいるのかも怪しいクランだよ。取り合えず用心に越した事はないと思うよ」


「そうだな。そのためにお前を呼んだんだしな」


 寝床など、一通りの準備を終えて、そんな話をしていると辺りはうっすらと白くなっていた。


「もうこんな時間か、取り合えず交代交代で休息をとりながら様子をみよう。前回の時は深夜に攻撃を受けたから、その時には二人とも起きていられるようにしよう」


「じゃあ、僕は先に休息するよ」


 そう言ってライルは急ごしらえの草のベッドに横になる。見た目は貴公子のような彼でも冒険者なのでこういうことには慣れている。


 金がないので当分は野宿することになる。

 ライルが寝ている横で双眼結晶を取りだし、周囲を確認する。


 --同じような目的の連中はまだいないようだ。


 周囲の確認を一通りしてから、持っている武器を確認する。《灰の短剣グレー・ダガー》が20本にギルド初期装備の短剣が1本。

 防具はギルド初期装備のままだ。

 《召喚魔導機ガチャ》では☆2しか当たったことがないため、それ以上の強さの武器は持っていない。

 ☆2の武器の中では、いろいろな種類の物を当ててきたが、全て自分が使いやすい武器、《灰の短剣グレー・ダガー》にトレードした。


 --ローブの刺客。


 前回の戦いでは遅れをとってしまったが、今回はライルもいる。


--必ずチケットはゲットする。


 俺は武器を磨きながら、《銅の券ブロンズ・チケット》配布会を心待ちにしていた。

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