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【10】

 しきりに扉を叩く音が聞こえる。昨日は遅くまで話しこんでしまったためいささか眠い。無視を決め込もうとしていると扉が勢いよく蹴破られる音がした。これにはさすがに反応せざるを得なかった。

「カリマ! リゼ! まだ生きてる⁉」

 そんな物騒な台詞とともに部屋に入ってきたのはユーギだった。随分と焦ってるように見える。

「おお、おはようユーギ。そんな急いでどうしたよ。まだ昼前だろ? ギルドが動き始めるには早い時間だと思うんだが」

「どうしたもこうしたもあるかい! 昨日、竜の遭遇率が上がってるって話したの覚えてる?」

「……ああ、覚えてるさ」

 昨日本人から聞いたから、とは口が裂けても言えない。さらにはその本人は、お前の横でグースカ寝ている少年なんだ、とも。

「なら竜による被害が出てる、って話も覚えてるよね? 昨日までは比較的人の少ない地域での話だったから皆悠長(ゆうちょう)に構えてたんだ。だけど……」

 ユーギの顔は思いのほか深刻で、とても茶化せるような雰囲気ではなかった。カリマはユーギが語りだすのを待った。

 やがて覚悟を決めたかのように、ユーギは事の確信について話した。


「今朝、スラムで竜の被害が出た。死傷者合わせて十五人の大きな被害だそうだよ」

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